ハーベイ・ワインスタインへの有罪判決、覆される。ニューヨークでの裁判はやり直しに
ハリウッドの頂点から獄中の人に転落した元映画プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインに、久々の朗報が訪れた。ニューヨークの控訴裁判所が、2020年に陪審員が出した有罪判決を覆したのだ。控訴裁判所は、裁判のやり直しを求めている。
ワインスタインは23年の懲役を言い渡され、現在、ニューヨークの刑務所で服役中。その判決が無効になったとはいえ、彼はこれとは別にロサンゼルスでの裁判で16年の懲役を命じられているため、自由の身にはなれない。
有罪判決が覆された理由は、2020年の裁判の判事ジェームズ・バークが、本来証人として出てくるべきでない人たちが証言するのを許してしまったこと。
「New York Times」と「The New Yorker」が立て続けにワインスタインのセクハラ、性加害についての暴露記事を出した後、100人以上の女性が被害を名乗り出たが、時効などさまざまな理由で、この刑事裁判は、プロダクションアシスタントだったミミ・ハーレイと、女優志望だったジェシカ・マンというふたりの女性に対する性犯罪についてのものとなった。しかし、これらの被害者には、陪審員を説得させるにはやや弱い部分もあったため、検察は、ほかに3人の女性を連れてきて、ワインスタインから過去に受けた被害についてそれぞれ証言させた。
控訴の根拠として、ワインスタインの弁護士は、この部分を強調。その人のイメージ、普段の行動や評判に左右されず、起訴されることになった事実が本当にあったかどうかで有罪か無罪かを決めるようにするため、ニューヨークでは直接関係のない人物に過去の出来事について証言させることを法で規制しているのだ。控訴での勝利を受けて、ワインスタインの弁護士は「ワインスタインは公平な裁判を受けられなかった。社会で嫌われている人に対しても法は平等であらねばならない」と述べた。
この展開を喜ぶワインスタインのロサンゼルスの弁護士は、ニューヨークと同じことが再び起きるはずと、自信を示している。ロサンゼルスでの裁判でも、検察は、直接関係のない証人を4人出してきたからだ。しかし、必ずしもそうなるかどうかはわからない。カリフォルニアでは1996年に州法が変更され、性犯罪に関しては、被告のパターンを見せるために、過去に似た被害に遭った人を連れてくることにやや寛容になったのだ。ワインスタインのロサンゼルスの弁護士は、すでに控訴を通達している。
ワインスタインは現在72歳。糖尿病で、心臓、目も悪く、裁判所には歩行器を使って出廷していた。ニューヨークで23年の懲役が出た段階で、彼は残りの一生を刑務所で終えるだろうと思われたが、ロサンゼルスでも有罪判決を得ることは、正義のためと、さらに、ニューヨークの控訴でワインスタインが勝ってしまう場合に備える意味があった。実際にそうなってしまった今、ロサンゼルスは有罪のままとどめることができるのかが大きく注目される。
ニューヨークの控訴裁判所の判決は、「#MeToo」運動を支持してきた人々にとって悲しいニュース。ワインスタインの被害者8人を弁護するダグラス・H・ウィグダーは、「本日の判決は、性加害者に責任を問うことにおいて逆戻りの意味を持つ」と述べた。また、ロサンゼルスの刑事裁判で証言した4人の女性のひとりで、カリフォルニア州知事ギャヴィン・ニューサムの妻でもあるシーブル・ニューサムは、「性加害の常習者に苦しめられた数多くの女性にとって、今日はとても悲しい日となりました。しかし、女性たちは勇気を持って声を上げたのです。ニューヨークで起きたことにかかわらず、ワインスタインは刑務所で死にます」と述べている。