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アルゼンチン人コーチが語る「怖さがまるで無かったサムライブルー」

林壮一ノンフィクションライター
新ユニフォームで登場した日本代表だったが…(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、京都サンガ所属のエスクデロ競飛王。自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。最近、川越市で自身のスクールを始めた彼が、日本代表vs.キルギスについて語った。

撮影:著者
撮影:著者

 カタールW杯アジア2次予選で日本代表はキルギスを2-0で下しました。アウェイに乗り込んで勝った。これで4連勝ですから、結果は良しとしましょう。でも、10月に発表されたFIFAランキングで94位のチームと、差が無いことを示してしまった。圧倒するには程遠いパフォーマンスでした。

 ご承知のように得点も崩して流れの中から奪った形ではなく、南野のPKと原口のFKです。確かに南野は頑張っていましたし、両サイドバックも速さを感じさせました。しかし、あの内容では選手たちもファンも納得してはいないでしょう。素晴らしいサッカーとはとても言えませんでした。

 ミスが多く、パスが3つ4つと繋がるシーンが見られませんでしたね。キルギス戦の日本を見て、「怖い」と感じたサッカー関係者がいたでしょうか? アルゼンチン人にはいないでしょうね。もっともっと個々がレベルアップしないといけません。

 例えば、韓国代表のストライカー、ソン・フンミン(トッテナム・ホットスパー)は、アジア予選を戦うチームのみならず、プレミアリーグの選手たちからも恐れられています。かつての本田圭佑や岡崎慎司も、相手に恐怖を抱かせるプレーをしていました。キルギス戦を見る限り、今の代表選手たちはそこまでのレベルに達していないと言わざるを得ません。

 グラウンドが悪かった。敵地だった。といったマイナス面を考慮しても、見応えのあるサッカーではなかったですね。日本のサッカーは、次のW杯でベスト8、ベスト4を目指すんですよね? ならば、もっと変わらなければいけない。

 僕が痛切に感じるのは、日本には「指示待ちっ子」が多い点です。小学生の頃から「ミスしたら使ってもらえないかもしれない」「●●したら監督に怒られる」「○○したらベンチに下げられる」と怯えてサッカーをしている子が多い。その結果、自分の頭で考えてプレーすることや、ファイトする選手が見当たらない。正直、昨日の代表チームは日本の問題点を露呈しているようでガッカリしました。

 2次予選は勝ち上がれるでしょう。でも、アジア最終予選やW杯本戦は対戦相手だって強くなります。フンミンを日本の誰が止めるんですか? 中国、サウジアラビア、オーストラリアは元々競い合って来ましたし、北朝鮮、タイ、レバノンあたりも力を付けて来ていますよ。

 昨日は「ダメ」と表現するよりも魅力の無いサッカーでした。日本代表、もっともっと激しく闘う姿勢を見せて下さい! そして、少年たちで監督に怯えながらやっている子には、僕がサッカーの楽しさを教えたいです。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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