馬券の参考に! 日本馬が挑戦する香港国際3競走を、海外競馬スペシャリストが占う
クイーンエリザベスⅡ世Cを占う
現地時間4月28日、香港・沙田競馬場で行われるのが香港チャンピオンズデー。当日はクイーンエリザベスⅡ世盃(GⅠ、芝2000メートル、以下QEⅡ)、チャンピオンズマイル(GⅠ、芝1600メートル)、チェアマンズスプリント(GⅠ、芝1200メートル)の3つのカテゴリーのGⅠが行われ、各レースに日本馬が出走を予定している。
手前味噌ではあるが、JRAが海外馬券を発売し出してから計96レースで45レースを的中(勝率.469)している平松さとしが有力馬の現状をお伝えしよう。
QEⅡには昨年の2着馬プログノーシス(牡6歳、栗東・中内田充正厩舎)。帰国後は札幌記念(GⅡ)と金鯱賞(GⅡ)連覇を記録。天皇賞・秋(GⅠ)でも3着に善戦し、今回が3度目の香港。現地で調教をつける清山康成調教助手は言う。
「昨年の時点で完成されてきたと感じたのですが、ここに来て更に良くなっています。栗東で仕上げて、こちらでは確認という感じですが、良いフットワークで走ってくれています」
枠順抽せん会で自らが引いた5番枠に関しては次のように続けた。
「スタートがうまくないので、あまり内は良くないと考えていました。この枠なら文句ありません」
プログノーシス同様、香港で好走例のあるのがヒシイグアス(牡8歳、美浦・堀宣行厩舎)。21年の香港C(GⅠ)が2着。昨年の同競走も3着し、衰えは見られない。
ノースブリッジ(牡6歳、美浦・奥村武厩舎)はカタールのアミールT(GⅢ)が掛かりながらも4着。引き続き手綱を取る岩田康誠騎手は次のように言う。
「今度は2000メートルなので、折り合ってくれると思います」
現地25日の木曜日に最終追い切りに跨り「良い状態」と笑みを交えて語った。
香港の2000メートル戦は、同じ右回りの中山の中距離戦で実績のある馬が好走する傾向があり、AJCC(GⅡ)勝ちのあるこの馬もデータ的には妙味充分。
ドバイオナーは英国からの遠征馬。昨年も3着に好走。休み明けの前走は地元のオールウェザーで勝利。上積み+3度目の香港で侮れない。世界各国でこの馬の調教に乗る女性ライダーのイザベラ・ポールさんは次のように語る。
「オーストラリアを経由した昨年と比べ今年の方がフレッシュです。好勝負をしてくれると信じているわ」
地元馬の中からはまずマッシヴソヴリン。香港ダービーで見せた驚異的な追い込みがこのメンバー相手にどこまで通用するのか、楽しみだ。
そして、それらを迎え撃つのがロマンチックウォリアー。当レース連覇、香港C(GⅠ)連覇や豪GⅠコックスプレート勝ち等、実績はダントツ。この後は安田記念(GⅠ)に挑戦するため来日するプランがあるが、その前にここでどんなパフォーマンスを披露してくれるのか。日本勢にとっても越えなければならない強靭な壁となるだろう。
チャンピオンズマイルを占う
チャンピオンズマイル(GⅠ)を予定しているのがエルトンバローズ(牡4歳、栗東・杉山晴紀厩舎)。昨年の毎日王冠(GⅡ)ではソングラインやシュネルマイスターといったGⅠ馬を撃破。前走の中山記念(GⅡ)は案外(7着)だったが、休み明けで過去最高体重の522キロ。叩かれ絞れている事が条件になりそうだ。レースでタッグを組み、現地24日の最終追い切りにも跨った西村淳也騎手は言う。
「追い切りは機嫌よく走ってくれました。すこぶる調子は良さそうです」
オオバンブルマイ(牡4歳、栗東・吉村圭司厩舎)は豪州ドンカスターマイル(GⅠ)を叩いての転戦。その前走は着順こそ13着だったが直線で前が壁になりながらも4馬身弱しか負けていない。昨年豪州で勝っているように輸送も気にしないタイプ。吉村圭司調教師は言う。
「この臨戦過程は早くから決めていたので問題ありません。25日の最終追い切りは予定より速い時計になったけど、それだけフレッシュという事でしょう」
シャンパンカラー(牡4歳、美浦・田中剛厩舎)は最終追い切りに騎乗した浜野谷憲尚調教助手が「5ハロンくらいを調整程度で、息遣いは良い」との事。近走は不振が続いているが、巻き返しを期待したい。
地元勢はゴールデンシックスティ。当レース3連覇、香港マイル(GⅠ)2勝、3シーズン連続で香港の年度代表馬という実績はピカイチ。現役ラストランへ向け、25日には芝コースを併せ馬で最終追い切り。
「雨で重い馬場だったけど、外から反応良く伸びてくれました」
見守ったK・W・ルイ調教師は笑みを交えてそう言った。ビューティージョイの切れ味や地元に戻るヴォイッジバブルの巻き返し、またマッシヴソヴリンにこそかなわなかったものの、香港ダービーで素晴らしい末脚を繰り出したギャラクシーパッチも面白そう。つまりはゴールデンシックスティ以外の地元勢も侮れないところだ。
一方、イギリスから遠征してきたブレーヴエンペラーは、前走でカタールのローカルGⅡ勝ち。このレース、私は現地で観戦していたが、2、3着がカイロとリアルワールド。その前後に香港マイル(GⅠ)やドバイターフ(GⅠ)を走っている連中で、そのパフォーマンスを考えると、この馬も少々厳しく思える。
チェアマンズスプリントを占う
チェアマンズスプリントには高松宮記念(GⅠ)の覇者マッドクール(牡5歳、栗東・池添学厩舎)がエントリー。昨年の香港スプリント(GⅠ)8着の雪辱を期す。
サンライズロナウド(牡5歳、栗東・安田翔伍厩舎)は国内でもGⅠ勝ちがないので、どこまでか……。安田景一朗調教助手は神妙な面持ちで言う。
「この馬は競馬へ行ってみないと分からないタイプです。良い方に出てくれれば良いのですが……」
ラッキースワイネスがリタイアしたが、このカテゴリーは地元勢の層が厚い。安定感抜群のインビンシブルセージはスプリントC(GⅡ)でラッキースワイネスの半馬身差2着。同レース3着のフライングエースや、同2番人気で4着だったハウディープイズユアラヴ、高松宮記念(GⅠ)で3着だったビクターザウィナーも展開一つ。
そして、22年にはゴールデンシックスティを破って香港マイル(GⅠ)を制したカリフォルニアスパングルが、ドバイに遠征した前走でアルクォーツスプリント(GⅠ)を優勝し、スプリント戦線に路線を変えて来た。元々スピード能力の高い馬だっただけに、こちらも日本馬にとっては厄介な存在になりそうだ。
今年は3レース全てで香港勢が強そうだが、日の丸部隊が香港のファンをアッといわせてくれる事を期待したい。
(写真は全て筆者・平松さとし撮影)
※なお、平松さとしの予想は「グリーンチャンネル」「東京スポーツ」「スポーツニッポン」等で公開予定です