南カリフォルニア大学ショア財団、ハマス攻撃の被害者の証言「記憶のデジタル化」で反ユダヤ主義に対抗
ホロコースト生存者の「記憶のデジタル化」を積極的に推進してきたショア財団
2023年10月7日に武装集団ハマスがイスラエルに攻撃をしてから、多くの国で親パレスチナ派の人々が反ユダヤ主義的な発言や行動やデモをしている。現在でも欧米やアラブ諸国では反ユダヤ主義が根強い。
そんななか、南カリフォルニア大学のショア財団では、2023年10月7日に武装集団ハマスに攻撃されたり、暴力を受けたり、襲撃されて隠れていたり、被害にあったイスラエルの人たちの証言を動画で撮影して公開する「Countering Antisemitism Through Testimony(証言を通じて反ユダヤ主義に対抗する)」というプロジェクトを立ち上げた。
映画「シンドラーのリスト」の映画監督スティーブン・スピルバーグが寄付して1994年に創設された南カリフォルニア大学(USC)のショア財団ではホロコースト時代の生存者の証言のデジタル化やメディア化などの取組みを行っている。第二次大戦時にナチスドイツが600万人以上のユダヤ人を大量に虐殺したホロコーストだが、そのホロコーストを生き延びることができた生存者たちも高齢化が進んでいき、その数も年々減少している。彼らの多くが現在でも博物館などで若い学生らにホロコースト時代の思い出や経験を語っているが、だんだん体力も記憶も衰えてきている。
証言化された「記憶のデジタル化」で反ユダヤ主義に対抗
現在、ショア財団だけでなく、世界中の多くのホロコースト博物館、大学、ユダヤ機関がホロコースト生存者らの証言をデジタル化して後世に伝えようとしている。ホロコーストの当時の記憶と経験を自ら証言できる生存者らがいなくなると、「ホロコーストはなかった」という"ホロコースト否定論"と反ユダヤ主義が世界中に蔓延することによって「ホロコーストはなかった」という虚構がいつの間にか事実になってしまいかねない。いわゆる歴史修正主義だ。そのようなことをホロコースト博物館やユダヤ機関は懸念して、ホロコースト生存者が元気なうちに1つでも多くの経験や記憶を語ってもらいデジタル化している。そのようなホロコースト生存者の記憶のデジタル化を通して、後世の人たちにホロコーストを伝えて、反ユダヤ主義と対抗している。
南カリフォルニア大学ショア財団ではホログラムでの生存者とのインタラクティブな対話の技術開発にも積極的で、同大学ではこの取組を「Dimensions in Testimony」プロジェクトと呼んでいる。これはあたかも、目の前にホロコーストの生存者がいるようで、質問に対してリアルタイムに答えられる。ホロコーストの生存者らが高齢化しても、亡くなってからでも、ホログラムで登場して未来の世代にホロコーストを語り継いでいくことができるものだ。いわゆるホロコーストの「記憶のデジタル化」を行っている。ショア財団ではホロコーストの生存者の証言だけでなく、少数民族などの虐殺を生き延びることができた人たちの証言を撮影してデジタル化して後世に伝えている。このようなデジタル化されたホロコースト生存者らの記憶の証言は歴史学の研究においても、当時の様子を知ることができる貴重なツールでありとても重要である。
そして、2023年10月の武装集団ハマスによるイスラエル襲撃の直後に、ハマスの暴力を目の当たりにした人たちの証言を撮影して動画を公開している。ホロコーストの生存者は現在では高齢になっており、証言は80年前のもので記憶が曖昧なものも多い。だが、2023年10月に襲撃されたばかりの被害者の記憶はとても鮮明である。イスラエルとハマスの紛争は現在進行形であり、犠牲者や被害者の証言はこれからも多く集まるだろう。そのような証言が「記憶のデジタル化」として後世に伝えられていく。
ホロコースト生存者が語ってくれたインタビュー映像や、2023年10月の武装集団ハマスの被害者らのインタビュー映像はショア財団のYouTubeで世界中に配信されている。
▼2023年10月の武装集団ハマスについて語る証言