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自作キャラが「クレーンゲームの景品」に ゲーセンの風変りな取り組みとは

鴫原盛之ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表
「クリエイターズクレーン」のコーナー(※GENDA GiGO提供)

GENDA GiGO Entertainment(旧社名:GENDA SEGA Entertainment)が経営するゲームセンター「GiGO」では「クリエイターズクレーン」と題し、プライズ(景品)ゲームコーナーで一風変わったオリジナル景品を展開している。

「クリエイターズクレーン」とは、同社とピクシブが手を組むことで実現したプロジェクトで、イラストレーターや漫画家がデザインしたイラストを同社が借り受け、グッズ制作サービス「pixivFACTORY」で製造したグッズを、プライズゲーム用の景品として運営するものだ。

本プロジェクトは昨年6月からスタートし、全国各地の19店舗でオリジナル景品を投入している。景品の種類は缶バッジやキーホルダー、トートバッグなどがある。

「クリエイターズクレーン」オリジナルの缶バッジ景品(※「GiGO立川」にて筆者撮影。以下同)
「クリエイターズクレーン」オリジナルの缶バッジ景品(※「GiGO立川」にて筆者撮影。以下同)

景品の制作は「pixivFACTORY」を活用、人選は独自の調査で決定

GENDA GiGO Entertainmentの広報に、本プロジェクトを始めた動機を伺うと以下のようなコメントをいただいた。

「昨今はYouTubeをはじめ、さまざまなメディアがプロもアマチュアも入り混じって作品が発表できるようになり、誰でも何かの『クリエイター』になれる環境がった時代になってきていると感じ、ゲームセンターにもその盛り上がりを取り入れた企画ができないかと思ったのがきっかけです。

 オンライン(SNS上)では、誰でも簡単に作品を発信できるメリットがありますが、簡単すぎるがゆえに作品が埋もれてしまうデメリットがあります。そこで、オフラインの弊社ゲームセンターというフィールドで、クリエイターの新たな活躍の場を創出できないかと考えました」

また、景品の製造に「pixivFACTORY」を利用することにした理由は、参加クリエイターへの認知度の高さが決め手だったそうだ。

「本企画の拡散や、クリエイターに対しての認知度向上には課題を数多く感じまして、企画を実現するにあたり、クリエイターから強い支持を得ているプラットフォームを持つ、ピクシブ株式会社様とお話をさせていただき、オンラインとオフラインをつなげた取り組みを協業するに至りました」(同社広報)

こちらはトートバック。投入する景品は、不定期でときどき入れ換えている
こちらはトートバック。投入する景品は、不定期でときどき入れ換えている

前述したように、本プロジェクトにはイラストレーターや漫画家のほか、配信者なども参加している。参加者は、同社の本部および店舗スタッフも加わって探したうえで、直接声を掛ける方法で集めている。同社広報によると、本プロジェクトに参加するクリエイターは、一度に2~3人ずつ増やし、直近の1か月では新たに4人がデビューしたという。

景品が投入されたプライズゲームの利用客は、主に20~30代の女性だ。本プロジェクトの開始当初は1店舗だけで実施していたが、今では認知度が向上したためなのか、中には定番商品よりも高いインカム(売上)を上げるものもあるそうだ。

とはいえ、人気キャラのメガ商品と比べると利益は「まだまだ得られていません」(同社広報)とのこと。それでも「ここからビッグになっていくクリエイターが出ることで、GiGO店舗への来店動機、および他店との差別化になればと考えております」と意気軒昂だ。

「クリエイターズクレーン」対象機の背面には、作者のプロフィールやイラストが描かれたポスターを掲示し、作者の宣伝にもひと役買っている
「クリエイターズクレーン」対象機の背面には、作者のプロフィールやイラストが描かれたポスターを掲示し、作者の宣伝にもひと役買っている

「クリエイターズクレーン」出身のスターの出現に期待

在庫リスクを負わず、イラストを1枚用意するだけで簡単にグッズが作れる「pixivFACTORY」を利用し、なおかつ自身のキャラクター景品を全国各地のゲームセンターに展開できる本プロジェクトは、作り手側にとっても非常に大きなメリットだろう。

今後も同社では「GiGOグループ全店舗で展開できるところまで成長させていきたいですね。また、景品の種類についても缶バッジやアクリルキーホルダーだけでなく、ぬいぐるみなどにも幅を広げていきたいと考えております。

 お客様(クリエイター)がすぐにデビューできるかもしれないという売り場ができ、そこから実際にデビューして売れるきっかけとなり、有名になるクリエイターが輩出されたら最高です」と、本プロジェクトに注力していく方針だ。

なお、本プロジェクトの景品は上記の店舗に加え、オンラインクレーンゲーム「GiGO ONLINE CRANE」にも出品されている。また、現在同社では「つくってプライズ あなたのキャラがゲームセンターでデビュー!」と題し、新たな景品用イラストの募集を12月31日(土)まで実施しており、人材の発掘にも引き続き取り込んでいる。

「正直、時間はかかると思いますが、GENDAグループとして新しいIP、クリエイターを発掘し、GiGOの看板企画としてブランド価値を創造する目的として試行錯誤の毎日で展開しております。クリエイター皆さんが、GiGOのゲームセンターを通してビッグになっていくところをぜひ見たいですね!」(同社広報)

「クリエイターズクレーン」を機にブレイクし、やがてゲーム以外の分野でも活躍する大物クリエイターが、1人でも多く誕生することを大いに期待したい。

(参考リンク)

「クリエイターズクレーン」

プレスリリース:「あなたのキャラがゲーセンデビュー! GiGO のお店×pixivFACTORY『つくってプライズ』のお知らせ」(※PDF形式)

「GiGO ONLINE CRANE」のサイトより。「景品一覧」のページで「クリエイターズクレーン」と入力して検索すると、多くの対象アイテムがヒットする
「GiGO ONLINE CRANE」のサイトより。「景品一覧」のページで「クリエイターズクレーン」と入力して検索すると、多くの対象アイテムがヒットする

ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表

1993年に「月刊ゲーメスト」の攻略ライターとしてデビュー。その後、ゲームセンター店長やメーカー営業などの職を経て、2004年からゲームメディアを中心に活動するフリーライターとなり、文化庁のメディア芸術連携促進事業 連携共同事業などにも参加し、ゲーム産業史のオーラル・ヒストリーの収集・記録も手掛ける。主な著書は「ファミダス ファミコン裏技編」「ゲーム職人第1集」(共にマイクロマガジン社)、「ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生」(Pヴァイン)、共著では「デジタルゲームの教科書」(SBクリエイティブ)「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)などがある。

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