Yahoo!ニュース

ロシア軍、無人の「ストレッチャー・ロボット」で負傷した兵士を輸送:最前線への物資輸送にも活用

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

上空のドローンに発見されやすい、対人地雷に接触したら爆破するリスクも

2024年4月にロシア軍がウクライナの最前線で負傷したロシア兵を運ぶために無人の「ストレッチャー・ロボット」を使用しているシーンを英国のメディア・テレグラフが報じていた。

「ストレッチャー・ロボット」は負傷した兵士を横にして数キロ先まで運ぶことができる。リモートコントロールで遠隔地から操作して動く。そのため負傷した兵士を他の兵士が介護しながら、目的地まで連れていく必要はない。従来は負傷した兵士の介護と搬送に7~8人程度の兵士が必要だった。だが、「ストレッチャー・ロボット」であれば2~3人で負傷した兵士を「ストレッチャー・ロボット」に乗せて、リモートコントロールで遠隔操作をするだけで済むようになるので、軍隊にとっては兵士が負傷した時の稼働の負担は軽くなる。

戦場の最前線では負傷した兵士の介護はかなりの負担になる。その場で応急処置はできるかもしれないが完璧な対応はできないことが多い。完璧な対応ができないために命取りになってしまうこともある。また部隊が移動するときには負傷した兵士を連れていくことによって機敏な行動ができないで敵軍に攻撃されてしまうことがある。また負傷した兵士以外にも物資の輸送も実施しており、物資を運んでいる様子も報じられていた。

戦場の「5D業務」に適したロボット

「ストレッチャー・ロボット」は走行速度も速くないし、いわゆる「丸腰」の状態なので、上空を飛行している監視ドローンからは目立ってしまう。そのため負傷した兵士が「ストレッチャー・ロボット」で搬送されている間にウクライナ軍に検知されて攻撃されてしまう危険はある。また搬送している途中で対戦車地雷や対人地雷に触れてしまい爆破してしまう危険もある。

今回、英国メディアのテレグラフが報じていたのはロシア軍の無人「ストレッチャー・ロボット」だが、ウクライナ軍でも同様に無人機で物資や負傷した兵士を輸送している。ウクライナ軍は多くの無人機やロボット開発を行い戦場で実戦に投入しているが、ロシア軍もこのように無人機やロボットを活用している。

ウクライナ紛争では多くのリモート操作のロボットタイプの無人車両が物資や負傷した兵士の運搬や監視目的で利用されており、戦場の無人化が進んでいる。従来、戦場で人間(軍人)が行っていた「5D業務」(単調:dull、汚い:dirty、危険:dangerous、人間が入れないところ:distance、深いところ:deep)の任務の多くは既にロボットが行っている。戦場での負傷した兵士の輸送やトラックなどが入れない地域への物資の輸送にはロボットは適している。

▼英国メディア・テレグラフが報じているロシア軍が負傷した兵士を輸送する「ストレッチャー・ロボット」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事