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贔屓、ヌード写真、家族の争い。ブリトニー・スピアーズの息子が母との面会を拒否する理由

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ブリトニー・スピアーズと、6月に夫となったサム・アスガリ(写真:ロイター/アフロ)

 13年も苦しめられた父の支配から解放され、今年の6月、晴れて12歳下のサム・アスガリと再婚。結婚式にはパリス・ヒルトンやセレーナ・ゴメスも出席したが、一番来てほしい人の姿はなかった。スピアーズが元夫ケビン・フェダーラインとの間に授かった息子ショーン・プレストン(16)とジェイデン(15)だ。

 スピアーズは、ほかの家族のメンバーを招待していない。成人後見人制度を利用して自分の仕事や私生活をコントロールした父ジェイミーのことは強く恨んでいるし、その裏には母もいたと信じている。妹ジェイミー・リンも両親の肩を持ち、兄ブライアンは何もしない。家族で招待したのは、唯一愛する息子たちだけだ。だが、彼らは自分の意思で母の結婚式を欠席した。

 さらに先月、息子たちが何ヶ月も母親との面会を避けていることが報道されたのだ。それを受けてブリトニーは「私を捨てた」と息子たちを批判するコメントをインスタグラムに投稿。それを受けて、ケビンは車の中でブリトニーが息子たちを怒鳴りつける動画を投稿した。そして今度は当の息子たちが自分たちの心境を語ったのである。

 年下ではあるが、兄より外交的な性格のジェイデンは、ドキュメンタリーのフィルムメーカーに対し(それらのコメントは『Daily Mail』が独占記事として掲載した)、「ここに憎しみはない。これは100%修復できると思う。でも、そのためにはたくさんの努力が必要。母には精神的に安定してほしい。回復したら、また母に会いたい」と述べている。だが、今はその時ではないと息子たちは判断した。母の再婚は祝福するものの、母がほかの家族のメンバーを呼ばなかったことから、そこから何か良いことが生まれるとは思えないと思ったのだ。母が敵視する祖父母のことを、ふたりはまったく悪く思っておらず、家族が反目しあうのが辛いのである。

 また、ジェイデンは、ブリトニーが兄ショーン・プレストンより自分を贔屓するとも感じてきた。「僕が文句を言うと、ママは兄を怒った。そのことに罪悪感を覚えた。だから僕は兄に寄り添う。ママは僕を贔屓していた」と、ジェイデンは述べている。

 ブリトニーがやたらとインスタグラムに投稿するのも、息子たちには受け入れ難いことだ。「人から注目されるために何かを投稿している感じ。ここ何年も続いてきた。これは終わらないのかもしれない。でも、終わってくれることを願っている」。そう語るジェイデン自身とショーン・プレストンは、ソーシャルメディアはほとんどやらない。とくにショーン・プレストンは知らない人にどう思われるかを気にするタイプで、ブリトニーにも自分の写真を投稿しないでくれとお願いしたのだが聞いてもらえず、それもまた母子の関係に傷をつけたようだ。

ブリトニー・スピアーズのインスタグラムより
ブリトニー・スピアーズのインスタグラムより

 それらの投稿の中でもとりわけティーンの彼らにとって辛かったのは、ヌード写真だった。ふたりの父親であるケビンは、それらの写真について自分が息子たちに謝りたくなったと述べている。そして、「これはきっと彼女なりの自己表現なのだ」とも説明したが、「学校に通うティーンの彼らがどんな気持ちなのか想像もできない」とも言い、息子たちの辛い気持ちを推し測っている。

