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「リトル・マーメイド」プレミア、ハリー・ベイリーの歌声に大きな拍手

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
美しい歌声で会場を沸かせたハリー・ベイリー(写真:ロイター/アフロ)

 ディズニーの名作アニメーションを実写化した「リトル・マーメイド」の世界プレミアが、西海岸時間8日、ロサンゼルスで行われた。会場は、アカデミー賞授賞式にも使われるハリウッドのドルビー・シアター。会場前の大通りハリウッド・ブルバードはこの大イベントのために交通が遮断され、レッドカーペットならぬブルーのカーペットが、長く、広く敷かれた。その周囲もブルーの壁で囲まれている。

 そこからさらに深い海の中にいるような青いトンネルをくぐって、アカデミー賞の中継でもお馴染みのドルビー・シアターの階段へ。シアター内には、マーメイドを意識した服装の観客もちらほらと見られた。上映開始を待つ間、かかっているBGMは、アラン・メンケンによるディズニーアニメーションの名曲の数々だ。

海の中をイメージしたプレミア会場
海の中をイメージしたプレミア会場写真:ロイター/アフロ

 プレミアは予定より大幅に遅れて始まることが多いが、ロブ・マーシャル監督が舞台に現れたのは、予定時間の18分後。「メリー・ポピンズ リターンズ」の製作を終えようとしている時にディズニーからこの企画を持ちかけられ、撮影開始直前にパンデミックが起こって製作が中断するという苦労を経験したマーシャルは、「今、みなさんと一緒にここに来られたことに大きな喜びを感じます。この映画には4年半が費やされました。ようやくここにたどりつけたなんて信じられません」と感動を語った。

 続いて彼は、プロデューサーのジョン・デルーカ、作曲家のメンケンら主要なスタッフ(メンケンとともに音楽を手がけたリン・マヌエル=ミランダは欠席だった)とキャストをひとりずつ舞台に呼び出した。アリエルの父トリトンを演じるハビエル・バルデムについては「一緒に仕事をできる機会をずっと待ち望んできた俳優。世界で最も優れた俳優のひとりでもあります。彼が演じるトリトンを、私はすべての点において愛します」、悪役アースラを演じるメリッサ・マッカーシーについては、「このすばらしいキャラクターを演じられるのは、世界にこの人しかいません」と紹介。エリック王子役に大抜擢されたイギリス人俳優ジョナ・ハウアー=キングのことは、「これぞスターだと感じさせる人に出会うことはたまにありますが、彼はまさにそうでした。人としてもすばらしく、実に才能豊かな俳優です」と絶賛した。

 そしてマーシャルは最後に、「この人なくして、この映画はありえません」と、主演のハリー・ベイリーを紹介。アリエル役のオーディションにやってきた数多くの女優の中で、最初に会ったのが彼女だったと述べた上で、「最初の瞬間に、彼女だと私たちは感じました。その後、何百人もの女優たちに会いましたが、彼女が最初にすごく高い基準を設定してしまい、誰もそれを超えられませんでした。彼女が演じるアリエルは、本当に、びっくりするほど最高です」と褒め称えた。

 マーシャルにそこまで言わせる実力は、映画の前半、ベイリーが「パート・オブ・ユア・ワールド」を歌うシーンで早くも証明された。映画は基本的にオリジナルに忠実に作られており、このシークエンスも知っている通りのビジュアルが美しく実写で再現されている。ベイリーは、愛される名曲に敬意を払いつつ、しっかりと自分のものにもしており、歌が終わると、まるでライブコンサートのように、会場は大きな拍手に沸いた。

アースラ役のメリッサ・マッカーシーとトリトン役のハビエル・バルデム
アースラ役のメリッサ・マッカーシーとトリトン役のハビエル・バルデム写真:ロイター/アフロ

 マッカーシーのアースラが登場した時も、観客は大きく反応。さすがコメディエンヌらしい絶妙なタイミングのせりふ回しは、場内に笑いを巻き起こした。また、アニメーション版でも人気のセバスチャン、スカットル、フランダーは、この実写版にも多くのユーモアを提供。声の演技をするのは、それぞれダヴィード・ディグス、オークワフィナ、ジェイコブ・トレンブレイだ。ミュージシャンでもあるディグスとオークワフィナは映画の後半でラップを歌うが、これもまた人々が楽しんでいるのが感じられた。

 ほかにもアニメーション版にはなかった新曲が加わっているこの実写版の上映時間は、2時間15分。アメリカではメモリアルデーの連休週末となる今月26日に公開される。日本公開は6月9日。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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