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KINGのいないNBAプレイオフ

林壮一ノンフィクションライター
今シーズンのALL STARでは回復の兆しを見せたが…(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 Los Angeles Lakersは、早々とプレイオフ出場を逃した。今日のバスケットボール界で唯一無二のスターであるレブロン・ジェームズの離脱が響いたのだ。

 12月25日に左足の付け根を負傷し、その後の17試合を欠場。エースを欠き、若手主体となったレイカーズは“並みのチーム”と化し、現在ウェスタン・コンファレンス15チーム中11位と精彩を欠く。

 プレイオフの出場権を失い、“消化試合”を続けざるを得なくなったレイカーズは、先週末、「レブロンは今後のゲームに出場させず、休ませる」と発表した。言うまでもなく、チームドクターとメディカル・スタッフが話し合ったうえでの結論だ。

 NBAで4度MVPを獲得したレブロンは同決定により、10月まで公式戦に出る機会が無くなった。

 現在34歳のレブロンだが、決して衰えは感じさせない。マイケル・ジョーダンを超えたか否か、という論議も、彼だからこそ生じる。レブロンだけが"神"と呼ばれるジョーダンの比較対象者となりうるのだ。

 私がレブロンを初めて生観戦したのは、2009-2010シーズン、オークランドで行われたゴールデンステイト・ウォーリアーズvs.クリーブランド・キャバリアーズ戦であった。当時、キャバリアーズには、引退間近のシャキール・オニールがいたが、チームの顔はレブロンで、その存在感は他の選手とは比較にならなかった。

 ゲーム前の控室でうつ伏せになりながらマッサージを受けていたレブロンは、フライドチキンを齧っていた。KINGならではの大胆不敵さだった。マッサージを担当する者の手がせわしなく動く中、レブロンは時折「う~」とか「おお~」とか言いながら、チキンをパクついていた。その光景を目にしながら私は、何と高慢な男なのだろうと思った。

 しかし、TIP OFFと同時に、否が応でもレブロンに魅了される。誇張なく、たった一人でゲームを演出した。当時のウォーリアーズにもステファン・カリーはいたが、まだブレイク前で、コートの主役は紛れもなくレブロンだった。

 レブロンのプレーは野性的だった。獲物を狙う野獣――全盛期にKOの山を築いたマイク・タイソンと共通するものがあった。以来、私はレブロンに心を焦がしている。

 今季のプレイオフも熱い戦いが繰り広げられるだろうが、レブロンを凌駕する男が現れるか? と訊かれれば、私はNOと答える。眠れる獅子が傷を癒し、自身17シーズン目の来季に大暴れすることを願ってやまない。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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