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プロボクサーとなった元統一ヘビー級チャンピオンの息子

林壮一ノンフィクションライター
1996年11月9日、タイソンをKOしたホリフィールド父(写真:ロイター/アフロ)

 元統一ヘビー級チャンピオン、イベンダー・ホリフィールドの息子、イヴァンがプロボクサーとなり、間もなくデビューする。先日、メイン・イベンツ社とのプロモート契約を締結した。

 21歳のイヴァンはESPNによるとアマチュアで80戦強戦い、父を支えたスタッフと10年もの間、共に練習して来たそうだが、Boxrec.comでは2勝2敗と記録されている。

メイン・イベンツは、ホリフィールド父が1984年のロス五輪で銅メダルを獲得後、米国代表チームの同僚であったパーネル・ウィティカー、メルドリック・テーラー、マーク・ブリーランド、タイレル・ビッグス等と共に契約を交わした社だ。

 1996年11月9日、圧倒的不利の予想を覆し、イベンダー・ホリフィールドはマイク・タイソンをノックアウトして、名実ともにボクシング界の主役となった。マグネシウムと評されたタイソンのハードパンチに怯まず、真っ向から打ち合いを挑んだ姿は実に美しかった。

 私はこの一戦を会場の記者席から目にしたが、胸がいっぱいになり、かつ鳥肌が立ったことを覚えている。

 イヴァンが誕生したのは、そのおよそ1年後、1997年10月23日だ。

 レノックス・ルイスとの統一戦を控えていた1998年の夏、ホリフィールド父は「もう一生掛かっても使い切れないだけの財を成した」と公言していた。地元アトランタに109も部屋があるお城のような豪邸を建て、螺旋階段を上り下りする生活を満喫していたのだが…。

9名の女性との間に11人もの子供を作り、それぞれの養育費を払わないことで訴訟を起こされ……銀行から借りた$10ミリオンのローンも無視して訴えられ、『お城』を手放すことになった。少なく見積っても200億円は稼いだ筈だが、借りた金や慰謝料や子供たちの生活費を工面するため、かなり衰えながらも48歳までリングに上がらねばならなかった。

 プロ入りに関して、イヴァンは「夢が叶った」と話した。このスーパーウエルター級のファイターは、どんなリング生活を歩むのか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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