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自分の酒を宣伝するジェニファー・ロペスに「夫が依存症なのに?」「飲まなかったはずでは?」

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
夫ベン・アフレックは長年依存症と闘ってきた(写真:REX/アフロ)

 香水、スキンケア、ファッション、ランジェリーなど、ジェニファー・ロペスは、本業の歌と演技以外にも数多くのビジネスに進出してきた。だが、最近デビューした新たな商品は、ちょっとした論議を呼んでいる。カクテルのブランド、デローラだ。

 ハリウッドでブレイクを果たした頃から、ロペスは酒を飲まないと語ってきた。それに、昨年夏の結婚で4度目の夫となったベン・アフレックは、アルコール依存症で更生施設に入所してはぶり返した過去を持ち、今は完全に酒を絶っている。2004年に婚約解消した彼と長い年月が経ってから寄りを戻す上では、その件について十分話し合ったとも報道された。なのに、自らお酒を作って宣伝するのは、奇妙ではないかというのだ。

 そんなファンの疑問に、ロペスはインスタグラムに投稿した動画で答えた。動画は、走る車の中にいるロペスが、「人が家に来るから、デローラを買いに行くの。家にあると思っていたのに、なかったから。そのお店にあると良いんだけど」と言うところからスタート。その直後に、「『お酒を飲まないのに、どうしてカクテルを売るの?』という声をたくさん聞いたわ。実際、長いこと飲まなかったの。でも、ここ10年か15年は、たまにカクテルを飲んでいる私の写真が出回ったりしていたわよ。飲むのは、あくまで節度を持ってね」と述べるのだ。

 続けて彼女は、「これまでいろいろ違うものを試す中では、ホワイト・ルシアンやロゼにハマったこともある。でも、これだというものを見つけられなかった。だから、私はいつもそうするように、自分で作ることにしたの」と、経緯を説明。氷を入れたグラスに注ぐだけのこのカクテルを、ロペスは「すべて天然素材で、ヘルシー。そしてすごく美味しい」と絶賛。そのうち真似をして同じような商品が出てくるだろうと予想しながらも、「そうなっても良いわ。私の商品はベストなのだから」と自信を見せた。しかし、かなり長いその動画の中で、アフレックについては触れられない。

 この投稿には数多くの反応が寄せられた。「素敵な動画」、「こういうのをもっと投稿して」と褒めるファンもいる一方で、「この15年はお酒を飲んでいたってどういうこと?ヘルシーでいられるのはお酒を飲まないからだとインタビューで言い続けてきたじゃない?」、「彼女が酒を飲むのは別に構わないんだよ。でも、ずっと『飲まない』と言ってきたのは何だったのかってこと」、「偽善だ」と彼女の話に納得がいかないとする声は多い。「ベンは依存症なのに、今あえてお酒のビジネスを始めるの?」「『節度を持って』ですか。それができなくて夫は長年苦しんできたのに」「ベンがいる前でどれが美味しいかと試飲をしたのだろうか」と、夫への気遣いがなさすぎるのではという批判もある。「金になるならなんでもやるんだ」との皮肉もあった。やや出端をくじかれた感じのこのブランドが、クオリティとロペスの人気の力でヒットしてみせるのか、気になるところだ。

自分のお酒を作るハリウッドセレブはほかにも

 ロペスの場合はネガティブな反応を受けてしまったが、もともと酒へのこだわりがあってこの分野に進出し、良い結果を出したハリウッドスターは少なくない。

 一番の成功例は、ジョージ・クルーニーだ。彼と親友のランド・ガーバーが生み出したカサミゴスというテキーラは、昨年、ハードリカーで最も大きな成長を見せたブランド。クルーニーとガーバーは、2017年、このブランドを業界大手のディアジェロに7億ドルで売ったが、今もポスターに登場している。キャッチコピーは「実際にそれを飲む人たちがお届けします」。

ブラッド・ピットのワイン。左の「スタジオ・バイ・ミラヴァル」はカジュアルライン(筆者撮影)
ブラッド・ピットのワイン。左の「スタジオ・バイ・ミラヴァル」はカジュアルライン(筆者撮影)

 ブラッド・ピットは、アンジェリーナ・ジョリーと一緒だった頃に購入した南仏のワイナリー付きの土地でシャトー・ミラヴァルというロゼワインを作っている。ピットが努力を注ぎ込んだおかげで、今やこのワインはロサンゼルスの主なスーパーには必ず置かれている馴染みのブランドになった。ジョリーとの離婚で親権問題が出たことをきっかけにピットは酒をやめたが、ワイン作りを始めた時は大の酒好きだった。

 キャメロン・ディアスは、余計なものをなるべく省いたクリーンなワイン、アヴァリンを展開。女友達とワインを飲んでいる時に「具体的に、このワインには何が入っているのだろう?」という話が出て、自分たちで作ろうと思い立ったのだそうだ。最近では種類も増え、スパークリングや缶入りのロゼも提供する。

(キャメロン・ディアスのインスタグラムより)
(キャメロン・ディアスのインスタグラムより)

 また、昨年末には、ジェイソン・モモアが10年来の友人とメイリーというウォッカをデビューさせた。ユニークなデザインのボトルは、100%リサイクル素材で作られるとのこと。水にも相当にこだわっているらしい。一方、マシュー・マコノヒーは2018年からワイルド・ターキーでロングブランチというバーボンを作ってきた。昨年末でパートナーシップは解消したが、この商品自体は販売をつづけている。

(メイリー・ウォッカのインスタグラムより)
(メイリー・ウォッカのインスタグラムより)

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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