高畑裕太さん強姦致傷事件の真相は何なのか。歯ブラシ云々の事実はどうなのか

女優・高畑淳子さんの息子・裕太さんが強姦致傷容疑で8月23日に逮捕され、9月9日に不起訴で釈放された事件は、いまだに騒動が収まっていない。一時はテレビなどで連日報道がなされ大騒動になっていたのが一転して幕引きという結末に、多くの人が釈然としないのは確かだろう。この結末については今でも多くの議論がなされている。高畑さん側が金に物を言わせて示談に持ち込んだという見方をする人も多いようで、不起訴決定後も裕太さんはもちろん、淳子さんに対してもバッシングが続いている。

釈放後、裕太さんの弁護士が異例のコメントを出し、「逮捕時報道にあるような、電話で『部屋に歯ブラシを持ってきて』と呼びつけていきなり引きずり込んだなどという事実はなかったと考えております」「違法性の顕著な悪質な事件ではなかったし、仮に起訴されて裁判になっていれば。無罪主張をしたと思われた事件であります」と主張したのだが、これについてもネットだけでなく、『週刊新潮』『週刊文春』など週刊誌も批判。例えば9月15日発売の『週刊文春』9月22日号は「高畑裕太『冤罪声明』を仕掛けた親バカ女優」という辛辣な見出し。9月11日付東京スポーツも「高畑裕太サイド逆ギレ声明背景 親バカ淳子の思い込み」と報道した。

ただ一方で、幾つか新しい情報も報じられ始めている。例えば「独走スクープ!すべての謎が解けた!」とぶちあげて「示談交渉を仕切った暴力団関係者」という記事を掲げたのは9月16日発売の『フライデー』9月30日・10月7日合併号だ。この事件の第一通報者であり、当初は示談交渉についても仕切ろうとしていた男性が、実は地元で知られた暴力団関係者だったというのだ。

また9月17日発売の『週刊ポスト』9月30日号「高畑裕太 即逮捕・即釈放の謎事件を生んだ群馬県警の責任」も、その“知人男性”の動きに疑問を呈し、それに引っ張られて逮捕に踏み切った群馬県警を批判している。

それも記事中に登場する匿名の捜査関係者が「高畑の供述に関する報道は、県警の発表によるものですが、当初から彼の供述には曖昧な部分もあった。県警は不確定情報を公表して、騒動に火をつけた可能性がある」「もう少し逮捕や発表には慎重になっても良かったのではないか」とコメントするという痛烈なものだ。

そればかりか『フライデー』の記事には、裕太さんの知人という匿名の人物が登場し、「歯ブラシを持ってきて」と電話で呼び出し、部屋に引きずり込んだという、これまでの報道を覆し、部屋へは裕太さんと女性が一緒にエレベーターに乗って向かったのだと証言している。

そもそも裕太さんが女性を歯ブラシの話で呼び出して部屋へ引きずり込んだということと、「女性を見て欲求を抑えられなかった」と容疑を認めているという2点は、8月24日の一般紙を含む各紙朝刊の第一報の骨子だった。ネタ元が警察であることは間違いないが、警察は通常、後で違ったことになると責任を追及されるため、公式の会見では簡単な事実しか発表せず、詳しくは懇談などと称する非公式の場で説明を行う。この事件の第一報もそうして書かれたものだろう。前述した釈放後の弁護士コメントは、その2点について否定したものだ。

ではいったい、真相はどうなのだろうか。もし歯ブラシ云々が事実でないとすると、この事件の印象がだいぶ違うものになってくる。

約1週間前にこのブログで書いた98年の集団レイプ事件については、私は逮捕された6人のうち4人に直接取材し、被害女性にも話を聞いて、ほぼ全容をつかめたのだが、今回そこまで裏をとっていない現状で情報を提示するのは、不起訴という結果を受けて、まさにこの事件をめぐって局面が動いているからだ。9月9日の釈放後、いったい何が真実なのか議論が起きており、この事件がどういう印象で定着するかはこの局面でどれだけ情報が提示されるかにかかっているといえる。

