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120日間、毎日『3億円強奪事件』が起きていた! 不正利用334億円超 マイナンバー読み取り義務可

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
(写真:つのだよしお/アフロ)

KNNポール神田です。

□政府は携帯電話や電話転送サービスを「対面」で契約する際、事業者に対し、マイナンバーカードなどに搭載されているICチップの読み取りを本人確認方法として義務付けることを決定しました。
□インターネットなどを通じた「非対面」での契約の際には、▼顔写真のない健康保険証などの本人確認書類や、▼運転免許証の画像を送信する方法は廃止し、原則としてマイナンバーカードに一本化するということです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4abc10e3196b50c98c43ab19dd412ef1e5f031cf

ようやく、政府がマイナンバーカード詐欺に関して重い腰をあげた。マイナンバーカードのICチップの読み取りを『義務化』するだけの決定になぜにここまで時間をかけるのか?


■120日間、毎日『3億円強奪事件』が起きていた!


通信キャリアの数は大手だけで4社、MVNO事業者も大手の回線を借りているので、主な4社に『義務化』の意向を伝えるだけで、国民にも周知されることを考えると、携帯電話の契約に『マイナンバー』が『本人確認手段』として必須なことは伝わる。

2023年1月から4月までの4ヶ月間(120日間)、SNSを使ったマイナンバー偽造カードなどによる事件件数は2,508件、被害額は334億3,000万円
1件あたり、1,332万円という恐ろしいほどの巨額の詐欺だ。1日あたり2億7,858万円という規模だ。
 これは1968年に日本中を震撼させた『三億円事件(2億9,430万7500円)』が、一度ならず、120日間も発生しているという規模である。映画化やドラマ化もされているので、もっと世間は大騒ぎになってもよいはずだろう。しかも、今回の実行犯のリスクは『三億円事件』と比較して、ほとんどないに等しいのだ。

 詐欺を働く側からすると、実働部隊は、主に『携帯電話の紛失』で『本人確認』のための『偽造マイナンバーカード』で本人に簡単にスリ変わることができてしまい、紐づけられている銀行やECでのショッピングで安易に悪用されてしまった。

そして、すでにニュースになる頃には、犯罪はピークの終焉を迎え、新たな手口を研究開発していると考えられるだろう。

やはりこんな事件こそ、初動が重要で、迅速に『義務化』を指示し、『罰則』も同時に発表すべきであった。よくあるのが、『義務化』したけれども、実際には『罰則』がないので、形骸化してしまうパターンだ。

どうしても、『金融庁』管轄の銀行業務などではしつこいほどの確認があるが、銀行口座にすでに紐づけられている『決済』では驚くほど簡単に『決済』が終了してしまう。特に『クレジットカード決済』などでは、満額まで決済されていても本人が気づくまでに時間がかかってしまう。

■暗号資産経由のランサムウェアの脅迫と同様の手口も

さらに最近では高額な時計を購入するなどの手段から、『暗号資産』を購入し『ウォレット』から『送金』されてしまうと、捜査機関でさえ、追跡が難しくなってしまう。『ブロックチェーン技術』によって、データが改ざんされないようにすべて『暗号化』されて担保はされているが、『どこの誰が』所有していたものなのかという『属人的な情報』がないので、『脅迫などのランサムウェア』などの『決済手法』としてもよく活用されている。


このような新たな『ハイテク手法』の『特殊詐欺』の特徴は、事件化してニュースで警鐘を鳴らした時点で、次の手に移行されているので、『ハイテク詐欺』に関する、アイデアや知見を広く求めて、手法を先回りしておき、それに罠を仕掛けておくなどの、犯罪者側の視点が最も重要となる。

『司法取引』の一つの手法としても、ハイテク詐欺で捕まった人たちの罪の軽減とともに『新たなハイテク犯罪手法』の検証などを重ねるべきではないだろうか?罪の重さの量刑よりも、被害者を生み出さない強固なセキュリティは、便利さとのトレードオフとなる。
 筆者などもいくつも、ハイテク犯罪のアイデアを思いつくが、それを公表するわけにもいかないので捜査側も犯罪のアイデアを募集するしくみを作るべきだと考えている。文殊の知恵を集積し、未来に備えるのだ。

■『マイナンバーカード』には『生体認証』を!


また、『マインバーカード』そのものもICチップで読み取ったとしても『1.氏名(フリガナなし)、2.性別、3.生年月日、4.住所、5.マイナンバー 6.顔写真 』程度しか読み取れない。これもデータベースとして照合されない限り、読み取り可能なICチップの偽造は可能だ。

むしろ『マイナンバーカード』は『多要素認証』を必須とし、『SNS』『電子メール』『生体認証』を伴ってはじめて認証できるなどとすべきだったのではないだろうか?

■『選挙』にこそ使える『マイナンバーカード』

当然、選挙の時なども『選挙はがき』の持参だけで、住所の確認を目視でおこなうだけで、本人確認がなされていないのが現状である。それこそ、マイナンバーカードで本人確認を行い投票ができるだけでも余剰人員を生むことができるのと、選挙対応がより簡易となる。むしろ期日前投票などの投票数なども、自動カウントで国政選挙や都知事選挙のようなマンモス選挙でも、十分にデータを投票日までに掌握できる。すると期日選挙に投票するのに、いちいち言い訳を書かせるという無意味さもなくなる。

マイナンバーカードは、もっとセキュアでビッグデータとしての動きを掌握できるツールとして利用しなければもったいないのだ。保険も免許もパスポートもマイナンバーカードと紐づけた人が、恩恵を十分に受けられるようにしなければ、『義務でもない義務化』という二枚舌にしか聞こえてこない。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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