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大反響の皇室SNS発信と、気になる秋篠宮家めぐる広報体制強化の動き

篠田博之月刊『創』編集長
宮内庁インスタグラム(筆者撮影)

4月開始のインスタが予想通りの大きな反響

 4月1日に満を持してスタートした宮内庁のインスタグラム発信が予想通りの反響だ。1日午前零時に発信を始めたところ、初日でフォロワー数が35万人超え。首相官邸の29万人を上回ったと報じられた。その後、2日で50万人超え、8日で75万人超え。3週間目の21日に100万人を突破した。この記事を書いている4月29日昼現在、119万人だ。

 ただそこで公開されているのは宮内庁が撮影した皇族の公務の映像で、これまで公式ホームページやテレビなどで公開されてきたものとあまり変わらない。ただ、公開頻度がこれまでの比でないし、やはりスマホで見られるというのが大きいのだろう。もう1年前から皇室のSNS発信が報じられてきたから、なかには佳子さまや愛子さまが個人的に何かつぶやくといったものをイメージして期待していた人もいるかもしれないが、簡単にそうはなりそうもない。

 発表から1年たって実現したのは、SNS発信のリスクについても検討がなされていたのだろう。実際、今回スタートしたものをみると、コメント欄はあらかじめ削除されているし、宮内庁広報室もかなりいろいろ考えたのだろう。

「なりすましに注意」の警告が宮内庁ホームページに

 そんな警戒感の現れといえば、4月17日に宮内庁のホームページに掲載された警告だ。

「皇室の方々・宮内庁を装うSNSアカウントにご注意ください」というタイトルで、こう書かれている。

《宮内庁が運用しているSNSアカウントは、Instagramの宮内庁公式アカウント(名前:宮内庁/Imperial Household Agency、ユーザーネーム:kunaicho_jp)以外に存在しておりません。

宮内庁や天皇皇后両陛下を始めとする皇室の方々を装ったなりすましアカウントには、十分に注意し、必要に応じて宮内庁、SNS事業者等にご相談ください。》

 なりすましアカウントが登場するというのもSNSならではだが、『皇室タブー』という著書もある筆者からすれば、皇室タブーという概念自体が薄れている現実の方にいささか驚いた。昔は「皇太子」という文字を「皇大子」と記事タイトルで誤植しただけで『女性セブン』が1号まるごと全面回収になったり、皇室に関しては社会の側にピリピリ感があった。

 今回、ネットは匿名とはいえ、なりすましアカウントで発信をするという事例が出たというのは、市民の側にタブー意識が薄れている現れと言えそうだ。

 今後、SNSをどう活用していくかについては、宮内庁として市民の反応を見ながら手探りで決めていくのだろう。そもそも昨年4月に宮内庁に広報室が新設された目的の第一がSNS発信と言われるから相当いろいろな検討がなされているはずだ。

宮内庁広報室めぐる民間からの人材獲得

 さて、そのこととも関わっているように思えるが、この4月の宮内庁の広報体制強化をめぐる幾つかの人事が気になった。

 まずひとつは、宮内庁広報室でPR戦略を担う「広報推進専門官」に公益財団法人日本サッカー協会(JFA)の広報担当者を出向させた人事だ。『女性セブン』4月25日号が「宮内庁SNS救世主は学習院のサッカー日本代表イケメン広報」という見出しで報じている。その学習院大卒のスタッフは、記事によると「JFAではプロモーション部に所属し、SNSの運営を担当。サッカー日本代表の広報活動に従事していました」とのことだ。

『女性セブン』4月25日号(筆者撮影)
『女性セブン』4月25日号(筆者撮影)

 見出しにある「イケメン」は余計な情報だが(笑)、この人物を宮内庁に出向させたのは、明らかにSNS対策だろう。どうしてサッカー協会からと疑問に思う人もいるだろうが、これも記事に宮内庁関係者のこういうコメントが紹介されている。

「高円宮妃久子さまはJFAの名誉総裁を務められています。久子さまがJFAの幹部に優秀な人材の出向を打診され、推薦されたのが彼だったようです」

 宮内庁のSNSシフトでスタッフの強化が行われてきたということだろう。

皇嗣職大夫と皇嗣職宮務官の異例人事が話題に

 さてそうした皇室をめぐる人事の中で気になる話題が、『週刊現代』4月27日・5月4日号が特集記事で報じたものだ。

 それによると、今年2月には元警視総監の吉田尚正氏(63歳)が皇嗣職大夫に就任。そして4月1日付で宮内庁総務課報道専門官の工藤茂宣氏が皇嗣職宮務官に就任した。記事によると、工藤氏は宮内庁でも「報道のエキスパート」として知られ、「報道のプロであるうえに、宮内庁の意も汲むことができる人物として期待されている」という。吉田氏が就任した皇嗣職大夫は秋篠宮家の事務・広報全般を統括するポストだ。

