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「おんな城主 直虎」騒動でも示された三浦春馬さんを慕う「春友」さんたちの輪とパワー

篠田博之月刊『創』編集長
春馬さん主演「僕のいた時間」をイメージした切り絵(海扉アラジン・作)

「おんな城主 直虎」回顧展めぐる騒動

 三浦春馬さんに関わる出来事がこの1カ月もいろいろあった。

 ひとつ大きな話題になったのは、「おんな城主 直虎」回顧展をめぐる騒動だ。2023年にスタートしたNHK大河ドラマ「どうする家康」の舞台地である静岡県浜松市で、2017年放送の大河ドラマ「おんな城主 直虎」の回顧展が1月31日から24年1月14日まで開催されることになった。

 ところが、その初日から思わぬ騒動が広がった。「おんな城主 直虎」には三浦春馬さんが重要な役で出演しており、春友さんたちは当然、会場を訪れたのだが、「直虎と時代をともにした人々相関図」という展示で、何と春馬さんの写真が掲載されず、ブルーの影になっていたのだ。説明してもわかりにくいので写真を掲げるが、別にこの件をむしかえそうという意図はない。

「おんな城主 直虎」回顧展での当初の展示(春友さん撮影)
「おんな城主 直虎」回顧展での当初の展示(春友さん撮影)

 ただ、当初はこの仕打ちは何だということでたちまちSNSに話題が広がった。

 主催者に電話で問い合わせをした春友さんもいたようで、そのやりとりも詳細にSNSに投稿された。掲載許可がおりなかったようだという投稿で、今回の件は所属事務所アミューズの仕業かという反発が広がった。

 騒動が広がったことに主催者も慌てたようで、2月2日にはホームページにNHKエンタープライズの謝罪文が公開された。それによると「所属事務所から許可がおりなかったという事実はなく、展示設置を受注している弊社の権利確認の不手際のため、このような事態になりました」と事情が説明され、「修正した展示パネルを2月4日(土)より展示させていただきます」とされた。

 さらに2月3日にはアミューズ法務部のツイッターに「この数日、回顧展での当社出演アーティストの写真の不掲載について、誤った情報が拡散されました。ファンの皆様のご心痛に、当社も悲しく思います」などという投稿がアップされた。

 そして2月4日には、展示パネルに春馬さんの写真が掲載されたのだった。ある意味で迅速な対応とはいえるが、それだけ春友さんたちの反応が大きかったのだろう。

 直されて現在はどうなったかという展示写真も掲げておこう。春友さんたちもこちらを見てホッとしたに違いない。

「おんな城主 直虎」回顧展での改められた展示(春友さん撮影)
「おんな城主 直虎」回顧展での改められた展示(春友さん撮影)

 2020年以来、春友さんたちは、三浦春馬さんを忘れまいと誓い、出演作品の再上映などを働きかけたり、新聞にメッセージ広告を掲載、また地方の花火大会などでも春馬さんへのメッセージ花火を実現するなど様々なことを行ってきた。今回の写真不掲載というのは、そういう春友さんたちの神経を逆なでするもので、怒りが拡散するのは、ある意味で当然だったかもしれない。

 経緯をみると、どうも単純な不手際で起きたミスらしいのだが、期せずして春友さんたちの想いやパワーを示した形となった。

高校3年生三早希さんの卒業記念制作

 間もなく春馬さんの誕生日である4月5日が訪れるが、既に春友さんたちは各地で様々な催しや春活を行う準備に入っているようだ。

 そうした春友さんたちの輪は広がり続けており、例えば月刊『創』(つくる)に若き春友さんとしてよく投稿している岐阜県の高校3年生・三早希さんが卒業展に春馬さんをイメージした作品を出品すると告知したところ、春友さんたちがわざわざ会場の岐阜県美術館にまで足を運んだという。この件は、『創』の三早希さんの投稿が、京都のミュージシャン堀内圭三さんのYoutube配信「ほっこりカフェ」で紹介され、春友さんたちに広がったものだ。

 その卒業展の最終日の夜に、三早希さんから届いたメールはこうだ。彼女の作品もなかなかすごいものなのでその写真もアップしよう。

高校3年生・三早希さんの作品(本人提供)
高校3年生・三早希さんの作品(本人提供)

《きょう無事に卒展が終了しました。たくさんのお客様、そして春友さん方にご覧になって頂きました。会場にお見えになった春友さん、そして応援のメッセージを送って下さった春友さん…たくさんの春友さん方と様々な形で出会うことができ、本当に幸せで温かい気持ちでいっぱいです。

 今回の作品はエコデザインをテーマとして学校内で廃材となった段ボールで馬形の棚と机の機能を併せ持つ家具を作りました。実物を作る前に段ボールで模型を作る際に完成順に並べた時に5番目を「5代」と表現し『天外者』を連想させてみたり、作品のタイトル〈Damboru a Horse〉を反対からスペルに注目すると、Harumaの文字が見えてきたり、そして模型について紹介するため海扉アラジンさんの切り絵に感銘を受け、段ボールで切り絵を作り、手書きで表示を書きました。

 この馬形の家具は横に展示してある椅子と共に使用できるように寸法を調整して、どちらの作品も各パーツが分解・組み立て式のためコンパクトに片付けられるところもこだわりのポイントです。馬のたてがみは取り出すことができる葦のミニほうきになっているので、デスクワーク後の掃除用品になります。そして、背中の部分には手作りの桜をモチーフとしたクロスをひいて春を表現しました。棚の機能を表すため、春馬さんのCDや関連する本も展示し、春馬さんへの気持ちがたくさん詰まった作品になりました。家に持ち帰ったあとは、春馬さんの作品で溢れた家具として使いたいです。》

