Yahoo!ニュース

Nintendo Switch Online「スペシャル」版で、ファミコンソフトの名場面を見よう!

鴫原盛之ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表
タイトル右上に赤い「SP」のマークがあるのが「スペシャルバージョン」(筆者撮影)

Nintendo Switchで懐かしのファミリーコンピュータ用ソフトが遊べる配信サービス、「ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online」では、一部のタイトルにおいて最初から特別な状態、あるいは特定のシーンからプレイできる「スペシャルバージョン」が存在する。

例えば、アクションアドベンチャーゲーム「ゼルダの伝説」の「スペシャルバージョン」は、最初からルピ―(お金)を上限まで持ち、なおかつ強力な剣などを装備し、ライフ(体力)が通常より多い状態でスタートするという、その名も「お金持ちバージョン」だ。

また、「マリオオープンゴルフ」の「フルオープンバージョン」は、ストロークプレイ時に最初から全コースが選択できる(※本来は、規定打数以下でホールアウトするごとに新たなコースが解禁される)のがうれしい。

ほかの「スペシャルバージョン」も同様に、最初から主人公がパワーアップしていたり、あるいは終盤のクライマックスのシーンからゲームがスタートするなどの特徴があり、初心者にもより遊びやすくなるよう配慮したサービスであると言えるだろう。

「ゼルダの伝説」の「お金持ちバージョン」。所持金が255ルピーの状態でゲームがスタートする(筆者撮影)
「ゼルダの伝説」の「お金持ちバージョン」。所持金が255ルピーの状態でゲームがスタートする(筆者撮影)

「スペシャルバージョン」最大の魅力は、エンディング到達のチャンス拡大にあり

筆者が特にありがたいと思ったのが、先月から配信されたアクションゲーム、「マイティボンジャック」の「高ゲーム偏差値バージョン」だ。

本作はマップが広大で、なおかつ敵や障害物をかわす高度なテクニックが要求され、難解な謎解きの要素も盛り込まれているので、非常に難易度が高い。だが「スペシャルバージョン」では、最終ステージの最終エリアからスタートし、しかもクリアに成功すると、成績に応じて分岐する4種類のエンディングのなかでも、ベストのものが見られる状態に設定されている。まさに至れり尽くせりだ。

とはいえ、最後の1エリアをクリアするだけでも、実は非常に難しい。しかし、以前に拙稿、「『どこでもセーブ』できるのに『巻き戻し』 Nintendo Switchの新機能を試してみた」でもご紹介した、「どこでもセーブ」や「巻き戻し」機能を使いつつ遊んだ結果、筆者は無事にクリアすることができた。これらの便利機能のおかげではあるが、かつては断念したベストのエンディングを、生まれて初めて見ることができた喜びは格別だった。

同様に、アクションアドベンチャーゲームの「メトロイド」においても、主人公が最強装備の状態でスタートし、なおかつ時間を掛けずにスムーズにクリアできればベストのエンディングが見られる、「サムス・アラン最終形態」が配信されている。また、アクションゲーム「光神話パルテナの鏡」でも、主人公が最強装備の状態で最終ステージから始まる、「三種の神器バージョン」が用意されている。

当時は難しくて挫折した、あるいは遊ぶ機会がなかった人にとっては、この上なくありがたいサービスだ。

「マイティボンジャック」の「高ゲーム偏差値バージョン」より。最後の難関、17面の最終エリアからいきなり始まる(筆者撮影)
「マイティボンジャック」の「高ゲーム偏差値バージョン」より。最後の難関、17面の最終エリアからいきなり始まる(筆者撮影)
「どこでもセーブ」や「巻き戻し」機能の助けを借りつつクリア成功。初めてベストのエンディングが見られて本当に感激した(筆者撮影)
「どこでもセーブ」や「巻き戻し」機能の助けを借りつつクリア成功。初めてベストのエンディングが見られて本当に感激した(筆者撮影)

誰もがエンディングを目指せるよう、さらなるサービスの改善を!

