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「2分×8ラウンド」マイク・タイソンのファイトが延期

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:REX/アフロ)

 マイク・タイソンの潰瘍が再発したとの理由で、7月20日に予定されていたジェイク・ポール戦が延期された。タイソンは米国内を空路移動中に潰瘍が再発。機内で緊急手当を受けたとのことだ。

写真:REX/アフロ

 人気YouTuberであるジェイク・ポールにとって、キャリア最大のボクシング試合が、少なくとも現時点では無くなった。

 現地時間5月31日の金曜日、MVPプロモーションは、タイソンとポールの2分×8ラウンドのファイトについて「タイソンの健康上の問題のため、延期する必要あり」と声明を出した。同社によれば、2024年の後半に、今回押さえていたテキサス州アーリントンのAT&Tスタジアムで試合を開催するつもりだという。

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 YouTuberは7月20日の試合がキャンセルされたことについて、かなり落胆している。Xに投稿した動画で次のように話した。

 「衝撃的なニュースだ。心が張り裂けている。俺は言葉を失ったよ。とても失望した。キャンプ中、メンバーと共に一生懸命トレーニングしてきた。このイベントに関わった皆、そして、前座に組まれていた全てのファイターに申し訳ないと思う。誰もがチャンスを奪われてしまった」

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 タイソンは、YouTuberに対し「今回は時間稼ぎができたかもしれないが、お前は最終的に俺にKOされ、ボクシングから永久に追放される。ファンの皆、我慢してくれてありがとう」とメッセージを送った。

写真:REX/アフロ

 これにポールも応じた。

 「俺はマイクの健康を何よりも大切に考えている。俺は彼が大好きで、心から尊敬している。マイクには健康でいてほしい。彼は俺をノックアウトするつもりだと言った。そして、マイクは俺が時間を稼いだだのと、下らないことを言っている。

 マイク、もしあんたが発言したように密室で戦いたいって言うなら、嬉しいよ。ほんの少しの時間で終わらせてやる。いつでもやってやるぜ。これは大きなチャンスだ。世界を変えるほどのファイトになると思う」

写真:REX/アフロ

 MVPプロモーションは、新たな日程を6月7日に発表するつもりだという。タイソンvs.ポール戦は、エキシビションではなく、プロボクシングの公式な試合として認められ、Netflixでライブ中継されることとなっていた。

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 確かに全盛期のタイソンは、比類なきチャンピオンだった。IRON(鉄の男)というニックネームが実によく似合った。しかし、現役生活の晩年は顕著な衰えを見せた。2004年、2005年と、無名選手に連敗したからこそリングを去ったのだ。

2005年6月11日、タイソンは6ラウンド終了TKOで敗れ引退を決めた
2005年6月11日、タイソンは6ラウンド終了TKOで敗れ引退を決めた写真:ロイター/アフロ

 57歳となった、かつての統一ヘビー級チャンピオンをカネで釣り上げ、もう一度戦わせるーーーそんな興行はボクシング界にとって、決してプラスにならない。このまま中止にするのが最善の道ではないか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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