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統一ライト級タイトル戦、ロマチェンコvs.ロペス、いよいよ明日ゴング!

林壮一ノンフィクションライター
15戦全勝(12 KO)のロペス。今回も試合後のバック宙を見せられるか?(写真:ロイター/アフロ)

 14勝(10KO)1敗のワシル・ロマチェンコと、15戦全勝(12KO)のテオフィモ・ロペスの間で行われる統一ライト級タイトルマッチまで、あと1日。

 ウクライナ人である32歳のロマチェンコは、WBA/WBOそしてWBCフランチャイズのベルトを腰に巻く。23歳のアメリカン、ロペスはIBFタイトルを保持している。

 ワンパンチでKOを積み重ねて来たロペスよりも、経験豊富で、フットワークをベースとしたロマチェンコの方が有利だという声が多い。

 北京、ロンドンと五輪で2度金メダリストとなり、WBOフェザー、同スーパーフェザーと3階級を制してパウンド・フォー・パウンドに駆け上がったロマチェンコに、ロペスが挑むのは早過ぎないか? という見方がボクシング界では圧倒的だ。

 

 が、ロペスは自信たっぷりに語る。

 「他のファイターと一緒にしてもらっては困る。俺はロマチェンコに敗れた選手たちとは違うんだ。常にステップアップする為に人生を捧げて来た。自分を追い込んで、もう18年だ。今後ももっと上を目指していく。俺の時代が来たっていう確信がある」

 昨年12月にリチャード・コミーを2回KOで下してIBFチャンピオンとなったロペスは、生まれも育ちもニューヨーク州ブルックリンだ。あのマイク・タイソンの故郷である。

 現在、ロペスのトレーナーを務める父は、かつてドラッグの売人として生計を立てていた。本格的なボクシング経験の無い父の教えが、ロペスにとってはプラスに働き、爆発的なパワーと予測不可能なアングルからのパンチを産み出した、とロペスは感じている。

 その野性味溢れる戦いぶりが、どこまでロマチェンコに通じるか。

 2018年12月8日、WBAライト級チャンピオンだったロマチェンコは、WBO同級王者のホセ・ペドラザとの統一戦で、第11ラウンドに2度ダウンを奪って判定勝ちを収めた。

 ロペスはその前座に出場し、空位だったNABFとUSBAのライト級タイトルを獲得。

 当時から、ロペス親子はロマチェンコへの挑戦を意識していた。計量時、ロペス父はロマチェンコに握手を求め、右手を差し出している。しかし、王者の応対は望んだようなものでなく、不穏な空気に包まれたという。

 ロペスは振り返る。

 「激しい感情が、俺の胸を覆った」

 鼻であしらわれたロペス父は「自分の息子はロマチェンコをKOする。いや、殺す。世代交代を見せてやる!」と言い続けて来た。

 「俺の親父は、そんなタイプさ。ワイルドに生きて来た。他人がどう感じるかは知らないが、俺は父を愛しているよ。トレーナーとしても親父以上の人物はいない。彼の存在があったから、ここまで来られた。悪い点なんて見当たらない。

 間違いなく、素晴らしいファイトになるよ。早くリングに上がりたいね。ファンが熱くなる試合をご覧にいれるが、技術も見せ付けたい。今までの俺のイメージを凌駕する戦いを展開してみせる」

 どんな統一戦となるか。ゴングまで、あと1日だ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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