前述した『フライデー』には、裕太さんの知人の証言という、気になるこういう記述もある。「実は捜査段階の供述調書が作成されていて、群馬県警捜査一課の幹部や一部の関係者がそれに目を通しているそうです。その調書には『歯ブラシを持ってきてほしい』といった記述はいっさい書いてなかったというのです」。

これが本当だとすると、8月24日の第一報の報道内容は全く間違っていたことになる。いったいどうなのか。実は、残念ながら、同誌のこの記述はどうも誤りの可能性が高い。最初の段階で歯ブラシ云々は、取調べ内容に含まれていたのは間違いなさそうなのだ。第一報の根拠となった警察の説明は、嘘ではないのだが、正確ではなかったというのが真相のようだ。

8月21日から映画の撮影で前橋のホテルに宿泊していた裕太さんは、23日からの撮影開始を前に、22日夜にスタッフたちと飲みに出かけた。その時にフロントで被害女性に「どこかいい店ないですか」と声をかけたのが二人の最初の接点だったらしい。飲みに行った後、深夜に裕太さんは再び女性に話をし、部屋に来ないかと誘った。その時に、部屋に歯ブラシを持ってきてよ、と言ったらしい。

そして一度、部屋に戻って女性を待ったが、来なかったのですぐに再びフロントに出向き、女性を口説いて、今度は二人でエレベーターに乗って部屋へ戻った。女性は「部屋に行って何をするの」「私は仕事中だから」と断っていたようだが、結局、一緒に部屋へ行った。エレベーター内で裕太さんは女性にキスをしたという供述もあったらしい。

以上のような経過が警察によって報道陣に話された時に、あまり正確でない説明がなされたのだろう。それを受けての第一報は、歯ブラシを持ってきてと部屋に呼びつけたという話になっていた。さらに報道では、電話で呼びつけた女性を部屋に引きずり込み、手足を押さえつけて強姦したとされていたのだが、一部媒体が書いていたように、そのホテルの部屋は隣の物音が筒抜けになるような作りで、両隣にスタッフが宿泊している状況で、深夜2時過ぎに部屋に無理やり引きずり込んで強姦というのは、現場の状況からも無理があると言わざるをえない。

9月15日発売の『女性セブン』9月29日・10月6日合併号もそのことに言及し、「本誌記者もホテルに宿泊したが、壁は決して厚いとはいえず、隣の部屋のテレビの音が聞こえるほどだった」と書いている。そして「隣の部屋に宿泊した撮影スタッフは、『裕太の部屋から争う物音はまったくしなかった』と話している」と指摘している。

ただそこで行われた行為についての認識が、裕太さんと女性とでは違っていたわけだ。女性は戻った直後に第一通報者となった男性に連絡してその話を打ち明けた。これが『フライデー』が記事にした人物だ。その後、ホテルへ駆けつけたその男性によって3時半過ぎに警察に通報がなされ、女性が事情聴取を受けるのだが、その時点では医師の診断書も取られていたという。そして4時過ぎに裕太さんの寝ていたところへ警察が踏み込んだ。

裕太さんは身柄を警察に移され、そこで任意の事情聴取を受けた。そしてその結果、容疑を認めたとして23日の13時40分、強姦致傷の容疑で逮捕された。最初に弁護士が裕太さんに接見したのは23日の昼過ぎだったという。そこでの説明で初めて裕太さんは自分が置かれた状況や、容疑の認否について理解を深めるのだが、前述したような警察発表はもうその時点では決まっていたわけだ。

警察の調書がどんなふうに作られるか知らない人が多いと思うが、調書の内容を作文するのはあくまでも警察官だ。以前は手書き、最近はワープロ打ちだが、警察が事前に下地となる文章を作っておくことも多い。それをもとに被疑者と話をしながら文章を修正し、最後に読み聞かせて押印させるわけだ。

