ドルトムントのエース、ジェイドン・サンチョが見せたハットトリックとジョージ・フロイド殺害への抗議

57分。ドルトムントの2点目をマークし、ユニフォームを脱いだサンチョ(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 現地時間5月末日に行われたブンデスリーガ、SCパーダーボルン07 vs. ボルシア・ドルトムント戦でドルトムントの背番号7、ジェイドン・サンチョがハットトリックを決めた。チームは6-1で快勝した。

 57分。左からのグラウンダークロスに右足で合わせたサンチョは、チームの2点目をマーク。得点後、ユニフォームを脱ぐと、彼の黄色いTシャツには「Justice for George Floyd(ジョージ・フロイドのために正義を)」という文字がハンドライティングで書かれていた。

 各年代別代表を経験しながら順調に成長しているサンチョは、20歳ながら、既にイングランドA代表で11試合に出場している。将来を嘱望される彼が、遠く離れたアメリカ合衆国で生じた人種差別問題に抗議する姿に釘付けになった。ユニフォームを脱いだ行為により、ルール通りイエローカードを食らったが、選手としてのみならず、一人の人間として差別に立ち向かおうとする様が胸を打つ。

 そのサンチョに、自らもユニフォームを脱いで駆け寄ったドルトムントの背番号5、モロッコ代表の21歳、アクラフ・ハキミもハンドライティングで同じ文字を書いていた。ハキミもU20、飛び級でU23とナショナルチームのユニフォームを纏い、A代表28キャップを誇る。

 現在、レアル・マドリードに所属しながら、レンタルでドルトムントの一員となっている。このSCパーダーボルン07戦では82分にゴールを挙げ、ドルトムントの4点目をマークした。

 サンチョは74分にも左からのパスをワントラップして左足で、ロスタイムには自らドリブルで切れ込んで得点した。サンチョにとって、プロになってから初めて記録するハットトリックであった。

 白人警官に殺されたジョージ・フロイドの死について問題を投げかけた彼らの姿は、スポーツの枠を超え、それぞれの人間としての大きさを示した。ベトナム戦争に反対した、あのモハメド・アリを彷彿させる。

 サンチョは"We have to come together as one & fight for justice.(僕らは正義のために一つになって闘わねばならない)We are stronger together!(共に、強く進んでいこう!)"とツイートしている。

 

 また、ボルシアMGのフランス人FWマルクス・テュラムも、1.FCウニオン・ベルリン戦でゴールした後、ピッチに左膝を付けて差別撲滅のアピールをした。FCシャルケ04所属のアメリカ代表DF、ウェストン・マッケニーも「ジョージに正義を」と書いたキャプテンマークのようなアームバンドを左腕に巻いてプレーしている。

 

 ドイツサッカー連盟(DFB)は6月3日、試合中に世界に向かって抗議の声を上げた彼らについて「連帯の象徴である為、何も処分は下さない」とアナウンス。そして、フリッツ・ケラー会長は「管理機構の将来を見据えた決定を歓迎する。非常にうれしく思う。DFBはいかなる形の人種差別、暴力に反対し、寛容性や開放性、多様性を支持する」と語った。

 一流選手は、やはり人間としても光っている。今まで以上に、彼らのプレーに注目したい。

デレック・チョーヴィン 写真:Hennepin County Jail 提供
デレック・チョーヴィン 写真:Hennepin County Jail 提供

 さて、ジョージ・フロイドを殺害した元警官、デレック・チョーヴィンと、殺人幇助で立件された3名の元同僚の裁判は、どのような形で行われるか。心あるブンデスリーガの抗議が陪審員に届くことを、切に願う。