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ウクライナ副首相「軍事ドローン開発ハッカソン」呼びかけ:欧米トルコの軍事ドローン依存から脱却へ

佐藤仁学術研究員・著述家
(ミハイロ・フェドロフ副首相提供)

欧米・トルコに依存しないでウクライナで軍事ドローン開発

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。

ロシア軍は主にロシア製の偵察ドローン「Orlan-10」で上空からウクライナの監視・偵察を行っている。またロシア製の攻撃ドローン「KUB-BLA」や「ZALA KYB」で攻撃を行っている。またイラン政府がロシア軍に攻撃ドローンも提供する。

そしてウクライナ軍はトルコが提供した攻撃ドローン「バイラクタルTB2」によるロシア軍への攻撃が目立っているが、他にも米国バイデン政権が提供した米国エアロバイロンメント社が開発している攻撃ドローン「スイッチブレード」やポーランドなど周辺諸国が提供した攻撃ドローンや監視・偵察ドローンを多く使っている。それ以外にもウクライナで開発、製造した軍事ドローン「R18」、「PD-1」などでもロシア軍を攻撃している。さらに監視・偵察目的で導入した民生品ドローンに爆弾や手りゅう弾を搭載してロシア軍の上空から落下させてダメージを与えている。

このようにウクライナ紛争は歴史上もっともドローンが多く使われている紛争である。そして2022年8月にはウクライナの副首相でデジタル改革大臣も務めているミハイロ・フェドロフ氏が、ウクライナで軍事ドローン開発に向けたハッカソンの開催を呼びかけている。

ハッカソンとはプログラマーや技術者などが、 短期間に集中的に開発作業を行うイベントでロシア軍に対抗するための軍事ドローンや効率的な監視・偵察ドローンの開発を目指している。また軍事ドローンを開発するスタートアップ企業の支援も行っていく。

ウクライナ紛争では高価で大型の軍事ドローンはロシア軍に検知されるとすぐに地対空ミサイルなどで迎撃されて破壊されてしまっている。そこでウクライナ軍では民生品の安価なドローンに爆弾や手りゅう弾を搭載して落下させる軍事ドローンを考案して、実際にロシア軍に多大なダメージを与えている。まさに戦場での「必要は発明の母」である。

ウクライナでの軍事ドローンの開発はロシア軍への攻撃が最優先だ。だが、欧米やトルコの軍事支援に頼らないでウクライナ独自でもっと効率的に殺傷力の高い軍事ドローンの開発と製造を行っていくことも狙いである。現在でもウクライナで開発した軍事ドローンが戦場で使用されているが、さらにウクライナで開発、製造することによってコスト削減や輸送時間の短縮も図れる。また軍事ドローン開発の技術力をウクライナ独自で保有できるようにもなる。

▼軍事ドローンのハッカソンを呼びかける副首相のツイート

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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