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短距離王国・香港からの刺客・ラッキーバブルズに本命を打てない理由とは……

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者
香港から遠征してきたラッキーバブルズは現在、こういう写真を撮れない。何故か?!

短距離戦における香港のレベルの高さは過去の歴史が物語る

 今週末はこの秋のG1シリーズ第一弾、スプリンターズSが行われる。

 1200メートルの短距離王を決めるこの1戦に、短距離王国・香港から1頭、果敢に挑戦してきた馬がいる。

 ラッキーバブルズだ。

香港から乗り込んできたラッキーバブルズ
香港から乗り込んできたラッキーバブルズ

 香港競馬は短距離路線の層の厚い事で有名。過去に日本がかの地のこのカテゴリーに乗り込んで成功した例としてはロードカナロアが2012、2013年と2年連続で香港スプリントを制した事があるが、これは例外中の例外。ロードカナロア以外の日本でスプリントG1を制した馬の全ては香港の短距離戦で敗れている。それもほとんどが惨敗に近い成績で二桁着順に沈んだ馬も少なくない。繰り返すが、日本では高松宮記念やスプリンターズSといったG1を勝っている馬が、歯も立たずに帰国を余儀なくされているのだ。

2013年、香港スプリント連覇達成時のロードカナロア。日本馬で香港の短距離G1を勝ったのはこの馬だけ。本来、香港のスプリンターに日本馬は歯が立たない
2013年、香港スプリント連覇達成時のロードカナロア。日本馬で香港の短距離G1を勝ったのはこの馬だけ。本来、香港のスプリンターに日本馬は歯が立たない

 逆に香港から日本に乗り込んだ馬が勝つ例はこれもまた少なくない。

 05年のサイレントウィットネスは単勝2・0倍の1番人気に応え完勝しているし、15年のエアロヴェロシティは高松宮記念を優勝。

 また、10年のウルトラファンタジーは単勝29・3倍の10番人気という低評価をあざ笑うように逃げ切り勝ちを演じてみせた。

 となれば、ラッキーバブルズも軽視は出来ない……と予想する向きもあるようだが、当方の個人的な見解としては本命を打てない理由がある。

 そもそも話はウルトラファンタジーに戻るが、この馬は人気こそなかったが、狙えない馬だったわけではない。手前味噌になるが、当時、私がスポーツニッポン紙に寄せた予想記事は次の通りだった。

『中山・スプリンターズS。セントウルSで推奨したグリーンバーディーは負けて強しの競馬だった。あの競馬だけをみていると、今回1番人気を争うのも分からなくはない。しかし、あの競馬ぶりはある意味、危惧していた通りの負け方とも言える内容だった。同馬はテンの行き脚がないため、香港でも同様の負け方を再三、繰り返しているのだ。人気になる今回、前走の競馬ぶりだけで飛び付くのは危険。多頭数、小回りの中山では同じ負け方をする可能性が十分にあるとみた。

 そこで、テンのスピードなら上のウルトラファンタジー本命。仕上がり具合はグリーンバーディーの方が確かかもしれないが、対戦成績では何度も先着しており、能力差以上にオッズに開きがありそうなら狙ってみるのも手。器用さに優るこちらが上にきても何ら不思議ではない。単勝』

ラッキーバブルズに本命を打てない理由とは

 さて、そこでラッキーバブルズに本命を打てない理由を記していこう。

 まず、同馬の実績だが、17年にはG1のチェアマンズスプリントを優勝、16年にも同レースや香港スプリントで2着している。先述したようにレベルの高い香港スプリント界のG1で好走を繰り返してきたのだ。当時、手綱をとったB・プレブル騎手も「ラッキーナインと比べてもそん色ない能力を持っている」と、自分が乗って国内外でG1を制した名馬とも互角だと語っていた。

B・プレブル騎手で国内外のG1を制したラッキーナイン。写真は13年シンガポールのクリスフライヤーインターナショナルスプリント(G1)を勝った時のモノ
B・プレブル騎手で国内外のG1を制したラッキーナイン。写真は13年シンガポールのクリスフライヤーインターナショナルスプリント(G1)を勝った時のモノ

 しかし、近走はその競馬ぶりに気になる点がある。

 それは17年1月に出走したG2を最後に、1年半、9戦にわたり、内を突く競馬を繰り返しているという点だ。

 その間、プレブルだけでなく、H・ボウマンやZ・パートンも騎乗しているのだが、手が替わっても判で押したようにインを突く競馬を繰り返している。かろうじて前走のゴール前は外から来たが、コーナーではやはり最内を回っていた。

 これは勝手な想像だが、16年の香港スプリントと先述した17年1月のレースをいずれも早目に外へ出したものの惜敗に終わった事で、陣営は「外を回して勝てるほどの力はない」と判断したのではないだろうか。

 ちなみにタイトル画の写真は16年の香港スプリント。外を回って2着に惜敗した時のモノで、今ではこのようなアングルの同馬を撮影する事は難しくなっている。

こちらの写真は昨年の香港スプリント(4着)。右から2頭目、騎手の頭だけがみえているのがラッキーバブルズ。近走はこのように内を突く競馬ばかりだ
こちらの写真は昨年の香港スプリント(4着)。右から2頭目、騎手の頭だけがみえているのがラッキーバブルズ。近走はこのように内を突く競馬ばかりだ

 この後、インを突く競馬に徹したところ、うまく前が開いた17年のG1・チェアマンズスプリントを優勝、同じく上手に捌けたG2・プレミアボウルでも2着出来たというのが本当のところではないかと思うのだ。

 さて、香港と違い頭数の多い日本の競馬で、果たして同じ競馬をして全てのライバル達を捌けるだろうか……。香港スプリンターのレベルの高さでこれを克服する可能性がないとは言えないし、競馬だから何が起こるか分からなく、どんな結果になっても不思議ではない。しかし、この馬の近走のレースぶりを見る限り、少々厳しいと思わざるをえないのが正直な気持ちである。

 さて、当たるか否か。まずは土曜日の中山のメインレース、ドーヴァーの単勝あたりで運試しをしてみようかと思っている。

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(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)

ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

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