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ロシア軍占領下のカホフカ水力発電所の監視カメラをウクライナ軍"FPV神風ドローン"でピンポイント破壊

佐藤仁学術研究員・著述家
ドニエプル川(写真:ロイター/アフロ)

ドローンからの爆弾投下よりも確実に破壊できる神風ドローン

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生品ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。

ウクライナ軍では攻撃している様子の動画や写真、破壊したロシア軍の戦車の残骸の写真や動画などをSNSで公開して世界中にアピールしている。2023年2月にはウクライナ軍の軍事ドローンでロシア軍に占領されてしまったカホフカ水力発電所にロシア軍が設置した監視カメラを破壊する動画を公開していた。

監視カメラを標的にして突っ込んでいき爆発するシーンをFPV(ファースト・パーソン・ビュー)で撮影していた。標的に突っ込んでいき爆発するのは「神風ドローン」と呼ばれている。FPVはドローンに搭載されたカメラの視点から見えている風景が操縦者に見える。標的の監視カメラに突っ込んでいき爆発するので最後はドローンも粉々に破壊されるので、映像も爆発の直前で停止している。

ウクライナ軍は神風ドローンだけでなく、小型民生品ドローンに爆弾や手りゅう弾を搭載してロシア軍の軍事施設や戦車などに投下して爆破させている。地上に置かれている戦車や軍事施設、塹壕にいるロシア兵などにはドローンで爆弾を投下して爆破しやすい。だが民生品ドローンで上空から爆弾を精確に投下して監視カメラのような小さな設備を破壊するのは難しい。特に今回の監視カメラはカメラ用ポールの上に設置されているので上空から爆弾を投下してピンポイントにカメラを破壊するのは容易ではない。爆弾が監視カメラを命中できなかったら、ドニエプル川に落ちてしまうだけで効果がない。そのため、このように神風ドローンで標的である監視カメラに突っ込んでいき、爆発させてしまう方が確実に破壊できるので効果的である。

神風ドローンは小さな監視カメラだけでなく、戦車や軍事施設などへの攻撃にも多く用いられており、攻撃シーンの動画も頻繁に公開されている。ロシア軍が使用しているイラン製の「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」は戦場での攻撃用に開発された神風ドローンであり、ウクライナ軍の戦車や軍事施設を標的に攻撃を行っていることが多い。

▼ロシア軍に占領されたカホフカ水力発電所のロシア軍が設置した監視カメラをFPV神風ドローンで破壊

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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