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美人キャスターに「○○な外見だから…」と発言して炎上!! 韓国の大人気ニュース番組の危機

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
写真はイメージ(ペイレスイメージズ/アフロ)

何かと女性嫌悪(ミソジニー)がイシューになっている韓国で、とあるニュース番組が「女性差別では?」と槍玉に挙げられている。

JTBCのニュース番組、『ニュースルーム』だ。

韓国で最も支持されるニュース番組

同番組は韓国で最も厚い支持を受けているニュース番組といえるだろう。

今も連日メディアで報じられている朴槿恵前大統領と崔順実容疑者による政治スキャンダルを広く世に知らしめたことで、その地位は絶対的なものとなっている。

(参考記事:そのスクープ力はまさに“韓国の週刊文春”!! 崔順実ゲートをすっぱ抜いた『JTBC』とは

同社の社長であり、同番組のキャスターでもあるソン・ソッキ氏は、12年連続で「韓国内で最も影響力を持つジャーナリスト1位」に選ばれた人物だ。

そんな韓国の視聴者から支持されている『ニュースルーム』で、女性差別と取られかねない発言が飛び出したと話題になっている。

その騒動は『ニュースルーム』放送直後にSNSで生放送される“ソーシャルライブ”で起きた。ソーシャルライブは取材の裏話などがされることもあり、本番よりも少し気楽な雰囲気のなかでキャスターや記者が話し合う。視聴者は数千人を超えるという。

5月31日のソーシャルライブでは、中韓関係において何かと話題に上がる高高度ミサイル防衛システム「THAAD(サード)」に関する話が出た。

なぜか美人キャスターの“外見”を…

話題の中心にいたのは前出のソン・ソッキ氏と取材を担当した男性記者、そして韓国で“最も美しき女性ニュースキャスター”と呼ばれるアン・ナギョン氏だ。

(参考記事:韓国で最も“美しきニュースキャスター”アン・ナギョン独占インタビュー

話が一通り終わり、ソン・ソッキ氏が男性記者に「アン・ナギョン氏ともっと話し合うこと(質問すること)はありませんか」と聞くと、彼はこう答えた。

「(アン・ナギョン氏は)サードとはあまり関係なさそうな外見だから…」

なんの脈絡もなく、外見の話を出した記者に対してソン氏が「それはなんの話ですか」と厳しい口調で注意すると、男性記者は「いや、私が今日ハン・ミング国防長官を見たのですが、顔にサードが重なって見える感じを受けて…」などと、しどろもどろに答えるのが精一杯だった。

美人アナの多いJTBCだけに「残念」

このやりとりはすぐにネット上で炎上した。「こいつは何の話をしているんだ?」「聞くことがないからといって、女性の外見に話を向けるなんて」「サードに関係のある顔ってどんな顔だ」「JTBCはもっと反省するべき」などと非難の声が相次いだ。

最近は硬派で公正な報道内容だけでなく、美人女子アナも多いという点でも注目を集めていたJTBCだけに視聴者らの反応は大きかった。

(参考記事:存在自体がスクープだ!! 美しすぎる韓国女子アナウンサー“JTBC三人娘”

韓国メディアも取り上げている。

『メディア・オヌル』は「女性アナウンサーとはサードの話をできない?」という記事を掲載し、「このような発言は女性キャスターが男性キャスターよりも専門性が低く、深い討論をする対象ではないと考えていることが前提にある」と強く批判している。

また『オーマイニュース』も「JTBCソーシャルライブで出た性差別的発言、報道局内の不平等を振り返るきっかけになれば」としながら、「(このような議論が起きたところが)JTBCという事実がさらに残念」と報じた。『国民日報』は「JTBC『ニュースルーム』性差別発言」と見出しを打った。

男性50代&女性20代の組み合わせだらけ

ちなみに、韓国の地上波をはじめとするほとんどのニュース番組では、「50代以上の男性キャスターと20~30代の女性キャスター」という組み合わせが“公式化”している。

韓国両性平等教育振興院の2015年の調査によると、地上派、総合編成チャンネルなどのニュース番組でキャスターを務める男性18人中、40~50代が14人に上ったのに対して、女性は18人中40代が1人で、それ以外はすべて20~30代だったという。

たしかに40歳を超える女性ニュースキャスターで名前が広く浸透しているのは、ネット民から文在寅大統領をディスったと攻撃された“美しすぎるニュースキャスターの元祖”キム・ジュハくらいしかいないかもしれない。

いずれにしても、女性嫌悪が社会的イシューになっている韓国で、ニュース番組においても女性を卑下するような発言が出たことは決して褒められることではないだろう。

多くの韓国視聴者が支持するJTBCの看板番組だけに、気を引き締めてほしいと願うばかりだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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