人形作家・月乃光さんの「星空を見上げる少年」

 もうひとり、このところ春友さんの間で話題になっているのが、人形作家・月乃光さんの春馬ドールこと「星空を見上げる少年」だ。先頃、大阪阪急うめだ本店のハンドメイド市に出展され、春友さんたちが足を運んだ。これも写真を掲載しよう。

人形作家・月乃光さんの「星空を見上げる少年」(本人提供)
人形作家・月乃光さんの「星空を見上げる少年」(本人提供)

 「星空を見上げる少年」は4月19~23日に東京都美術館で開催されるベラドンナ・アート展にも出品される予定だ。春友さんたちの間で話題が広がっているこの作品への思い、三浦春馬さんへの思いを、月乃光さん本人に話を聞いた。

――そもそも春馬さんについてはいつからのファンなのですか?

《NHK朝ドラ「ファイト」の「岡部君」の時から春馬君のファンです》

――人形はどんな気持ちで作っているのでしょうか。

《人形を作る時は、写真を見ながら顔の輪郭や目や鼻の位置を参考にしながら作ることが多いです。 「すごく似せて作ろう」というよりも、男の子の人形をどうやって粘土で作ればいいのかなと、ちょうど春馬君の写真を見ながら試行錯誤していたところで、あの7月18日を迎えてしまいました。

 光り輝いていた星が消えてしまったことが耐え難く、何カ月も喪失感を抱えたまま過ごしていました。いつまでもこのままではいけないと、粘土の作業を再開した頃は、なんとかしてあの美しい姿を形に残したいという気持ちに変わっていました。粘土の造形技術も足りなかったので時間も掛かりました。

 昨年1月、コンクールに出展させて頂いた時は不安しかありませんでしたが、多くの春友さんから暖かい言葉を頂いたり、SNSで発信して下さったりして、もう感謝しかありません。 この先、クリエイターやアーティストの方々からも、三浦春馬さんをモチーフにした作品が発表されていくといいなと思っています。普通に名前を出して普通に功績を讃えて、後生に語り継いでいく春友のひとりでいたいです》

――堀内圭三さんの「ほっこりカフェ」にはどうやって参加するようになったのですか。

《facebookの友人が「春馬ドール」と名付けてくれたことで、春友さんとお知り合いになり、その中にほっこりカフェの常連さんたちがいらっしゃったことで私も来店するようになりました。堀内圭三マスターにも大阪の展示の時にお会いでき、それ以来大変お世話になっております》

 月乃光さんは「星を見上げる少年」以外にも春馬さんモチーフの小さな人形を作り、イベントなどで販売もしている。

陶器で作り続ける春馬さんのイメージ

 最後に、これも『創』によく投稿してくれている京都のノコノコさんの作品も紹介しよう。彼女はずっと春馬さんをイメージした作品を陶器で作っているのだが、この2年余でスキルがかなり上がっている。写真を掲げたのは春馬さんゆかりのミュージカル「キンキーブーツ」をイメージした作品だ。実際に大阪でキンキーブーツの公演を観た後に作ったという。 

京都のノコノコさんの作品(本人提供)
京都のノコノコさんの作品(本人提供)

 最近は、春馬さんの誕生日4月5日を意識した、その誕生花が勿忘草ということで抹茶碗に絵付けしたという作品の写真を送ってきた。

4月5日の誕生花が勿忘草ということで抹茶碗に絵付け(ノコノコさん提供)
4月5日の誕生花が勿忘草ということで抹茶碗に絵付け(ノコノコさん提供)

 月刊『創』の表紙に春馬さんをイメージした切り絵をずっと掲載している海扉アラジンさんの作品も春友さんたちの間にかなり浸透しているし、春友さんたちの「輪」はさらに広がりつつあるようだ。

春馬さんの「聖地巡り」も活発

 春友さんたちの「聖地巡り」というか、春馬さんゆかりの地を訪ねる旅も盛んだ。故郷の土浦はもちろんだが、映画『天外者』の舞台となった場所や、他の映画やドラマの作品のロケ地巡りも盛んに行われている。そうした人たちの写真付きレポートを3カ月ほど前から『創』に載せているが、そのうちの3本をヤフー雑誌に載せたので下記からアクセスしてほしい。

シリーズ 春馬さんを訪ねて第1回 春馬さんの映画のロケ地巡りで仙台へ 脇屋恵子

https://news.yahoo.co.jp/articles/ef64ab339dea28e672606eaf8a5156644ee51713

第2回 私の日本全国「春活」の旅―2022年10月29日~12月1日  tunami

https://news.yahoo.co.jp/articles/804091e6a45262c12770c9710accd454c0affcc2

第3回 「こんな夜更けにバナナかよ」キスした木を探す旅  黒猫

https://news.yahoo.co.jp/articles/f018ffbf5c2d195be102e03b6a53ac9b7fadd00f

 2020年の春馬さんの死は、コロナ禍という大きな社会的出来事と重なり、多くの女性が自分の生き方を振り返るきっかけとなった。その影響を受けた「春友」さんたちの輪がいまだに広がり、続いているというのは、異例の社会現象と言える。

 この現象はこれからどうなってゆくのだろうか。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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