 つまり、吉田・工藤体制は、秋篠宮家、特にその広報体制を強化しようという人事といえそうだ。

『週刊現代』4月27日・5月4日号(筆者撮影)
『週刊現代』4月27日・5月4日号(筆者撮影)

 この工藤氏の人事については『女性自身』4月30日号も「『愛子さま旋風は脅威…』“凄腕代弁者”を引き抜いた」と題して報じている。記事では工藤氏は「K氏」とイニシャルになっているのだが、その人事が異例だったことは、記事中で宮内庁関係者のこんなコメントが紹介されている。

「平成以降、生え抜きの宮内庁職員が侍従や東宮侍従に就くことはなく、事実上の東宮侍従にあたる宮務官にKさんが就いたことは、きわめて異例といえます」

『女性自身』4月30日号(筆者撮影)
『女性自身』4月30日号(筆者撮影)

 この人事の背景は明らかだろう。昨年、秋篠宮家をめぐっては、「佳子さま別居」騒動とも言われた秋篠宮家改修をめぐる混乱があった。当時私はヤフーニュースにこう書いた。

《2023年4月に宮内庁が「広報室」を新設したことは鳴り物入りで報じられたが、その成果が見られないどころか、逆に広報のあり方のまずさを印象付けたのが、この騒動だ。情報の伝え方をどうするかという以前の、もっと基本的な部分で今の皇室が抱えている問題を、この騒動は浮き彫りにしたような気がする。》

 詳細は下記記事を参照いただきたい。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e339d4321bb90b5dfcb6c6867c47c16e1cea971d

週刊誌ほぼ全誌が報じた「佳子さま別居」騒動が示したものは何なのか

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/546207482325434ed583b19168e26642bbcfb4ff

5億、11億…想像外の金額が躍る秋篠宮邸週刊誌報道と佳子さまの「決意」

 最終的には秋篠宮さま自身が、自分の決断が遅れたために混乱をきたしたと反省の弁を述べたのだが、宮内庁長官と皇嗣職大夫の見解が食い違うなど、深刻な混乱があらわになったのだった。

広報体制強化と秋篠宮家をめぐる曲折

 もともと宮内庁の広報体制の強化自体が、秋篠宮家の長女の結婚報道をめぐって動きだしたと言われるのだが、この間の広報強化のなかで、秋篠宮家の広報のあり方が議論・検討の対象になったことは想像に難くない。皇室のSNS発信という課題とともに、そのことも密かに検討されてきたのではないだろうか。

 この4月のインスタグラム発信との関係で、ネットで囁かれた話題のひとつは、この秋篠宮家をめぐる問題で、SNSで発信された皇族の誰の話題にフォロワーのどのくらいの反応があるかによって、皇族の人気のバロメーターになるのではという見方もあるらしい。天皇夫妻や愛子さまの話題と、秋篠宮家の話題で、どんな反応の違いがあるかという話だ。

 ネット社会では秋篠宮家に対するバッシングの動きが一貫して続いているのは以前から指摘されてきた。その話も私は何度もヤフーニュースに書いてきたので、例えば下記記事を参照してほしい。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/599a7f504dc7032ecf4f1061cd4cdcbc5745fee2

悠仁さま「無表情」騒動など最近の秋篠宮家は何をやっても「家族不和」と

 そうしたネット社会でのバッシングについても、今回、SNS発信にあたって、宮内庁広報室としては検討したと思われる。前述した秋篠宮家をめぐる吉田・工藤体制という人事は、それへの対応ではないかとみることも可能だ。

『週刊現代』の見出し「紀子さま『包囲網』大作戦」とは

 さて、その秋篠宮家をめぐる人事について書いた『週刊現代』の記事タイトルはこうだ。

「宮内庁と元警視総監が本気で動き出した紀子さま『包囲網』大作戦」

 つまり今回の人事は、これまで秋篠宮家をめぐる決定について前面に出てきた紀子さまに対して「決定プロセスから外した」ものだというのだ。

 これはひとつの見方だろう。なんとなく読者ウケするキャッチーなタイトルをつけようとやや強引に考え出されたもののような印象もなくはないが、いずれにせよ吉田・工藤体制のもとで秋篠宮家の決定や外部への発信がどんなふうに行われることになるのかは、今後の行方をもう少し見なければいけないように思う。

 ちなみにこの記事はウェブの「現代ビジネス」に全文アップされているから、興味ある方は下記をご覧いただきたい。

https://gendai.media/articles/-/128282

このままでは「未来の天皇」の立場が危ぶまれる…宮内庁と元警視総監が本気で動き出した、紀子さま「包囲網」大作戦

 SNS発信や一連の広報強化人事など、この春、皇室をめぐる情報発信のあり方に大きな変化がなされ動き出したことは確かだろう。それが今後どんなふうに進み、どうなっていくのか。しばらく見守っていきたいと思う。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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