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子どもが性被害に遭わないために 親が知るべき知識、伝えるべきポイント

重見大介産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士 / 医学博士
(写真:アフロ)

子どもたちの成長と共に、身体や心の変化が進む中で、外の世界やインターネットとの接触が増える現代。そのような環境下で子どもたちを守り、健やかに育てるためには、適切な知識と理解が求められます。

この記事では、産婦人科医として、そして性教育に携わる専門家として、子どもの年齢別に「どのような性教育が必要か」「それをどのように伝えるべきか」についての知識と伝え方のポイントをお伝えします。

保護者や教員の皆さんが、子どもたちの健全な成長をサポートする上での一助となれば幸いです。

なお、包括的性教育の基本的な概念や解説は、私が以前に書いた以下の記事をご参照ください。

性に関する知識やスキルだけではない「包括的性教育」とは? 今の日本に必要な理由

①未就学児(目安:5歳以下)

この年齢の子どもでは、身体の基本的な認識と、安全を確保するための最も基本的なルールを知ってもらうことが中心です。

身体のパーツの正式な名前を教える

はじめは「おちんちん」や「おまた」といった表現で身体のパーツを教えてもいいですが、できるだけ「ペニス」や「腟」といった正確な名称を用いることで、子どもが自分の身体を適切に認識していく助けになります。

正式な名称を使うことで、今後の性教育の際にもより正確に情報を伝えていきやすくなるでしょう。

「秘密」についての教育

この年齢の子どもたちは「秘密」を好むことが多いですが、それが問題を引き起こす可能性もあります。子どもには、「いい秘密」と「悪い秘密」の違いを教え、親や信頼する大人とのコミュニケーションの大切さを強調しましょう。

知らない大人に何かを言われ、それを「秘密」として親に伝えてもらえないことで、男女ともに性被害に発展してしまうケースは珍しくありません。

身体に触られることの感じ方(プライベートパーツの認識)

子どもが自分の身体の感覚や境界を理解することはとても重要です。例えば、相手が誰であろうと、無理やり身体を触られることや、不快に思う触れられ方は許されないことを強調して教えましょう。

プライベートパーツとは、他人が勝手に触ったり見ようとしたり見せたりしてはいけない部分のことです。具体的には、口、胸、性器、お尻です。非常に脆弱な部分でもあるので、「そこは自分だけが特別に触っていい大切なところ」と伝えてあげましょう。保護者も、子どもの成長に伴って気をつけねばなりません。

また、他人の身体も同様に尊重すべきであることを伝えることが必要です。小さい子どもはスカートめくりなど無邪気にしてしまうことがありますが、これも「いけないこと」として伝えていかねばなりません。

②小学生(目安:6〜12歳)

好奇心が旺盛で、学校や友達との関わりが増え、外の世界やインターネットとの接触が増える時期です。

プライバシーの尊重

自分自身の身体や他人の身体のプライバシーを尊重することの重要性を伝える必要があります。具体的なシチュエーションを用いて、他人のプライバシーを侵害する行為・言動や、自分のプライバシーが侵害される可能性のある行為・言動について話し合うことで、理解を深めることができるでしょう。

オンラインやSNSの危険性

インターネットの利用が増えることで、オンライン上のリスクも増加します。具体的な事例やニュースを取り入れながら、身元が不明確な人とのコミュニケーションの危険性や、個人情報を軽々しく共有することのリスクを伝えましょう。

最近では

  • SNS等で知らない人と仲良くなり裸の写真を送ってしまって脅される
  • 「裸の動画を見せ合おう」と誘われて詐欺に使われる
  • オンラインに掲載された/送られた画像や動画を削除できない(デジタルタトゥー)

といったことを危険な事例として伝えておくべきでしょう。

「いいえ」(NO)と言う勇気

この年齢では、グループの中で異なる意見や感情を持つことが難しいこともあります。しかし、自分の感じたことや考えを正直に伝えることの大切さ、そして不快な状況や要求に対して「いいえ」と言う勇気を持つ重要性を強調する必要があります。

そして、これはプライベートパーツを同意なく触られたときや、知らない大人に声をかけられて何かに誘われそうになった際に身を守るためにも大切です。「NO!」に加えて「GO!」(逃げる)、「TELL!」(されたことを信頼できる人に伝える)も重要です。

③中学生(目安:12〜15歳)

