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韓国の兵役法が一部改定。K-POPアイドルやスポーツスターたちが海外で活躍できなくなるのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

韓国のスポーツ選手や芸能人の国外での活動が、今後は厳しく制限されることになるかもしれない。

韓国の兵務庁は6月8日、満25歳以上の兵役義務未修者らを対象にした「国外旅行許可規定」を改定する方針であることを発表。これまでは「1回1年以内で回数制限なし」で国外旅行ができたが、今後は「1回6か月以内で計5回まで」と制限が設けられることになるという。

これによって、さっそく海外渡航にストップがかかったアイドルも出ている。かつてはBEAST、現在はHighlightのグループ名で活動するK-POPボーイズグループのリーダーであるユン・ドゥシュンだ。

ユン・ドゥジュンは6月9日にベトナム・ハノイで予定されていた『K-FOOイベント』と6月24日にタイ・バンコクで予定されていたファンミーティングに参加する予定だったが、所属事務所が6月7日に「兵役法の一部改定によりユン・ドゥジュンの海外出入国が難しくなった」と発表している。本日、兵務庁は「ユン・ドゥジュンの出国不可は兵役法の改定とは関連がない」と否定しているが、なんらかの影響はあったことは間違いないだろう。

(参考記事:突然の不参加には裏がある…? Highlightユン・ドゥジュンの出国不可と兵務庁資料の「矛盾」とは)

韓国のスポーツ新聞『イルガン・スポーツ』も今回の兵役法の改定によって、韓国芸能界に影響が出るとの見解を示している。

「今回の決定によって国内外を行き来して活動するボーイズグループのメンバーたちに対する徹底した兵役管理が要求されている。アイドルだけではなく、韓流スターたちの海外ファンミーティングや海外での撮影ブログラムなどにも支障が出る見通しだ」というのだ。

もっとも、アイドルや韓流スターたちの兵役問題が厳しく制限されることは、ある程度予測できたことでもあった。

2017年5月に発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権は、兵役不正を厳しくチェックする体制作りを進めてきた。韓国社会としても、兵役問題には強い関心を示す傾向があるだけに、芸能人やスポーツ選手など特に影響力がある者たちの兵役については敏感になる。

(参考記事:一体なぜ? 韓流スターの“兵役”が今後さらに厳しく監視されるワケ)

しかも、近年は芸能人やスポーツ選手の兵役トラブルが絶えない。あの手この手を使って不正に兵役を逃れようとする事例もある現実が、今回の改定案に至っているという見方だ。

(参考記事:「えっ、そんな理由で?」兵役を免除された20人の韓国芸能人を一挙紹介!!)

実際、今回の改定では国外旅行の制限だけではなく、「大学院進学、兄弟の同時現役兵服務、民間資格証試験受験、地域と機関の広報大使活動などを理由にした入営時期の延期も禁ずる」とした。

これまでは大学院に籍を置くなどして兵役の時期を遅らせる方法が、スポーツ選手や芸能人たちのひとつの選択肢であったが、それもできなくなる。

アメリカで活躍した男子プロゴルフのペ・サンムンがそうだったように、兵役のために選手生活や海外での芸能生活を一時中断せねばならないケースも増えるかもしれない。

国外旅行が制限されるということはすなわち、海外渡航が制限されることでもある。これまで韓国と日本を何度も行き来していたK-POPアイドルたちの来日回数も必然的に減っていくだろう。

果たして、今回の兵役法の改定は今後、韓国の芸能界やスポーツ界にどのような影響をもたらすことになるだろうか。

K-POPアイドルや韓流スターたちの兵役問題は、日本のファンたちにとっても気になる話題なだけに、その動向には注目が集まりそうだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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