ブリトニーは毎月490万円の養育費を払ってきた

 だが、実の息子から母親失格とも受け取られそうなことを言われると、ブリトニーは、またもやインスタグラムを通じて反論をしてきた。その長い投稿で、ブリトニーは、わが子への愛は絶対だと強調し、「私が期待されるような母ではないと言われてとても悲しい。いつか直接会って、腹を割って話しましょう」とジェイデンに呼びかけている。「Daily Mail」でケビンがすばらしい父親として描写されることも気に食わなかったようで、彼女は「私は15年も仕事をしていないあなたの父を助けてきたのよ。ちゃんと宿題したかどうかも聞かれないほうが、あなたたちには楽でしょうね。お父さんが毎日マリファナを吸っているのは、15歳と16歳のあなたたちがクールな世代の日常を送る上でプラスになっているのかしらね」「あなたの父親は偽善者。メディアは酷いと言っておきながら、プライベートなことをメディアにしゃべっている」と、元夫をこけおろした。

 ブリトニーのフラストレーションも、理解はできる。ケビンとの離婚以来、ブリトニーがメンタルヘルスや依存症と闘い、裁判所から成人後見人につけることを言い渡されて父の管理下に置かれる中で、息子たちの面倒は圧倒的にケビンが見てきた。その間、ブリトニーはずっと、月2万ドル(約280万円)の養育費を払ってきている。しかも、ケビンがそれでは足りないと3倍を要求してきたことから、2018年には毎月3万5,000ドル(約490万円)に引き上げることで合意がなされた。そのほかにも必要なものはほとんどブリトニーが出してきているという。

 一方、ケビンは2013年に再婚。現在、彼の家には、妻、妻との間に授かったふたりの娘、ショーン・プレストン、ジェイデンが住む。彼らはとても仲が良いようで、ジェイデンはこの家を「安心できる場所」と呼んでいる。ブリトニーにしてみたら、その生活を支えているのは自分なのに、悪者のような言われかたをされて、納得がいかないのだろう。

一時はケビンの単独親権。現在は70/30

 ブリトニーがバックダンサーだったケビンとハリウッドのクラブで出会ったのは、2004年のこと。当時、ケビンにはふたりめの子供を妊娠中の恋人がいたが、この世界的ポップスターのために彼女を捨て、交際3ヶ月後には早くも婚約。その2ヶ月後に電撃結婚をした。翌2005年にショーン・プレストン、2006年にはジェイデンが生まれるも、ジェイデン誕生の2ヶ月後、ブリトニーが離婚を申請する。ケビンにとって、これは寝耳に水だった。

熱愛中だった頃のスピアーズとフェダーライン
熱愛中だった頃のスピアーズとフェダーライン写真:Shutterstock/アフロ

 離婚申請においてブリトニーは単独親権を求めたが、ケビンは共同親権を要求し、結果的に50/50となる。しかし、2007年10月、裁判所は、ブリトニーが薬物やアルコールに依存していることを理由に、ケビンに100%の単独親権を与えた。2008年1月には、ブリトニーがケビンに渡すことを拒否して子供たちと家に篭ったことで警察が呼ばれ、ブリトニーは精神病棟に連れて行かれることに。これがきっかけとなり、父ジェイミーがブリトニーの成人後見人を務めることになる。その後、親権は再び50/50になるも、ジェイミーがショーン・プレストンに暴力を振るったことで、2019年、ケビンは親権の7割を自分が取りたいと主張し、認められた。ジェイミーとケビン、息子たちの関係は今や回復しているが、親権はそのまま70/30で続いている。

 ブリトニーには再び親権を50/50に戻したいという気持ちがあったようだが、子供が18歳になるのが目の前に迫っているだけに、今から動いても同じと諦めたようだ。そんなところへ、親権以前に、息子たちが本音でどう思っているかを知らされることになったのである。

 だが、これだけ家族の争いを見てきたにもかかわらず、ふたりはとても良い子に育ったようで、インタビューの中でも、ジェイデンは直接母に向かって「あなたのことが大好きです。あなたの幸せを祈っています。きっといつか直接お話ししましょう」と語りかけている。ブリトニーがわが子への愛は絶対というのと同じで、彼らも母を愛しているのだ。そしてジェイデンは、関係は修復可能だと言っている。ただし、それは「たくさんの努力をすれば」だ。ブリトニーがインスタグラムとの付き合いを見直すことは、その第一歩になるのではないだろうか。

*記事の一部を修正しました。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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