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アルゼンチン人コーチが語る「日本代表の成長のカギは真のリーダーの存在」

林壮一ノンフィクションライター
ベトナム戦のスタメン(写真:ロイター/アフロ)

 ベトナムを1-0で下し、アジアカップで4強入りしたサムライブルー。全て1点差で5連勝しながらも、内容は冴えない。

 その戦いぶりを、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表のセルヒオ・エスクデロに語ってもらった。因みに、彼の実兄はディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイングのピチ。息子は、京都サンガ所属のエスクデロ競飛王である。セルヒオ・エスクデロは現在、埼玉県に発足したクラブチームFC Futureで指揮を執っている。

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 ベトナムの良さが目立つ試合でしたね。激しいし、細かいパスを繋げるチームでした。正直、ベトナムがここまでやるんだなと驚かされましたよ。

 カタール、ベトナムと日本を脅かすアジアのチームの成長が目覚ましいですね。このままでは次のワールドカップの予選で、日本は苦労することになるでしょう。正直、ロシアワールドカップで活躍した日本なのですから、ベトナムを相手にした場合、5-0とか3-0で勝たなくてはいけなかった。

 5試合に勝利し、守備の形は出来つつあります。でも、アジアのチャンピオンらしく、もっともっと攻撃サッカーをしなくては。前の選手がイマイチですね。ドリブルでの仕掛けや、シュートが少ない。MFもミドルシュートをガンガン打ってほしいですね。とにかくフィニッシュが課題です。大迫勇也ひとりに任せずに「俺が決めてやる!」という気概を見せないと。

 後半、原口元気が左サイドからドンピシャのクロスを北川航也に送りましたよね。あれを決められないのはストライカーとして致命的です。北川ではなく、武藤嘉紀を使うべきでした。原口、堂安律も守備面で健闘しましたが、あくまでも攻めで決定的な仕事をしてほしい。

 DF陣は、GKの権田修一と吉田麻也の連携がうまくいっていない部分があります。権田は足元が覚束ないですね。アジアなら失点にならなくても、ヨーロッパや南米のチームでは見逃してくれませんよ。

撮影:著者
撮影:著者

 いいですか。今日の日本代表メンバーは、多くがヨーロッパで苦しい争いをしている選手たちなんです。それが、アジアしか知らないベトナムを相手に何の“差”も見せられないところが、大きな問題です。

 サムライブルーの次のテーマは何ですか? ワールドカップで、前回を上回るベスト8を目指すんでしょう。全てにおいてレベルアップしなければ、世界になんて追いつきませんよ。

 森保ジャパンが誕生してから、僕は「よく走って全員で戦う」サッカーに期待していました。ロシアに行ったメンバーよりも上なんじゃないかと思っていたほどです。でも、今の代表を目にする限り、間違いだったようです。頑張って走っていますが、本当に物足りません。

 長友佑都、乾貴士、吉田、原口とワールドカップを戦った選手たちが、経験を活かしていないように感じますね。

 今のパッとしない代表の原因を探ってみると、攻守にわたってバランスを取りながらチームを引っ張っていくリーダーの存在が無いからかな、と思います。柴崎岳はリーダーというタイプじゃないし、遠藤航は代表での経験が足りません。キャプテンの吉田は人がいいのは伝わって来ますが、優し過ぎます。

 誰かが、アルゼンチンのマスチュラーノとかシメオネみたいな役割を果たさないと…。接戦をモノにして一つ一つ進歩しているとはいえ、もっともっと頑張らなきゃいけませんね。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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