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最強馬イクイノックスのラストラン後の逸話を相棒クリストフ・ルメールが語る

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者
引退式でのイクイノックスとクリストフ・ルメール騎手

ほぼ完璧な成績でターフを去る

 先週12月16日の土曜日、中山競馬場でイクイノックスの引退式が行われた。全レース終了後の、寒空の下、大勢のファンが残り、北海道へ旅立つ歴史的名馬の最後の姿を見送った。
 「淋しくなりますね」
 そう語ったのはクリストフ・ルメール。
 ご存じ、イクイノックスのパートナーだ。

クリストフ・ルメール騎手
クリストフ・ルメール騎手

 「1回目の秋の天皇賞(GⅠ、2022年)は、パンサラッサがはるか前方で逃げているのを直線に向いてから知ったので、少しビックリしました。でも、エンジンがかかってからはモノ凄い伸びで差し切ってくれました」
 春には皐月賞(GⅠ)と日本ダービー(GⅠ)でいずれも2着に惜敗していたが、3歳の夏を過ぎて本格化。いよいよ無敵の道を歩み始めた。
 3歳で有馬記念も制すると、23年の年明け初戦となったドバイシーマクラシック(GⅠ)ではスタートから積極的にハナに立つ。そして、最後まで他馬に先頭を譲る事なく、2着のウエストオーバーに3馬身半の差をつけて楽勝してみせた。
 「メンバーを見て、ペースが遅くなると思ったので、他の馬に左右されるよりも主導権を握った方が良いと思い、先手を取りました。早目に抑えたから2着との差が詰まったけど、最後まで追っていたらもっと開いていたでしょう。負かした相手がその後、大きなレースで好走しているので、イクイノックスは本当に強い馬です」
 ルメールがそう語るように、2、3着のウエストオーバーとザグレイはその後、サンクルー大賞典(GⅠ)で1、2着。とくに前者は更に後、凱旋門賞(GⅠ)でエースインパクトの2着に好走した。また、4着のモスターダフはプリンスオブウェールズS(GⅠ)を4馬身差で勝つと、続く英インターナショナルS(GⅠ)も連勝してみせた。
 世界の舞台でその強さを見せつけたイクイノックスの勢いは、その後も止まらなかった。宝塚記念(GⅠ)、天皇賞・秋(GⅠ)、ジャパンC(GⅠ)を全て勝利。GⅠ6連勝で、通算成績10戦8勝2着2回というほぼ完璧な成績を残し、ターフを去った。

ドバイシーマクラシック(GⅠ)を楽勝した際のイクイノックスとルメール
ドバイシーマクラシック(GⅠ)を楽勝した際のイクイノックスとルメール


ラストランの後のエピソード

 全10戦で手綱を取ったルメールに、改めて最も印象に残った世界最強馬との思い出を聞くと、一つのエピソードを教えてくれた。
 「ラストランのジャパンCを勝った後、お祝いのメッセージが世界中から寄せられました。フランスは勿論ですが、アメリカやオーストラリア、ペルーやインドからもメッセージが届きました」
 具体的に誰からどんなお祝いの言葉が届いたのかを伺うと、後に、スクリーンショットで撮られた多くのホースマンからのそれが、LINEで送られて来た。そこには香港やドイツ、チリのジョッキー達から届いたモノもあった。
 「おめでとう、クリストフ、あなたたちのレースを見るのを私は大好きです」
 「印象的なレースを見せてくれてありがとう!」
 「素晴らしい。尊敬するよ」
 「私が今まで見た中でもベストホースだと思う」
 こういったメッセージの送り主の中には、北米のトップジョッキーであるイラッド・オルティスや伝説の元名騎手スティーヴ・コーゼンらの名もあった。イクイノックスの衝撃が、世界中に轟いていた事を、改めて感じさせたものである。

ジャパンCを快勝したイクイノックス
ジャパンCを快勝したイクイノックス


今年の有馬記念への意気込み

 さて、今週末、中山競馬場では有馬記念が行われる。昨年はイクイノックスが制したグランプリの舞台で、今年、ルメールはスターズオンアース(牝4歳、美浦・高柳瑞樹厩舎)とタッグを組む。20日の朝、美浦トレセンを訪れ、同馬に跨ったルメールは次のように言った。
 「6ハロンくらいの追い切りだったけど、凄く良い動きをしてくれて、コンディションは良さそうです。どの位置でも競馬は出来るタイプなので、ストロングポイントである良い脚を長く使えるような競馬が出来るように乗りたいです」
 ここでひと呼吸置くと、再び口を開いて、〆た。
 「イクイノックスがいないので、充分にチャンスがあると考えています!!」

 12月24日、有馬記念に注目しよう!!

20日の美浦トレセンでスターズオンアースに跨ったルメール
20日の美浦トレセンでスターズオンアースに跨ったルメール

(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)

ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

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