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いよいよカウントダウン。今年はサトノダイヤモンドが挑む凱旋門賞を占う!

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者
欧州最大のレース凱旋門賞はフランスの象徴であるエトワール凱旋門から名付けられた。

サトノダイヤモンドは前哨戦で思わぬ完敗

 今年も凱旋門賞が目前に迫った。

 凱旋門賞は例年、フランス、パリ郊外にあるロンシャン競馬場で行なわれる。しかし、同競馬場がスタンド改装工事をしているため、昨年に続き今年もシャンティイ競馬場に舞台を移して行なわれる。

 距離は例年通り2400メートルと変わらないが、負担重量が今年から3歳馬だけ0・5キロ増量。これにより3歳牝馬55キロ、同牡馬56・5キロ、4歳以上牝馬58キロ、同牡馬59・5キロとなった。

今年の凱旋門賞メディアガイドの表紙。
今年の凱旋門賞メディアガイドの表紙。

 昨今は日本馬にとっても秋の路線の一つに組み込まれている感があり、今年もサトノダイヤモンド(牡4歳、栗東・池江泰寿厩舎)とサトノノブレス(牡7歳、同厩舎)の2頭が出走する。

 日本の2頭は共に前哨戦であるフォワ賞に出走。昨年の有馬記念馬であり、菊花賞も勝っているサトノダイヤモンドはとくに期待されたが結果は6頭立ての4着。サトノノブレスもシンガリ6着と敗れた。敗因の一つに道悪があげられたが、凱旋門賞が直前に迫った現在も大幅な馬場の回復がみられないことや、相手はさらに強化される点などから厳しい戦いが強いられても仕方のない立場となっている。

9月27日に最終追い切りを行なったサトノダイヤモンド(手前)とサトノノブレス。
9月27日に最終追い切りを行なったサトノダイヤモンド(手前)とサトノノブレス。

最有力視されているのはイギリスの3歳牝馬エネイブル

 一方、最有力視されているのはイギリスから遠征してくるエネイブルだ。

 同馬は6月2日にイギリスでオークスを勝ったのを皮切りに現在G1を4連勝中。それもいずれも圧勝に次ぐ圧勝で、古馬牡馬相手のキングジョージ6世&クイーンエリザベスSも2着に0秒8の差をつけて優勝している。

 良馬場でも大丈夫だが、道悪はさらに良い。すでに名牝といえるかもしれない彼女の、あえて死角を探せばシャンティイが初めてになることや、少頭数でしか走った経験がないことだが、そこは鞍上がカバーしてくれそうか。

同馬の手綱をとるのはご存知フランキー・デットーリ。世界中でG1を勝ちまくっている彼は、凱旋門賞も過去に4勝。5勝目となれば往年の名手イヴ・サンマルタンやオリビエ・ペリエを抜く最多勝の新記録となる。

初の凱旋門賞5勝目を目指すデットーリ。写真は15年、ゴールデンホーンでの勝利時。
初の凱旋門賞5勝目を目指すデットーリ。写真は15年、ゴールデンホーンでの勝利時。

昨年1~3着独占のエイダン・オブライエン勢の戦略はいかに?!

 昨年のこのレースでは1~3着を独占したオブライエン調教師が今年も複頭数、それも昨年に輪をかけた5頭をも送り込んでくる。

 昨年3着だったオーダーオブセントジョージ。今年はアイルランドセントレジャーで2着に9馬身もの差をつけて圧勝。勢いに乗ってここに臨む。

 カプリはアイリッシュダービーでクラックスマンの猛追をしのいで優勝すると、続くイギリスのセントレジャーも早目先頭から粘り込む競馬。残念ながら15番枠とかなり外の枠になってしまった点で割り引かざるをえなくなったが、近二走の連勝は着差以上に強い内容だっただけに一発があるかと思われた。

 そしてそれらを抑えて名手ライアン・ムーアが騎乗するのがウィンター。道悪は苦にしないし、G1を4勝している実績は素晴らしい。1980メートルのナッソーSは強い勝ち方をしているが、1600メートル路線を中心に使ってきていただけに2400メートルがどうか……。常識的に考えると苦しい気がするが、昨年勝利している調教師と騎手のコンビだけに不気味さは漂う。

昨年は1~3着独占のオブライエン厩舎。写真は勝ったファウンドとR・ムーア騎手。
昨年は1~3着独占のオブライエン厩舎。写真は勝ったファウンドとR・ムーア騎手。

ヨーロッパの頂上決戦らしく、そのほかも層の厚いメンバー構成

 先述した有力馬だけでも良いメンバーだが、他のメンバーも揃っている。

 まずは前走でイギリスのインターナショナルSを勝利しているユリシーズ。前々走のキングジョージ6世&クイーンエリザベスSでエネイブルに千切られたため、軽視されそうだが、そのレースも着差ほどの力差は感じなかった。道悪で道中、かなりキックバックを浴びる形になったにも関わらず、直線半ばではエネイブルのすぐ直後まで接近していた。最後は斤量差がこたえたか、突き放されたが、その斤量差も当時の6から今回は4・5に縮まる。人気の盲点になる分、鞍上も気楽に且つ思い切って乗れるだろうし、そうなれば一発逆転があっても不思議ではないかもしれない。

 前哨戦のフォワ賞を勝ったチンギスシークレットも怖い。先述したように引き続き馬場状態は悪そう。同馬はドイツで連勝してきた時も時計のかかる馬場を楽勝。それもいずれも2着馬はG1ホースだったのだから、前走でサトノダイヤモンドを千切ったのもフロックではない。全く同じ舞台のここで、前走同様の体調を維持していれば再度、好レースができそうだ。

フォワ賞を制したチンギスシークレットと鞍上のデフリース騎手。
フォワ賞を制したチンギスシークレットと鞍上のデフリース騎手。

 そのフォワ賞で2着だったクロスオブスターズや今年のフランスのダービー馬ブラムトは内枠をうまく利用すれば面白い。もっとも前者はシルバーウェイヴあたりに苦戦したことがあるし、後者も大きく出遅れた前走ほどではないにしても、決してスタートが速い馬ではなく、枠の利だけで勝ち負けに持ち込むのは難しいと私はみている。

 ザルカヴァとの母子制覇がかかるザラックは残念ながら大外18番。休み明けの馬には厳しいレースでもあり、正直、勝つのは難しいだろう。

 運命のスタートは10月1日、現地時間16時5分(日本時間23時5分)。いずれにしても好勝負が演じられることを願いたい。

(文中敬称略、撮影=平松さとし)

昨年のゴール板。今年は雨予報となっており、後ろにみえるような晴天は、望めないか。
昨年のゴール板。今年は雨予報となっており、後ろにみえるような晴天は、望めないか。
ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

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