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メーガン妃とハリー王子、新たな広報マンを雇う。だがそれで世間をごまかせるのか

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 ハリウッドでの大成功に向けて、メーガン妃が再び動き出した。先日発表されたNetflixのドキュメンタリーシリーズが、いよいよ撮影に入ったのだ。

 メーガン妃が出演するそのシリーズは、料理、ガーデニング、ホームパーティ、友情などについてということしかわかっておらず、タイトルも未定。撮影は、夫妻の自宅ではなく、ご近所の豪邸で行われている。夫妻の長男アーチー君と長女リリベットちゃんは出演しないらしい。

 メーガン妃は、テーブルウェア、キッチン関連アイテム、ジャム、料理本などを扱うブランド「アメリカン・リヴィエラ・オーチャード」を立ち上げたところ。まだ知人に最初のジャムを送った程度で一般に販売を開始してはいないが、このシリーズの中に彼女の商品が多数登場することは容易に想像できる。

 やはりNetflixでハリー王子が製作するポロについてのドキュメンタリーシリーズも、先月、フロリダ州で行われたUSオープン・ポロ・チャンピオンシップで撮影された。ポロというスポーツの世界の内部に入り、トップレベルに到達するにはどんな努力が必要とされるのかを見せるということだが、こちらもタイトルをはじめ、詳しいことはわからない。

 2022年12月にNetflixで配信開始したドキュメンタリーシリーズ「ハリー&メーガン」、その翌月に出版されたハリー王子の回顧録「Spare」で英国王室バッシングをし、大きな話題を集めた夫妻は、その後、ぱっとしないまま。Spotifyからは契約を切られ、ハリー王子のNetflixシリーズ「ハート・オブ・インビクタスー負傷戦士と不屈の魂―」は一度もランキングのトップ10に入っていない。

 メーガン妃と夫妻のプロダクション会社アーチウェルは、昨年春にハリウッドの大手エージェンシー、ウィリアム・モリス・エンデヴァー(WME)と契約を結んだのだが、凄腕の彼らにも、思い描いていたような魅力的なプロジェクトやトップブランドとのパートナーシップを持ち込むことができないまま。この夫妻に対して一般人が持つイメージが良くないことは、「The Hollywood Reporter」から「今年の敗者」と呼ばれたり、アメリカのアニメ番組でパロディのネタにされたりしたことにも明らかだ。

イギリスの広報担当者は「あっというまに狼に食われるだろう」

 そんな中だけに、今度こそ成功させることは、彼らの野望とブランドにとって必至。本人たちもそれを認識しているのだろう、最近、夫妻が、新たに広報担当者を雇ったことが判明した。それも、ひとりではなくふたりだ。ハリウッドの大手のひとつ、ユナイテッド・タレント・エージェンシーに勤務した経歴を持つカイル・ブーリアはアメリカのメディア、チャーリー・ギプソンはイギリスとヨーロッパのメディアの窓口になるという。

 2020年に王室離脱して以来、夫妻がイギリスとヨーロッパ専門の広報担当者を雇うのは初めてのこと。イギリスでのイメージアップにも本気で取り組まなければという意図の表れだろうが、ギプソンはお菓子のブランドなどの広報を務めてきた人で、イギリスのタブロイドを相手にした経験はない。イギリスのタブロイドの手強さは有名な上、ハリー王子とメーガン妃は彼らの最大の興味の対象とあり、すでにメディアの間では、「ギプソンはあっというまに狼に食われるだろう」という声が出ている。

 同時に聞かれるのが、彼らはいつまでその仕事に耐えられるかという疑問だ。ハリー王子とメーガン妃のスタッフの入れ替わりの激しさはよく知られるところ。せっかく立派な経歴を持つ人を雇い、良い忠告をもらっても、耳を貸さずに自分たちの好きなようにしまうので、次々に人が離れていってしまうようである。

 事実、WMEからも契約を切られるのではとささやかれた時があった。英国王室の悪口を言って金を稼いだメーガン妃のイメージアップ戦略における第1歩は、そのネタから完全に切り離すこと。WMEはその方向で進めていたに違いないのに、昨年末、“メーガン妃の非公式スポークスパーソン”とも呼ばれるジャーナリスト、オミッド・スコビーが出版した本「Endgame」のオランダ語版に、人種差別的発言をしたとして、王室内のふたりの人物が名指しされていたのだ。アーチー君を妊娠している時、生まれてくる子はどんな肌の色なのだろうかと言った王室内部の人間がいたと、メーガン妃がオプラ・ウィンフリーの独占テレビインタビューで語って大騒ぎになったのは、2021年3月。その古いネタが、わざわざまた引っ張り出されてきたのである。

 もちろん本を書いたのはスコビーであり、メーガン妃でもハリー王子でもない。しかし、これらの名前はメーガン妃がチャールズ国王に向けて送った手紙に書かれていたのだという。それを入手できるのは誰なのか。また、本当にかかわっていないのであれば、メーガン妃とハリー王子はスコビーを非難する声明を出すべきなのに、今に至るまでこの件に関しては何も発言していない。WMEがパニックし、激怒したのも納得だ。その後まもなくチャールズ国王とキャサリン妃がガンと診断されたことも、この出来事をより罪深くした。

広報担当者にできることには限りがある

 たとえこれらの新たな広報担当者がすぐに辞めなかったとしても、彼らにどこまでできるのかという問題もある。

 優れた広報担当者がついてくれていることが、セレブにとってプラスなのはたしか。しかし、もともと良い人柄で問題行動のないセレブは、広報担当者が出てくるまでもなく、世間に好かれている。だが、メーガン妃とハリー王子の場合は、新しい広報担当者がこれからのプロジェクトだけに焦点を当てようとしても、世間は夫妻がこれまでにやってきたことを知っている。

 ソーシャルメディアやコメント欄には、「またブランドの立て直し?毎週やっている感じだよね。無駄だよ。公の場で家族に対して謝罪し、自分たちは世界的なブランドではないのだと認識して、ひとつのことを集中してやりなさい。まずはそこから」、「才能のない詐欺師のふたりは、メディアを操作すればすべてが変わると思っているんだ」、「もうハリーとメーガンはうんざりなのに、このふたりの新しい広報担当者はもっと彼らを私たちに押し付けてくるのか」などといった書き込みが見られる。新たな広報担当者が起こすミラクルのおかげで、近い将来、世間の受け止め方が変わるということは、果たしてありえるだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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