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多子世帯の所得状況とは?-児童手当第3子以降は3万円に倍増?-

島澤諭関東学院大学経済学部教授
図はイメージです(写真:アフロ)

報道によれば(「児童手当、第3子以降は3万円に倍増案 政府、加算を拡充方針」毎日新聞 2023/5/18 20:07(最終更新 5/19 11:09))、政府は、現在月1.5万円(中学生は月1万円)支給されている第3子以降(3歳~小学生まで)の児童手当について、3万円に倍増する方針とのことです。

また、厚生労働省「国民生活基礎調査(令和3年)」によれば、生活が苦しい(大変苦しい、やや苦しいの合計)と答えた家計の割合は、平均では53.1%なのに対して、子どものいる家庭では59.2%、子どものいない家庭では51.8%と、子どものいる家庭で高くなっており、しかも、子ども一人58.6%、子ども2人57.9%、子ども3人以上では65.0%、多子世帯で最も高くなっています。

では、多子世帯の所得状況はどうなっているのでしょうか?

図1 1世帯当たり平均所得金額(万円)(出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」により筆者作成
図1 1世帯当たり平均所得金額(万円)(出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」により筆者作成

まず、児童のいる世帯で平均所得額が高くなっていることが分かります。

図2 世帯人員一人当たり平均可処分所得金額(万円)(出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」により筆者作成
図2 世帯人員一人当たり平均可処分所得金額(万円)(出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」により筆者作成

ただし、子どもも含めた世帯人員当たりの可処分所得で見ると、児童のいない世帯の方が41万円強高くなっています。それだけ高い生活水準が送れる感じですね。

さらに、児童のいる世帯に絞って、所得額を見ると、

図3 児童のいる世帯、1世帯当たり平均所得金額(万円)(出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」により筆者作成
図3 児童のいる世帯、1世帯当たり平均所得金額(万円)(出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」により筆者作成

子ども1人よりも2以上いる世帯の方が所得が高いことが分かります。あるい意味、子どもが贅沢品と呼ばれるわけです。

図4 世帯人員一人当たり平均可処分所得金額(万円)(出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」により筆者作成
図4 世帯人員一人当たり平均可処分所得金額(万円)(出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」により筆者作成

しかし、子どもも含めた世帯人員当たりの可処分所得では、子ども1人が190万円弱である一方、多子世帯では121万円と70万円弱、可処分所得が低くなっています。

確かに、子どもが多い方が生活が苦しいことが分かります。

今回の措置により、月1.5万円×12か月=18万円手取りが増えると、確かに多子世帯では助かるでしょう。

しかし、こうした児童手当を捻出するため、社会保険料の値上げが想定されているようなので、結婚・出産予備軍、子育て中世帯でも2子までの世帯、子育て終了世帯には単なる増税でしかありませんし、多子世帯でも額面通りに受け取れるわけではないことにも留意が必要です。

関東学院大学経済学部教授

富山県魚津市生まれ。東京大学経済学部卒業後、経済企画庁(現内閣府)、秋田大学准教授等を経て現在に至る。日本の経済・財政、世代間格差、シルバー・デモクラシー、人口動態に関する分析が専門。新聞・テレビ・雑誌・ネットなど各種メディアへの取材協力多数。Pokémon WCS2010 Akita Champion。著書に『教養としての財政問題』(ウェッジ)、『若者は、日本を脱出するしかないのか?』(ビジネス教育出版社)、『年金「最終警告」』(講談社現代新書)、『シルバー民主主義の政治経済学』(日本経済新聞出版社)、『孫は祖父より1億円損をする』(朝日新聞出版社)。記事の内容等は全て個人の見解です。

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