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アルゼンチン人コーチが語る「メッシの後継者になりうるバルサの19歳」

林壮一ノンフィクションライター
埼スタを沸かせたリキ・プッチ。ボールを奪いに行くのは元セレソンのダビド・ルイス(写真:松尾/アフロスポーツ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は現在、京都サンガ所属のエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。現在、彼は、埼玉県に発足したクラブチームFC Futureで指揮を執っている。

 そのエスクデロが、7月23日のRakuten Cup、バルセロナvs.チェルシーを記者席から生観戦した。

撮影:著者
撮影:著者

 いやぁ実に美しいサッカーでした。素晴らしかったです。Copa Americaの疲れが残っているメッシ、スアレスが出なかったので、バルセロナのファンは肩透かしを食ったと感じたかもしれません。バルサは前半と後半でメンバーを総入れ替えし、ちょっと後半メンバーはスタメンよりも見劣りしました。でも、パスミス、トラップミスが少ないハイレベルなゲームで、非常に楽しめました。

 スアレスがバルセロナに入団した時、●●の状況ならシュートを打ってもいいが、闇雲にバンバン打つな! という決まり事を守らなきゃならなくて、チームにフィットするのに時間が掛かりました。ブラジル代表のコウチーニョもバルサで苦しんでいます。でも、グリーズマンは、早くも馴染んでいますね。シーズンが始まれば、FWは左がグリーズマン、真ん中がスアレス、そして右がメッシで、この3人は固定されるでしょう。

 今回、バルサはチェルシーに1-2で負けましたが、一番僕の目に留まったのは、背番号8のリキ・プッチです。バルサBから上がってイニエスタの番号を貰ったということは、どれだけクラブから期待されているかが分かりますね。

 ドリブルで突破し、グリーズマンやデンベレにピンポイントのパスを配給していました。ヒールパスも良かった。左足でも、右足でも高いレベルでボールを扱え、独特のリズムを持っています。彼がいることで、バルサの流れるようなパス回しにアクセントが出ます。変化をつけられる選手ですよ。

 リキ・プッチは、8月3日生まれの19歳。プレシーズンマッチですから、前半だけで引っ込んでしまいましたが、底知れない才能を感じさせました。このまま順調に伸びれば、メッシの次の10番になれる器です。惚れ惚れするような選手ですよ。

 ただ、左のグリーズマン、真ん中のスアレス、右のメッシを差し置いて先発の座を奪えるか? というとまだでしょう。ですから2~3年、レンタル移籍で試合に出られる中堅以下のチームでやるといいんじゃないかな。今のプッチには経験を積ませることが重要です。

 シーズン前のこの時期、ベテラン選手は怪我をしないようにプレーします。ラキティッチも後半から出て来て、要所要所では見事なプレーを見せたものの、それほど目立っていなかったですよね。最後にミドルをバシッと決めて実力を発揮しましたが、100%のプレーはしていませんでした。

 一方、若手は自らをアピールするチャンスです。さっきも話したように、リキ・プッチの存在感は抜群でした。5万1126人の観客も、プッチのプレーには満足だったでしょう。

 逆に緊張し過ぎてしまったのが、右サイドバックの#16、オリオル・ブスケツでした。1対1でボールを奪われ、トラップミスもしてしまった。まだ20歳で将来がありますが、ピケは途中から彼にほとんどパスを出さなかったですね。

 チェルシーは攻守の切り替えが速かったですね。それに、皆、ゴツイ。バルサの選手に対して体の入れ方が巧でした。今はメンバーを試す期間ですから、勝敗にはそれほど拘っていませんが、本当に美しいサッカーでした。心が満たされましたね。こういう一流チーム同士の対戦が日本で見られるのは、幸せなことです。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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