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サマソニ、フジロック、そして海外の最新フェス事情を読み解く

柴那典音楽ジャーナリスト
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夏の野外音楽フェスのラインナップが続々と発表されている。国内外のフェスのヘッドライナーから海外音楽シーンの現況を読み解きたい。

■サマーソニックは新世代バンド2組がヘッドライナー

(提供:クリエイティブマンプロダクション)
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8月17日(土)、18日(日)に東京と大阪で開催される「SUMMER SONIC 2024(サマーソニック2024)」は、マネスキンとブリング・ミー・ザ・ホライズンという新世代バンド2組がヘッドライナーに決定した。

イタリア出身のマネスキンは一躍ブレイクを果たした2022年の初来日から2年でのヘッドライナーへの抜擢となる。ブリング・ミ―・ザ・ホライズンはイギリス出身のメタル/ハードコアバンドで、昨年秋にはYOASOBIやBABYMETALなどを迎えた主宰フェス「NEX_FEST」を成功させるなど着実に支持を広げてきた。

両者の出演が象徴するのは、20年代に入って一気に進んだロックシーンの世代交代だ。特にマネスキンはグラマラスなルックスと骨太なパフォーマンスだけでなく、グッチが衣装を提供し広告キャンペーンにも出演するなどファッション・アイコンとしても注目を集める。LGBTQや気候変動といった社会的なイシューについても積極的に意見を発信し、旧来型のロックスターのイメージを刷新する存在感が人気の由来だ。

他にもリル・ヨッティ、ピンクパンサレス、オーロラ、グレタ・ヴァン・フリートなど気鋭のアーティストが並ぶ。

■フジロックはシザが初来日でヘッドライナー

(提供:スマッシュ)
(提供:スマッシュ)

7月26日(金)、27日(土)、28日(日)に新潟・苗場スキー場で開催される「FUJI ROCK FESTIVAL’24(フジロック・フェスティバル’24)では、SZA(シザ)、クラフトワーク、ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズがヘッドライナーに決定した。

テクノ・ミュージックのレジェンドであるクラフトワーク、UKロックの大物ノエル・ギャラガーと大御所が並ぶが、注目すべきはフェス初出演の今回が初来日となるシザだろう。

シザはアメリカ出身の女性シンガーソングライターで、R&Bを軸に様々なジャンルを融合したソングライティングと可憐な歌声が魅力だ。

最新アルバム『SOS』が全米チャート10週1位を記録と大きな成功をおさめ、6月の「グラストンベリー」や8月の「ロラパルーザ」など英米の大規模野外フェスでもヘッドライナーに決まっている。今のグローバルなポップ・ミュージック・シーンを代表するようになったアーティストの勢いと存在感を見せてくれるはずだ。

他にもペギー・グーやフローティング・ポインツといったダンス・ミュージック・シーンの重要アーティスト、ザ・ラスト・ディナー・パーティーやフリコといった新鋭ロックバンドなど注目のアーティストが集う。

■海外でのフェスシーンの苦境、アジアでの活況

海外に目を向けると、4月12日から21日まで2週にわたって開催されYouTubeでも無料配信されるアメリカ最大級の野外フェス「コーチェラ・ヴァレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティヴァル」がフェスシーズンの先陣として最も注目を集める。ヘッドライナーはドージャ・キャット、タイラー・ザ・クリエイター、ラナ・デル・レイの3組だ。日本からはYOASOBI、新しい学校のリーダーズの出演が決まっている。

ただ、今年のフェスシーンには厳しい風が吹いているという見方もある。フジロックの前週に行われる予定だったオーストラリア最大級の音楽フェス「スプレンダー・イン・ザ・グラス」は今年の開催を中止することを発表。アメリカでもテネシー州の「リバーベンド」やデラウェア州の「ファイアフライ」などいくつかのフェスが中止や開催見送りを発表している。理由としては、物価上昇によるコスト増、大物アーティストが単独公演を優先して行うことによるブッキングの苦戦などが挙げられる。フェスの淘汰が進んでいるとも言える。

一方で、アジア各国ではフェスが活況を呈している。今年1月にはインド・ムンバイで「ロラパルーザ・インディア」が開催され、ヘッドライナーにはスティングらが出演。2日で5万人を動員した。

今夏にはサマーソニックが初の海外進出を果たし、8月24、25日にはタイ・バンコクにて「サマーソニック・バンコク」が開催される。先日発表された第1弾アーティストでは、YOASOBIやLAUVなどの出演が決定。BODYSLAMのステージにはスペシャルゲストとしてBABYMETALとF. HEROが参加する。

(提供:クリエイティブマンプロダクション)
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K-POPやラテン・ミュージックのグローバルな人気もあり、かつては英米中心だった音楽シーンの様相は、今ではアジアや中南米の存在感が大きくなってきている。フェス動向の変化もそうした状況を反映しているのではないだろうか。

音楽ジャーナリスト

1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。京都大学総合人間学部を卒業、ロッキング・オン社を経て独立。音楽を中心にカルチャーやビジネス分野のインタビューや執筆を手がけ、テレビやラジオへのレギュラー出演など幅広く活動する。著書に『平成のヒット曲』(新潮新書)、『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『ボカロソングガイド名曲100選』(星海社新書)、『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。

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