Yahoo!ニュース

スティーブ・ナッシュのブルックリン・ネッツ新監督就任に心を躍らせるケビン・デュラント

林壮一ノンフィクションライター
18季NBAでプレーし、2005年、2006年にMVPを獲得した(写真:ロイター/アフロ)

 NBAで2度MVPを獲得した名ポイントガードのスティーブ・ナッシュ(46)が、このほどブルックリン・ネッツの新監督に就任した。4年の契約である。

 ケビン・デュラント、カーリー・アービングといったスーパースターをいかに起用して強いチームを創るか、その手腕に注目が集まる。

 ネッツは、3月7日にケニー・アトキンソン監督の解雇を発表し、アシスタントコーチだったジャック・ボーンに指揮を執らせながら、次の監督を探していた。そんな状況のチームが好成績を残せる筈もなく、東地区7位でPlay Offに進出したものの、ファーストステージで1勝も挙げられずに姿を消した。

 NBAで18季プレーしたとはいえ、監督キャリアの無いナッシュを抜擢したことを疑問視する声も聞こえてくる。が、ゴールデンステイト・ウォリアーズのGM、ボブ・マイヤーズは「ナッシュは監督となる前に、現場を見詰めた。彼は誰とでも上手くやっていける。誰もが、尊敬の眼差しを送る男だ。

 ただ、綿密な観察なしで大きな仕事にチャレンジして来た感がある…、今後は深呼吸が必要となるかもしれないね」と語る。

 ウォリアーズの一員だったケビン・デュラントは、右ふくらはぎの肉離れに苦しみながら昨シーズンのファイナル第5戦に出場。同ゲームで右足アキレス腱断裂という悲運に見舞われた。

 トロント・ラプターズに敗れ、心身ともに傷を負ったデュラントはネッツに移籍するも、治療とリハビリに時間を要し、今シーズンは公式戦のコートに立てなかった。

 デュラントは言う。

 「ナッシュ新監督のゲーム洞察力、コミュニケーション力、指示が、僕自身、そしてチーム全体を助け組織を向上させることは間違いない」

 チームは異なっていたが、ナッシュが2度目のMVPに輝き、デュラントがドラフトされた2007年、彼らは一緒に練習した時期がある。

 「当時、僕はナッシュからスポンジのようにバスケットボールを吸収した。決して独りよがりなプレーはしないし、バスケを良く知っている人。素晴らしいパスを送ってくれたし、オフェンスを組み立ててくれた。マッチアップしたらやられたもんだよ。まるで自分は学生のようだった。再び彼と共にバスケをやれることが楽しみで仕方ない。また多くを学びたいね」

 2017年、2018年とNBAを連覇し、共にファイナルのMVPに選出されたデュラントを、ナッシュがどのように再生させるか見物である。

 また、右肩の怪我により今年の2月下旬より欠場しているアービングの復帰も気になるhttps://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20200224-00164150/

 2009-2010シーズンのPlay Off中、私はフィニックス・サンズのリーダーだったナッシュをインタビューした。笑顔を絶やさず、折り目正しく、周囲の誰もから尊敬を集めていた。

 「勝つために全力を尽くす。試合はもちろん、日々のトレーニングも生活も、全て意識して過ごしています」と話していた。

 私のインタビュー後、サンズはフィニックスを発ちサンアントニオに向かったが、アリーナから運び出される大きなキャスター付きボストンバックにチームメイトの娘を乗せ、数メートル移動させていた。キャッキャッとはしゃぐ幼児に微笑みかけるナッシュの姿が忘れられない。

 ナッシュのキャリア、そして人格がいかなるチームを創り上げるか、期待を込めて見守りたい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事