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アルゼンチン人コーチが語る「選手の皆さん、サッカーが出来る喜びを噛み締めてください」

林壮一ノンフィクションライター
開幕戦のイニエスタ(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、栃木SC所属のエスクデロ競飛王。自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 昨年末から、川越市のフットサル場で自身のスクールを始め、この程、埼玉県のジュニアユース、トリコロールFCのコーチとなった彼に、Jリーグ再開について聞いた。

撮影:著者
撮影:著者

 僕の国、アルゼンチンでは今尚「外出禁止令」が出されていて、国内リーグ再開の目処が立ちません。お隣のブラジルではやっていますが、新型コロナウイルスに感染して亡くなる方の数が急増中でしょう。そんな状況のなかで「日本にはサッカーが戻って来て良かったな!」って、心から思います。スタディアムが無観客だとしても、テレビで楽しめますよね。

 7月4日のJリーグは、レッズ×マリノス、大阪ダービー、神戸×広島、FC東京×柏、鹿島×川崎と5試合を映像で目にしました。まだまだ選手たちは本調子じゃなく、怪我が多かったですね。足を攣った選手や肉離れをする人が出ましたよ。でも、しばらく試合が出来なかったのですから仕方ありません。ぞれぞれのプレーヤーがコンディションを整えるのに、もう少し時間が掛かるでしょう。

 試合には負けてしまいましたが、やはりイニエスタは素晴らしいですね。体力が完全に回復したとは言えないでしょうが、技術も存在感も違います。あんな選手が日本でプレーしているのだから、レベルアップは計り知れないものがありますよ。彼がいることで、Jリーグに対する世界からの注目度も上がります。

 今後もストライカー、ファンタジスタ、あるいはファイト出来る選手やドリブラーなど、日本のパスサッカーにインパクトを与える外国人選手がJリーガーになるといいですね。

 Jリーグ初期の頃のように、各チームが目玉となる外国人助っ人を連れてくれば、日本のサッカーはもっともっと成長します。ファンも盛り上がるし、コロナが終息した後の会場が満員になることにも繋がります。

 

 「お客さんがいないと、モチベーションが上がらない」と感じる選手もいることでしょう。でも、どんな有名選手だって、ストリートだったり、公園だったり、小学校の校庭でボールを蹴るところが原点だった筈です。味方と相手しかいないピッチで懸命にプレーすることで、サッカーが好きで好きでたまらなく、プロになりたいという夢を描いていた子供の頃の気持ちが戻って来るんじゃないでしょうか。そんな思いが映像から伝わって来た部分もあります。

 僕、個人としては、無観客での試合を観て、Jリーグが誕生する前の、お客さんが100人くらいしかいなかった日本リーグ時代を思い出しました。是非、選手の皆さんには「サッカーができる喜び」を実感してほしいですね。

 J2栃木に所属している僕の息子も、まだ完全にチームに溶け込んだとは言えませんが、徐々に良くなって行くでしょう。良かったら、応援してやって下さい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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