Yahoo!ニュース

元日本代表主将の喝

林壮一ノンフィクションライター
元日本代表、背番号1の田口光久氏

「シンガポール戦は相手が格下なんだから、あと4~5点入れたかったですね。カンボジア戦は、不安要素を露呈しました」

そう語るのは、元日本代表GKで、サムライブルーの主将を務めた田口光久氏。とんねるずの「生ダラ」に出演していた“メーランおやじ”として記憶している方も多いだろう。コミカルなキャラを演じていたが、現役時代の印象は、<とにかく怖い日本代表のキャプテン&背番号1>であった。

「私の頃は、代表こそがステイタスでした。代表のユニフォームを脱ぐ時に引退すると決めていましたよ」。

Aキャップ数は59。ワールドカップ・アルゼンチン大会予選、モスクワ、ロス五輪予選で日本のゴールマウスを守った。

「今回の2試合における収穫は、柏木陽介。機能性と構成力の高さを見せましたね。柏木には、他の選手にはないスペースの作り方がある」

しかしながら、田口氏が好材料として挙げたのは、それだけであった。

「このままでは、最終予選が非常に不安です。特にセンターバック。あのレベルの相手に空中戦でやられている。また、カバーリングの意識が無い。1対1は、自軍の選手が負けると思ってカバーリングしなければいけない。そんな、小中学生が理解しているべきことが分かっていない。南米やヨーロッパの選手はカバーリングを怠りませんよ。 

人工芝に慣れなかったって言っても、高校時代からそういうピッチを経験している選手も多い筈。『何とかなるだろう』っていう甘い意識が見られますね」

田口氏が嘆くのも、日本における少年期の育成法である。

日本にはゴールデンエイジを教える指導者がいない。

私は今年の初夏まで、某月刊誌で連載を持ち、様々な育成現場を訪ねたが、まったく同じ感想を持った。多少サッカーを齧っただけで人間的に欠陥を抱えた輩、確固とした人生観や教育論を持たないコーチに少年育成を任せてしまっては、手遅れになる。

「日本は『あれはダメ、これはダメ』っていう教えが多いでしょう。それじゃ、子供の可能性は広がらないんです。カバーリングの意識にしても、きちんとしたコーチを受けていないから、A代表になっても出来ないんです」という田口氏の言葉は、言い得て妙だ。

彼のような存在が、声を大にして、指導者を育てていかねば、日本サッカーに未来はないと私は思う。

※さて、そんな内容で現役コーチの方々とトークショーを行います。興味のある方は、是非お越しください。お待ちしております。  

https://www.shosen.co.jp/event/24914/

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事