佳子さまを脅迫したのがネトウヨだったという事件の意味するもの

秋篠宮家次女「佳子さま」をめぐるフィーバーが異常な様相を呈している。

5月15・16日に行われたICU(国際基督教大学)の新入生の合宿行事「リトリート」に彼女が参加したというので、多くの週刊誌が現地に押しかけ、彼女のタンクトップ姿を隠し撮りして掲載した。しかも、そうやって写真を公開しただけでなく、「素肌と着こなしに異論百出」(『女性セブン』6月4日号)などと彼女の格好を批判的に問題にした。『週刊新潮』6月4日号によると、彼女のタンクトップ姿は秋篠宮家だけでなく皇室全体で問題になっているという。隠し撮り写真を公開しておいて、そこに写った姿をいかがなものかと報道するというのは、何やらマッチポンプに見えなくもない。

その中で気になるのは、『女性セブン』6月11日号が、ネットに佳子さまへの脅迫的な書き込みを行った男性が逮捕された事件と時期が同じであるため、「佳子さまが“皇族として品位ある行動をされていないのが原因なのではないか”といった批判的な声」も宮内庁にあると書いていることだ。脅迫を受けたことまで本人の責任であるかのように書かれるというのは、女性のレイプ事件について、本人の華美な服装にも問題があるとマスコミが報道するセカンドレイプと同じ構造ではないかと思えてしまう。

さて、そのフィーバーの異常さについて書くのが本稿の目的ではない。その問題はひとまず措いて、ここで容疑者が逮捕された佳子さま脅迫事件について気になることを書いておこう。『フライデー』6月12日号が大きく報じているように、逮捕された男性がいわゆるネトウヨと呼ばれる人物だったことだ。

記事によれば、その男性は、昨年の朝日新聞バッシング騒動の時には慰安婦問題で朝日を激しく攻撃し、在特会にもシンパシーを表明していたという。記事中では捜査関係者が「典型的なネトウヨ」と語っている。

ネトウヨという呼称方自体がそもそも曖昧なのだが、そういう人物が皇族を脅迫したというのは、なかなか意味深な事件であることは確かだろう。つまり、既存の「右翼」という概念で捉えると、皇族脅迫など仰天の事態なのだが、そもそもネトウヨを既存の右翼と同じカテゴリーに含めることが大間違いということだ。

本人も供述の中で「反皇室ではなかった」「スレッドを盛り上げるための悪ふざけだった」と動機を語っているという。いくら匿名の悪ふざけでも既存の右翼なら皇族を脅すなどというのは考えられないことだ。

それともうひとつ見ておくべきことは、彼が実際に2ちゃんねるに書き込んだ文言だ。新聞やテレビは当初「逆らえないようにしてやる。ICUには同士の仲間がたくさんいるからな」と報じていたが、実は「佳子を韓国人の手で韓国人の男に逆らえないようにしてやる。ICUには同士の仲間がたくさんいるからな」という文言だったようだ。大手マスコミは韓国云々の部分を政治的配慮で省略したのだろうが、実は逆にそここそが大事なポイントだ。

つまりこの男性は、韓国の人間を装って日本人が反発する「反日的」内容を書き込んでいた。彼はこれまでもそうやっていたらしい。つまり「反日」韓国人を装った言動をネットに書き込み、「スレッドを盛り上げる」行為をしていたというわけだ。そう考えると、ネトウヨとされる人物が皇室を脅したという、一見「え?」と驚いてしまう行為も実にわかりやすいのだ。

その意味では、この事件は、この数年ほど日本をおおいつつある「ネトウヨ」なるものを理解するには非常に役に立つ事例かもしれない。NHKやフジテレビが「反日的」だとデモをかける人が1000人とか3000人とか言われる規模に達したことは確かに新しい現象ではあるのだが、それを「右翼」という文脈で捉えてしまうと日本はとんでもなく右傾化したことになる。でも、現実は決してそう単純ではない。

例えば元朝日記者の植村隆さんを「売国奴」と攻撃して逮捕された人物も、逮捕後の情報は全く出てこないのだが、どういう人物で脅迫の動機は何だったのかは、もっと丁寧に分析する必要がある。この数年間、日本を覆いつつあるネトウヨなるものの実態は、たぶん左翼とか右翼とかいう思想的な分類で推し量れるようなものとは違っているのだと思う。

例えばこの何年か、大きな社会問題になっている「ヘイトスピ―チ」についても、もう少し丁寧な社会学的分析をしないといけないと思う。ヘイトスピーチについてはちょうど法規制をめぐる動きが高まっているが、日本社会の現状をいびつな形で象徴する現象としてぜひもっと議論をすべきだ。