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ブラジル人スカウトが語る「Jリーグの魅力と日本サッカーの問題点」

林壮一ノンフィクションライター
現在、アルゼンチンと並んでW杯南米予選で首位を走るブラジル(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ブラジル人であるジョノ・ヴァイスは、現在、1カ月に8試合のペースでJリーグのスタディアムに足を運ぶ。Jリーグ入りを希望する母国の選手に、情報を送る為だ。

 ジョノは祖国の大学を卒業し、コンサルティング会社でアジアを担当した後、東京大学大学院を卒業した秀才である。

 彼が感じるJリーグの魅力、そして日本サッカーの問題点を語ってもらった。

撮影:著者
撮影:著者

 「Jリーグ創成期は、ジーコをはじめとする各国のベテラン選手が日本にやって来ましたね。ビスマルク、アルシンド、レオナルドのようにバリバリの選手もいましたが、引退間際の選手も多かったでしょう。

 でも、今は22歳くらいの若手ブラジル人が、日本行きを希望します。コリンチャス、フラメンゴ、サンパウロ、グレミオ等のトップクラブではなく、中堅以下のクラブに所属している選手は、なかなかブラジルのマーケットに自分の名が載りません。怪我をしたら選手生命は絶たれますし、健康的にキャリアを積みたい。可能な限り長くやりたい。

 国内のビッグクラブやセレソン、ヨーロッパへの移籍は諦めたけれど、まだサッカーで稼ぎたいという20代前半の選手にとって、日本はとても魅力的なんです。

 クラブも若い選手を海外に送り、その移籍金が大きな収入になります。日本は経済がしっかりしていて、約束した金額が未払いなどということはまずありませんから、ビジネスパートナーとして非常にやり易いのです。

 ブラジル人の目から見れば、Jリーグのレベルが高いとは言えません。怪我をせずに長くプレー出来るリーグです。また、ファンも温かい。住みやすい国なんですよ。

 私が日本のサッカーを見ていて信じられないのは、バックパスが多過ぎるところです。特にゴールを背にしたFWの選手がパスを受けて、直ぐに下げてしまう。あれはブラジルでは考えられません。いくらDFを背負っていても、FWならば、まずはターンしてシュートを打つことを考えます。ブラジルでは、小さな子供だってそうしますよ。どのポジションの選手だって、常にゴールを目指しています。ゴールに向かってシュートするのがサッカーの基本じゃないですか。

 トップの選手がサイドにはたいただけで、『そんなんじゃ何も生まれないよ!』と言われるのがブラジルです。日本はサイドパサーじゃなく、<バックパスの文化>が染み付いていますね。Jリーグを何試合も見て、本当に疑問に感じます。セーフティにセーフティにプレーする選手が多く、オリジナリティに欠けます。

 日本もワールドカップに6大会連続で出場できるほどに進化したんですから、<バックパス文化>を無くしていくべきですね。

 また、Jリーガーになることを最終目標とする選手ばかりなので、もっと高い目標を掲げ、世界の強豪国で活躍してやる! という強い気持ちを見せてほしいです。 

 それが、日本サッカーの成長に繋がると僕は感じます。」

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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