思春期を迎えるこの時期、子どもたちは性に関する興味や、異性との関係性についての興味を持つことが増えてきます。

狭義の性教育

身体の変化(第二次性徴)や性行為、性感染症についての基本的な知識を伝えることが不可欠です(誰でも、保護者の知らないところでこの年齢で性行為を経験することはあり得ます)。

また、正確な情報源や資料を用いて、信頼できる情報を提供することで、誤解やデマ情報を取り除く助けとなります。最近では親子向けの性教育の絵本や書籍も増えているので、まずそれを読んでみてもらうのも良いでしょう。

オンラインやSNSの危険性

SNSの利用やオンラインゲームなど、インターネットを介したコミュニケーションの場が増える中、オンラインでの出会いやコミュニケーションのリスクをより具体的な事例をもとに説明することが大切です。

また、自身のプライベートな情報の公開や、信頼できるアプリ・サイトの選定方法なども伝えるべきポイントです。インターネットやスマホと断絶した生活を送ることはほぼ不可能な時代ですので、「使うことを前提とした教育」が必要です。

コンセント(同意)の大切さ

この年齢層では、異性との関係や友人関係が複雑になることがあります。そこで、相手の意志や感じたことを尊重することの重要性、そして互いの「コンセント(同意)」を得ることの大切さを知ってもらいましょう。

これは日々の生活でも、性行為でも共通となる重要な考え方です。

④高校生(目安:15〜18歳)

高校生になると、成人に近づく中で、さまざまな経験や選択の場面が増える可能性があります。

避妊と性感染症

高校生になると、性行為を経験する人もより増えることから、性行為に伴うリスクや避妊の方法についての知識が必要となります。

適切な避妊方法の選択(コンドームや低用量ピルの使用方法、緊急避妊薬など)や、性感染症のリスクと予防、初期症状などを具体的に伝えることが大切です。

健全な人間関係

恋愛や友情など、多岐にわたる人間関係を築いていく中で、互いを尊重し、自分自身も尊重される関係の築き方や維持する方法についての知識やスキルが求められます。

また、トラブル時の対処法や相談先なども紹介することで、より健全な人間関係の構築をサポートすることができるでしょう。目に見えにくい「オンライン上でのコミュニケーショントラブル」についても、何かあればすぐに相談してもらえるような「親子(保護者-子ども)関係」の構築も重要となります。

オンラインにおけるプライバシー

高校生になると、SNSをはじめとしたオンラインツールを使用する人がかなり増え、当たり前になってきます。そのため、プライバシー設定や不適切な情報の共有リスク、さらには詐欺サイトやフィッシング詐欺などのセキュリティリスクに対する対策や知識の提供が不可欠です。

最近では、高校生をターゲットとした美容医療広告や、課金を促すゲームの広告がさまざまな場面で散見されるため、こうした金銭面などの被害も含めた対策が求められます。

親子で一緒に学んでいきましょう

本記事では、未就学児から高校生までの子どもたちの成長に伴う性教育の必要性や取り組み方についてお伝えしました。子どもたちが健やかに成長し、安全に日々を過ごすためには、保護者や教員の皆さんの理解とサポートが不可欠です。

包括的性教育は、単に生物学的な生殖に関する情報を伝えるだけではなく、人としての相互の尊重やコミュニケーションの重要性も含まれています。私は一専門家として、子どもたちの未来が明るく、安全であることを心から願っています。

本記事の情報と皆さんの行動が、子どもたちの未来を形作る大きな力となることを願っています。

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なお、性教育で最初にぶつかる「自分はどこから生まれてきたの?」という子どもからの質問への考え方や回答例については、以下のニュースレター記事で解説しています。よければご参照ください。

性教育シリーズ① 〜自分はどこから生まれてきたの?〜

産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士 / 医学博士

「産婦人科 x 公衆衛生」をテーマに、女性の身体的・精神的・社会的な健康を支援し、課題を解決する活動を主軸にしている。現在は診療と並行して、遠隔健康医療相談事業(株式会社Kids Public「産婦人科オンライン」代表)、臨床疫学研究(ヘルスケア関連のビッグデータを扱うなど)に従事している。また、企業向けの子宮頸がんに関する講演会や、学生向けの女性の健康に関する講演会を通じて、「包括的性教育」の適切な普及を目指した活動も積極的に行っている。※記事は個人としての発信であり、いかなる組織の意見も代表するものではありません。

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