Yahoo!ニュース

KINGレブロンのライバル、カーメロ・アンソニーの存在感

林壮一ノンフィクションライター
高校時代からライバルとして火花を散らして来た(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 12月23日以降、5連敗中のポートランド・トレイルブレイザーズ。目下、Northwest で4位と苦戦が続いている。

 今シーズン、そのポートランドにNBAの大ベテラン、カーメロ・アンソニー(35歳)が加わった。およそ1年の空白期間を経ての現役復帰である。身長203センチのフォワード。オールスターに10度出場。"KING"レブロン・ジェームスより1学年上で、高校時代から火花を散らして来たライバルだ。

 名門、シラキューズ大で1年生にしてエースとなり、中退してNBA入り。この時のドラフト1位はレブロンであった。

 アンソニーはデンバー・ナゲッツの即戦力としてチームを牽引する。ナゲッツの背番号15は、NBAを代表する選手となった。ヘッドバンドを裏にして身につける姿もパワフルなプレーも、ファンを魅了した。

 しかし、飲酒運転やチーム批判などアンソニーがプレー以外で注目されたのも事実である。2010-11シーズンの途中で、ニューヨーク・ニックスに移籍。その後、2017年にオクラホマシティ・サンダー、翌年、ヒューストン・ロケッツと渡り歩き、ようやくポートランドに決まるまでは浪人状態に置かれた。かなりの精神的葛藤があったであろう。

 2019年11月19日、ニューオーリンズ・ペリカンズ戦にて、アンソニーは初めてトレイルブレイザーズのユニフォームを身に纏ってコートに立った。24分間の出場で10得点を挙げたが、「年には勝てない」「パフォーマンスがイマイチ」と酷評される。

 ところが、連敗中ながらもベテランの意地を見せ、アンソニーはスタメンを奪う。このところ、1試合で30分以上プレーする機会が増えている。

 2019年最後のホームゲームとなったモダ・センター(ポートランド)は、1万9896名の観客で埋まり、その中でトレイルブレイザーズは逆点負けを喫したが(116-122)、何人かのファンがナゲッツ時代のアンソニーの背番号15のレプリカユニフォームを着ているのが目に留まった。

 試合後の控え室で、私はアンソニーに質問をぶつけた。

----ナゲッツ時代やオールスターでプレーしていた頃と今とでは、自分の立ち位置がどのように違うと感じていますか?

 「う~ん。今の方がチャレンジかもしれない。今日は負けてしまったけれど、チームにアジャストし、味方を生かしながら自分も生きる。自分には何が可能なのかを常に考えながらプレーする。そういう挑戦の日々だよね」

----そういった仕事をを果たすのに最も武器となっているものは?

 「やっぱり経験じゃないかな。この年齢になると、昔は見えなかったものが見えて来たりするよ」

----たとえば?

 「仲間との接し方、監督の要求、チームに何が必要で、どんな声を挙げるべきか、等々。まぁ、今の俺にも期待してくれよ」

 ナゲッツ時代の終盤、アンソニーの体はポッチャリしていた。10シーズン後の今の方が引き締まっている。また、NBA選手は控え室で身につけていた物を無造作に脱ぎ捨てて洗濯係に拾わせる者も少なくないが、アンソニーは一つ一つ丁寧に専用の袋に詰め、担当者に手渡していた。2枚重ねのソックスを脱いだ後、幾重にも巻かれたテーピングに慎重に刃を入れる様も印象的だった。

 

 昨シーズン、怪我に泣いたKINGレブロンは今季、好調である。やはりNBA随一の座は誰にも渡さない。レブロンと今のアンソニーは確かに差が出てしまった。だが、アンソニーは、何かを見せてくれるような気がしてならない。

 ポートランド・トレイルブレイザーズの背番号00。カーメロ・アンソニーを見逃すな!

 

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事