何かと便利な「スペシャルバージョン」だが、なかには首を傾げたくなる内容の作品も散見される。

例えば、シューティングゲーム「ツインビー」の「ドンブリ島おかわりバージョン」は、全5ステージをクリアした直後、すなわち2周目のステージ1(6面)から始まるようになっている。だが、自機の装備は一切パワーアップしておらず、自機のストックが12機(※通常は3機)に増えている以外に正直メリットがない。

同じく、シューティングゲームの「グラディウス」は5面から、「スターソルジャー」は8面から、それぞれ自機が最強装備の状態で始まる、「ステージ5最強バージョン」と「ステージ8必勝バージョン」が用意されている。だが、前者は1周7ステージ、後者は全16ステージであり、なぜ中途半端な所から始まるようにしたのか、その意味が正直よくわからない。どちらも前述した「光神話パルテナの鏡」のように、最終ステージから始まるようにしたほうがよかったように思う。

また、アクションゲーム「魔界村」の「大魔王まであと少しバージョン」は、ステージ6からスタートする。しかし、真のエンディングを見るためには2周クリアすることが必要(※本作は1周7ステージ)なので、その道のりはまだまだ長い。

ならば、同じステージ6でも2周目から始まるようにしたほうがよかった感がある。あるいは、元のファミコン版に存在した、ラウンドセレクトが可能となる、「隠しコマンド」の入力に成功した状態で遊べるようにする手もあったのではないだろうか(※実はSwitch版でも、ゲームオーバー後にコマンドを入力すればラウンドセレクトができるのだが……)。

「魔界村」の「スペシャルバージョン」は1周目の6面から始まるが、「真の」大魔王まであと少しとなる2周目の6面スタートのほうがよかった感がある(筆者撮影)
「魔界村」の「スペシャルバージョン」は1周目の6面から始まるが、「真の」大魔王まであと少しとなる2周目の6面スタートのほうがよかった感がある(筆者撮影)
実は隠しコマンドを入力すると、元のファミコン版と同様にラウンドセレクトが可能。これを使うと、いきなり最終面から遊べる(※通常版でも入力可能)(筆者撮影)
実は隠しコマンドを入力すると、元のファミコン版と同様にラウンドセレクトが可能。これを使うと、いきなり最終面から遊べる(※通常版でも入力可能)(筆者撮影)

さらに細かいことを言えば、アクションゲーム「忍者龍剣伝」の「クライマックスバージョン」では、途中でミスをするとスタート地点よりもずっと以前の場所に戻されてしまうのも、やや不親切に思える(※これは前述の「マイティボンジャック」でも同様だ)。

ファミコン版のプレイ経験があり、このようなルールであることをあらかじめ知っているプレイヤーであっても、スタート地点を大幅に戻されるとモチベーションはまず間違いなく下がるし、最初からやり直すためにその都度リセットするのも少々面倒だ。また、初めて遊んだプレイヤーの場合は、ミスをした後に「なぜ、最初とは違う場所から再開するの?」と、その意味すらもわからずに面食らってしまう可能性も否定できないだろう。よって、これらのタイトルでは、何度ミスをしても毎回同じ地点から再開するよう配慮してほしかった。

今となってはオリジナル版の入手、あるいは動作環境をそろえることが難しい、古いゲームを手軽に遊べる素晴らしい環境をせっかく実現しているのだから、今後はサービス内容にももっとこだわりを持って作っていただきたい。20年も30年も前に発売された作品であれば、メーカー側も今さらネタバレを防ぐ必要はないだろうし、とりわけ「スペシャルバージョン」においては、1人でも多くのプレイヤーに感動のエンディングが見られるチャンスを与えられるよう、さらなる改善を切にお願いしたい。

(C)Nintendo (C)Konami Digital Entertainment (C)ARC SYSTEM WORKS (C)CAPCOM CO., LTD. 1986, 2018 ALL RIGHTS RESERVED. (C)1990 コーエーテクモゲームス All rights reserved. (C)1988 コーエーテクモゲームス All rights reserved. (C)1987 コーエーテクモゲームス All rights reserved. (C)1986 コーエーテクモゲームス All rights reserved. (C)HAL Laboratory, Inc. (C)1993 HAL Laboratory, Inc. / Nintendo (C)SUNSOFT (C)CITY CONNECTION CO., LTD. (C)Culture Brain EXCEL

ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表

1993年に「月刊ゲーメスト」の攻略ライターとしてデビュー。その後、ゲームセンター店長やメーカー営業などの職を経て、2004年からゲームメディアを中心に活動するフリーライターとなり、文化庁のメディア芸術連携促進事業 連携共同事業などにも参加し、ゲーム産業史のオーラル・ヒストリーの収集・記録も手掛ける。主な著書は「ファミダス ファミコン裏技編」「ゲーム職人第1集」(共にマイクロマガジン社)、「ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生」(Pヴァイン)、共著では「デジタルゲームの教科書」(SBクリエイティブ)「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)などがある。

鴫原盛之の最近の記事