韓国G1の2競走をいずれも日本馬が優勝。当日の現場の様子とは……

見事にコリアカップ連覇を果たしたロンドンタウン。鞍上は岩田康誠騎手

厳しい競馬となったコリアスプリントを制したのはモーニン

 9月9日、韓国ソウル競馬場で行われた2つの韓国G1競走をいずれも日本馬が制した。

 今回は現地のその模様をリポートしよう。

 日本と時差のない韓国で、午後3時45分にスタートが切られたのが韓国スプリント(韓国G1、ダート1200メートル)だ。

 ここに日本から挑戦したのはモーニン(牡6歳、栗東・石坂正厩舎)。現在はオーストラリアで騎乗している藤井勘一郎が駆けつけ、レース3日前の木曜には調教に跨った。

 「さすが日本のG1ホースという感触を得たので、競馬は自信を持って乗ろうと思いました」

 ただ、初めてとなる1200メートルという距離に「多少心配」と口を開いたのが指揮官である石坂正調教師だ。

 「出来るだけついていって欲しいけど、この距離だと少し(後方に)置かれてしまう可能性もありますね……」

 果たしてその不安が的中する。

 「現地に入った後のゲート練習は1回だけですが、入念に行いました」と同馬を担当する持ち乗り調教助手の浜名浩輔が言うように、スタート自体は五分に出た。しかし、スプリント戦の速い流れに戸惑うように、そこから後方へ下がってしまう。更に外からもう1頭、香港のファイトヒーローが馬体を被せて来る。手綱をとった藤井はこの時の模様を次のように語った。

 「砂を被ると少し嫌がる素振りを見せたので、前には入られたくありませんでした。だから正直、キツい競馬になりました」

 外のプレッシャーに耐えながら3~4コーナーをカーブする。前との差は徐々に詰まったものの、苦しい競馬には違いない。しかし……。

 「ラスト200メートルで伸びて来た時には『ひょっとしたら(勝ち負けになる)』と思いました」と石坂。

 実際、前を捉える勢いで一完歩ごとにその差を詰めた。こうなると、最後は終始外に被せて来たファイトヒーローとの地力比べだ。2頭は馬体を併せ、ほぼ同時にゴールに飛び込んだが、僅かにモーニンが速く駆け抜け、1番人気に応える勝利を手にした。

ゴール前の大接戦を制し見事に優勝したモーニン(右)
ゴール前の大接戦を制し見事に優勝したモーニン(右)

 「ヒヤリとしたけど最後は底力で勝ってくれました」

 そう言った石坂は更に続けた。

 「外から来られるとダメなタイプだし、前半で後方になった時は正直、“あかん”と思いました。でも、よくそこから我慢してくれました。藤井君とは彼がまだオーストラリアにいる時から電話で入念に打ち合わせをしました。上手に乗ってくれたと思います」

 そう言われた藤井も安堵の表情で次のように語った。

 「韓国のスプリント戦が速い流れなのは知っていたけど、序盤はさすがに厳しくなってしまったと思いました。外からのプレッシャーもキツくて、最後まで全く息を抜くところがありませんでした。今日はモーニンがよく頑張ってくれました」

モーニンの口取り風景。右から2人目が石坂調教師で同4人目が藤井騎手
モーニンの口取り風景。右から2人目が石坂調教師で同4人目が藤井騎手

レベルの違いを見せつけロンドンタウンが連覇達成!!

 モーニンの歓喜から1時間10分後の午後4時55分、スタートを切ったのがコリアカップ(韓国G1、ダート1800メートル)だ。

 ここに出走したのは前年の覇者でもあるロンドンタウン(牡5歳、栗東・牧田和弥厩舎)。

 「昨年は展開とか関係なくポテンシャルの違いで勝ってしまった感じでした」

 そう語ったのは昨年に続き騎乗する岩田康誠。続けて言った。

 「相手関係とか情報が全くないので分からないけど、今年も同じようになってくれると良いのですが……」

 異口同音に語ったのが調教師の牧田だ。

 「馬の状態は悪くなさそうなので、昨年みたいな競馬をして欲しいです」

連覇へ向け、馬場入場後、返し馬にうつるロンドンタウンと岩田騎手
連覇へ向け、馬場入場後、返し馬にうつるロンドンタウンと岩田騎手

 レースは2人の思惑通りとなった。

 2着クリソライトに4馬身差をつけて圧勝した前年のパフォーマンスからも、単勝1・7倍の圧倒的1番人気に推された同馬は、1頭取り消したため14頭立ての13番枠からのスタート。ゲートボーイを付けて好発を決めると、岩田は積極的に押して出て、最初のコーナーはすでに2番手で通過した。

 「パドックでオッズをみたら1点何倍とかってなっていたから『え?!』と思った」

 そう語る同騎手だが、その手綱捌きにはそんな心中が全く現れない。

 前半800メートルにも差し掛からない時点で「これ以上我慢する必要はない」とばかりにハナに立つ。後続を待つことなく3コーナーから徐々にその差を広げると直線入口ではすでにセーフティーリード。

 「直線を向いて大型ヴィジョンを見たら後ろに誰もいないからビックリしました」

 1頭になったせいか、大型ヴィジョンにモノ見をしたせいか、ロンドンタウンがフラフラしたため、矯正する意味を込めて鞭を入れたが、手応え的には終始楽なまま。結局2着馬に15馬身もの差をつけ、1分50秒6というレコードで見事にコリアカップ連覇を果たしてみせた。

ロンドンタウンの口取り風景。勝負服を着ているのが岩田騎手。その右が牧田調教師
ロンドンタウンの口取り風景。勝負服を着ているのが岩田騎手。その右が牧田調教師

 「大丈夫だろうとは思っていたけど、ホッとしました」

 牧田はそう言って胸を撫で下ろした。

 「ダートは去年より深くなっていると感じたけど、レコード勝ちですからね。本当に強かったです」

 岩田はそう言い、笑みを見せた。

 今年も日本馬のレベルの高さをまざまざと見せつける形となったが、競馬場はそれなりに盛り上がっていた。レース前には地元のファンから「岩田!ファイティン!!」との声が上がり、表彰式でも歓声が送られた。こうして韓国の国際レースデーは幕を閉じた。

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(文中敬称略、写真提供=平松さとし)