Yahoo!ニュース

アルゼンチン人コーチが語る「見応え十二分だったYBCルヴァンカップ決勝」

林壮一ノンフィクションライター
<美しき敗者>となったコンサドーレを指揮するペドロヴィッチ監督(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、京都サンガ所属のエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。その彼が、2019年YBCルヴァンカップ決勝について語った。

撮影:著者
撮影:著者

 ルヴァンカップ決勝は素晴らしい内容でしたね。コンサドーレが右サイドをやぶって、開始10分に先制。Jリーグ2連覇中のフロンターレも勝負強さを見せ、前半のロスタイムに1-1の同点弾。そして、チームの顔である中村憲剛を64分に、小林悠を73分に投入しました。試合終了間際の88分に、その小林がゴールを決めて「勝負あり。流石Jリーグ王者だな」と思わせました。

 でも、そこからコンサドーレが非常によく粘りましたね。ロスタイムにコーナーキックから深井一希がヘディングを叩き込んで、追いついたシーンは心が震えましたよ。埼スタのホーム側は、いつもはレッズのサポーターで真っ赤になりますが、今回はコンサドーレの赤で燃えていましたね。

 延長に入ってから、フロンターレはDFの谷口彰悟が退場して10人になり、谷口のファールで得たFKを福森晃斗が直接決めてリード。この時、札幌のファンの多くは、願いも込めて勝利を手にしたと思ったでしょう。でも、やはりフロンターレは王者らしく、再び小林が決めて3-3としました。

 僕も試合を見ながら驚いたり、唸ったり、本当にワクワクする展開でした。サッカーを堪能できました。

 PKでの決着ですから、どちらが勝ってもおかしくなかったです。明暗を分けたのは、間違いなく運ですよ。もし、PK合戦がコンサドーレのサポーター側のゴールで行われていたら、違った結果になったかもしれません。中村憲剛は自分がキックを決めた後、スタンドに向かって「もっと応援して!」ってアピールしたでしょう。ああいう雰囲気も勝敗に影響する部分があります。

 今回、クラブ初タイトルを目前で逃しましたが、コンサドーレは若い選手が多く、未来に可能性を感じさせます。決勝のスタメンのなかで4名が下部組織であるコンサドーレU18出身であるところに僕は注目しますね。それだけ、育成が上手いということですよ。

 ミハイロ・ペドロヴィッチ監督は、広島でも浦和でも若い選手を引き上げ、伸ばすことに長けていました。彼の手腕を見た気がします。今回は運がなかったけれど、今後、コンサドーレは強くなるでしょう。

 コンサドーレのなかでは、チームの2点目を決めた背番号8のボランチ、深井選手の闘志&プレーが印象的でした。この調子で頑張れば、彼は日本代表からお呼びが掛かるんじゃないかな。

 両チームに「見応えのあるナイスゲームをありがとう」と言いたいです。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事