「SHOGUN 将軍」最終回配信で首位に返り咲き。高まる第2シーズンの可能性
華やかに始まった「SHOGUN 将軍」が、大きな打ち上げで終わった。配信開始の週に、ディズニーのテレビ部門であるディズニー・ジェネラル・エンタテインメント・コンテントの歴史で最高のデビューを飾り、翌週も配信アクセスで1位をキープしたこの10話構成のミニシリーズは、最終回が配信された4月22日から28日の週、再びトップに返り咲いたのだ。
Samba TVの調査によると、昨年末に北米で劇場公開され今月Netflixで配信が始まったばかりの「恋するプリテンダー」、Amazonプライム・ビデオの作品として記録的デビューをした「フォールアウト」を制しての首位獲得。さらに、「SHOGUN 将軍」は、配信が始まってからの9週間、一度も3位より下には落ちていないというのも特筆すべきだ。これはかなりすごいこと。話題の作品でも、大きな数字を上げるのは最初のほうだけで、数週間後には大きく下がることは珍しくないのである。もっとも、Netflixの作品や「フォールアウト」のように一気にシリーズの全話を配信するのと違い、「SHOGUN 将軍」は週に1話ずつ配信したことは関係しているかもしれない(ただし、第1話と2話は同時に配信開始)。
視聴者に支持されたこのシリーズはまた、この秋に控えるプライムタイム・エミー賞でも大健闘しそうだ。業界メディア「Variety」は、作品がリミテッド・シリーズ部門で、アンナ・サワイが主演女優部門(リミテッド・シリーズ)で受賞すると予想。また、真田広之とコスモ・ジャーヴィスが主演男優部門(リミテッド・シリーズ)、浅野忠信と平岳大が助演男優部門(リミテッド・シリーズ)で候補入りすると予想している。
ここまでの大成功となったことで、第2シーズンの可能性も高まってきた。過去のインタビューで、ショーランナーのジャスティン・マークスは、原作小説と同じであるラストが気に入っていること、またこのシリーズには並ならぬ時間と労力を費やしたことから、第2シーズンには消極的な姿勢を示していた。製作中に妻で脚本家のレイチェル・コンドーとの間に赤ちゃんを授かったこともあり、妊娠出産に例えて「今また子供を作れと言われて『無理!』と言うようなもの。体がそう言っている」とも述べている。
しかし、先週「Hollywood Reporter」が掲載した新たなインタビューで、マークスは、「良いストーリーを見つけられたなら、僕は(第2シーズンを作ることに)オープンだ」と可能性を匂わせているのだ。一方で、原作者ジェームズ・クラベルが作ったこの小説の筋書きに匹敵するようなものを自分たちが果たして作れるものなのかとの不安も漏らしている。クラベルは「将軍」の後、“アジアン・サーガ”として知られるアジアの別の国を舞台にした複数の小説を書いたが、「将軍」の続きは書かなかった。そのことに触れ、「クラベルですら、それはできなかったのかもしれない。だからほかの話に移ったのではないか。彼は(『将軍』で)自分が成し遂げたことを知っていたんだ。なかなか難しいと思う」とも、マークスは述べている。
筆者も、続編を作る場合、ひとつ問題があると考える。あの後は日本に平和が訪れてしまうので、戦いのシーンを出してこられないのではないかと思うのだ。ジョン・ブラックソーン(ジャーヴィス)が母国に帰るまでにどんなことがあったのかを語ることはできるが、このシリーズの魅力は、かけひき、裏切りなど人間ドラマに加え、アクションシーンにもあった。
なので、以前も書いたが、筆者は続編よりもプレクェルのほうが良いのではと個人的に思っている。アメリカの視聴者には、当時の日本におけるポルトガル人の存在に興味を持った人も多かったようだし、そうなった経緯ももっと見せられるのではないか。それに、このシリーズの中で死んでしまった主要なキャラクターをまた出してくることもできる。
いずれにせよ、製作のFXにしてみたら、巨額な予算をかけた作品が大当たりした以上、これでおしまいには絶対にしたくないはず。日本に関するリサーチをたっぷりして、分厚いマニュアルを作ったマークスにしても、次は一から始めなくてもいいという利点がある。
しかし、彼の言うように、「良いストーリーを見つけられれば」というのは、第一条件だ。「SHOGUN 将軍」は、長い年月をかけて正しいストーリーを探し、一度は撮影にこぎつけるところまで来たのに振り出しに戻ることすらした。だからこそ優れたものになり、ヒットしたのだ。「当たったからこの勢いですぐ次を作ろう」という態度では、同じクオリティのものはできないかもしれない。そうなったら、ファンをがっかりさせてしまう。
そんなことはこちらから言われなくても、彼らはしっかりわかっているはず。話し合いも常に進んでいることだろう。ということで、とにかく今は、なりゆきを見つめつつ、エミー賞のノミネーション発表、授賞式を楽しみにすることにしよう。