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ロシア軍の神風ドローン「Lancet」、防御用の金網(ネット)突破してウクライナ軍の自走カノン砲破壊

佐藤仁学術研究員・著述家
塹壕もネットで防衛しているウクライナ軍(写真:ロイター/アフロ)

「シャハド」よりも「Lancet」の方が金網破りには適している?

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。

ウクライナ軍、ロシア軍ともにドローンごと標的に突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンを多く使用して敵の軍事施設や戦車などを攻撃している。ロシア軍はイラン製軍事ドローン「シャハド」やロシア製の攻撃ドローン「Lancet」といった神風ドローンでウクライナ軍を攻撃している。

そしてウクライナ軍、ロシア軍ともに、標的に突っ込んでくる神風ドローンの攻撃を防御するためにプラスチックの金網(ネット)を戦車や大砲、軍事施設の上に張っている。神風ドローンが標的の戦車や大砲に突っ込んできても金網(ネット)にぶつかって戦車などを防衛している。金網(ネット)で手作りのものがほとんどだが効果があり、神風ドローンからの攻撃と爆発を防いでいる。

だが、全ての神風ドローンの攻撃を防衛できるわけではなく、金網(ネット)を突破して戦車や大砲を破壊してしまうこともある。

2023年5月にはロシア軍の神風ドローン「Lancet」が金網(ネット)を破ってウクライナ軍の2S5ギアツィント 152mm自走カノン砲を破壊している動画が公開されていた。金網(ネット)は自衛のために効果があるので、金網(ネット)で防衛しているだけではニュース性はない。だが、大量に爆弾を搭載している戦車や大砲に神風ドローンが突っ込んでくると大爆発するので危険であるので、金網(ネット)が破壊されて戦車などが破壊されるとメディアにも取り上げられることが多い。

2023年3月にはロシア軍の神風ドローン「Lancet」が金網(ネット)を破ってウクライナ軍の2S1グヴォズジーカ 122mm自走榴弾砲を破壊していた。ロシア軍はイラン製軍事ドローン「シャハド」やロシア製の攻撃ドローン「Lancet」といった神風ドローンでウクライナ軍を攻撃しているが「シャハド」よりも「Lancet」が金網(ネット)を破壊している報道が目につく。

金網(ネット)での防衛は戦車や大砲などだけではなく、塹壕の上などにも張って防衛をしている。神風ドローンだけでなく小型民生品ドローンからの爆弾投下からの防衛にも貢献している。

▼ロシア軍の神風ドローン「Lancet」に破壊された金網(2023年5月)

▼ロシア軍の神風ドローン「Lancet」に破壊された金網(2023年3月)

▼ウクライナ軍が金網(ネット)の下にフランス政府から提供されたTRF1 155mm榴弾砲でロシア軍を攻撃(2023年4月)

▼ウクライナ軍の戦車の上の木の枝にひっかかったロシア軍の攻撃ドローン(2022年12月)

▼アンチドローン・ネットを突き破ったが榴弾砲には衝突しなかったロシア軍の神風ドローン(2023年1月)

▼木の間に吊るした網のアンチドローン・ネットで榴弾砲を防衛するウクライナ軍(2023年2月)

▼ロシア軍の塹壕に張られたドローンからの爆弾投下対策のプラスチック網(2023年3月)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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