で、最初の調書をとられるまでどんなやりとりがなされたかというと、裕太さんは自分が強姦したという認識はなかったのだが、取調官から「女性が強姦されたと言っているのだから、自分はそんなつもりはなかったと言っても強姦罪は成立するのだ」と言われたらしい。動転していたうえに、相手の女性が被害を受けたと言っていると告げられ、それならばと警察の説明を受け入れたらしい。

強姦致傷は被害者の親告がなくても起訴できるから、この事件は裁判にまで至る可能性が少なくなかったのだが、裁判になった場合、供述調書の信用性と任意性は重大な意味を持つ。ただ裕太さんはそこまで事態が大きくなっていくとは認識しておらず、謝って許してもらおうと考えたらしい。ただ弁護士との接見の後は、供述の法律的意味も理解し、以後、強姦はしていないという主張を一貫して行っているという。その後、24日に裕太さんは送検され、前橋地検の調べを受けた。母親の淳子さんが最初に接見したのは25日。母親の会見が行われたのは26日だ。

淳子さんの会見でも、裕太さんが容疑を認めているかなど事件に関わる事柄については話していないのだが、世間を騒がせたことや大勢の人に迷惑をかけたことなどを謝罪した内容で、第一報が否定されなかったため、マスコミでは強姦の事実は間違いないとして報道が続けられた。それと今回の騒動の特徴は、事件が主に芸能スキャンダルとして扱われたことだ。週刊誌などの報道は主に、淳子さんの私生活、裕太さんの父親は誰かといった話になり、事件の骨子というべき事実関係についての検証はある時期までほとんどなされていない。無罪推定の原則どころか、第一報からこの事件は、甘やかされた二世タレントの犯罪としてバッシングの対象となっていった。

そもそも逮捕直後の警察発表というのは、まだ十分な捜査がなされない段階のもので、その後裕太さんは強姦について否認したようだから、続報によって修正されるべきものだった。それがないまま騒動が独り歩きしたのが今回の事件の大きな特徴だ。

前述した『週刊ポスト』9月30日号の記事は、第一通報者の存在が事件の展開に大きな影を落としていると指摘し、その男性について捜査関係者が「事態を把握してから通報するまでの彼の行動はあまりに迅速だった。通報した時点で詳細まで押さえていて、周到ささえ感じられた」とコメントしている。事件を大きくすると同時に、早い段階から慰謝料を含む示談の話を持ち出したのもこの男性だという。

もちろん性犯罪は許されないし、裕太さんの、自分がテレビに出て公的な存在となっていることへの自覚のなさが事件の大きな要因であることは明らかだ。裕太さんが軽率だったことは間違いないのだが、しかし、そうした彼に対するバッシングも、事実に基づいてなされるべきだという原則は忘れてならない。

警察も検察も、加害者被害者双方に事情を聞き、裏付けをとるなど捜査を進めるうちに、検察としては起訴して公判に持ち込むのは難しいという判断に傾いていったのだろう。ホテルで部屋に入ってから裕太さんと女性の間で何があったかについては、もちろん双方の認識は違っているのだが、双方が供述を行っているから、外形的事実については捜査側はある程度把握したはずだ。

示談に伴って高額の慰謝料が払われたことは言うまでもない。9月14日付東京スポーツは「慰謝料8000万円情報」と一面にぶち上げたが、関係者に確認したら、これは間違い。母子ともに有名な芸能人だから千万単位であることは間違いないのだが、億に近い数字ではないらしい。また前出の『女性セブン』が「高畑裕太『49才といわれる被害女性』あの夜の因縁」という見出しを掲げているが、49歳というのは事実と違う。記事をよく読むと、実際は違うとも書いてあるのだが、それをなぜ見出しに掲げるのか。週刊誌や夕刊紙は見出しだけを見る人が多く、見出しが独り歩きするのがわかりながらなぜそうするのか理解に苦しむ。

この騒動、結果的に失態となった群馬県警もそうだが、マスコミ界にも大きな問題を投げかけたように思える。