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「SATC」続編はウィリー・ガーソンの死をどう扱ったのか?そしてファンの反応は?

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(Craig Blankenhorn/ HBO Max)

*この記事には「AND JUST LIKE THAT/セックス・アンド・ザ・シティ 新章」のネタバレが含まれています。

「SEX AND THE CITY」第1シーズンからキャリー(サラ・ジェシカ・パーカー)の親友スタンフォードを演じてきたウィリー・ガーソンがすい臓ガンで亡くなったのは、シリーズ最新作「AND JUST LIKE THAT/セックス・アンド・ザ・シティ 新章」の撮影中だった今年9月。その時、スタンフォードが登場するシーンは、まだ全部撮り終えていなかった。

 10話構成のこのシリーズは、スタンフォードが突然いなくなることをどう扱うのか。その答が、アメリカ時間23日に配信された第4話で明らかになった。

スタンフォードは東京に行った

 夫ビッグ(クリス・ノース)を心臓発作で失ったキャリーは、この回で、夫と暮らした家を売りに出すと決意、ひとり暮らしの時に住んでいたあの懐かしいアパートメントに戻る。彼女は、「どこに納骨するか決めるまで」と言いつつ、ビッグの位牌をお気に入りの靴が並ぶクローゼットに置くのだが、その直後に椅子の上にある黄色の封筒を見つける。

 開けてみると、そこには「親愛なるキャリーへ。君がこの手紙を見つける時、僕は東京にいるでしょう」と書いてあった。その段階で視聴者には手紙の送り主が誰なのかはわからないのだが、玄関のドアがノックされ、スタンフォードの夫アンソニー(マリオ・カントーネ)が現れる。そしてアンソニーから、スタンフォードは彼がマネジメントを手がけるソーシャルメディアの人気タレントのツアーに同行することになったのだと聞かされるのだ。

 キャリーが「どうして直接言わずに手紙にしたのか」と疑問を口にすると、アンソニーは、夫の死という辛いことを体験したばかりのキャリーに、新たな悲しいニュースを対面で伝えることはしたくなかったのだと説明。それに対してキャリーが「友達のことなら、良い知らせでも悪い知らせでも私は聞きたいのに」と言うと、アンソニーはもうひとつの悪いニュースを告げる。スタンフォードはアンソニーにも手紙を残し、そこには「離婚したい」と書いてあったというのだ。アンソニーは、「わけがわからないよ。僕らはすごく幸せだったのに」と、辛い表情を見せる。

ビッグが急死した後、スタンフォードとアンソニーは、「くだらないことで喧嘩するのはやめよう」と、お互いへの愛を確認し合っていた
ビッグが急死した後、スタンフォードとアンソニーは、「くだらないことで喧嘩するのはやめよう」と、お互いへの愛を確認し合っていた

 急遽考えられたこの展開は、一応、つじつまは合っている。第1話では、スタンフォードとアンソニーが喧嘩をし、スタンフォードがキャリーに昔の家の鍵を貸してほしいと言うシーンがあった。つまり、彼は時々、キャリーの昔のアパートメントに出入りをしていたわけで、手紙を置くために家に入るのは可能だったのだ。スタンフォードとアンソニーは、ビッグの突然の死の後、「くだらないことで言い争いをするのはやめよう。僕は君を愛している」と、お互いへの愛をあらためて確認していたことから、スタンフォードが離婚を言い出したのは意外ではある。しかし、その前のふたりの関係を考えれば、「やはりもう限界だったのか」と思えなくもない。

ファンからは不満の声も

 この回のエンドクレジットでは、ガーソンへの追悼が捧げられている。これを見て、本当に彼はいなくなってしまったのだと、ファンはみんな悲しい思いにふけったはずだ。ツイッターにも「見ていて涙が出た」「ウィリー・ガーソンなしで話を続けなくてはならないなんて。スタンフォードは一番お気に入りのキャラクターだったのに」などのコメントが寄せられている。

 しかし、サマンサ(キム・キャトラル)がロンドンに行ってしまったことにした時と同じように、不満の声も出ている。「スタンフォードとアンソニーをこんな目に遭わせるなんて酷い!もっときちんとしてあげるべきだった」「日本に行ってしまったって?それで済ませるのはウィリー・ガーソンに対して酷いよ」「ウィリー・ガーソンが撮影中に死んでしまったのは知っている。それにしてもこのやり方は意味をなさない」などといったものだ。

「ウィリー・ガーソンが死んだことを正直に受け止めないのはよくない。手紙を残して日本に行くなんて、全然スタンフォードらしくない」と、スタンフォードも死んだことにするのが正しかったという意見や、ビッグの葬式には第2話を丸々使ってキャラクターにさよならを言ったのに、これではあまりにガーソンへの敬意がなさすぎるという批判もある。ノースに関しては、最近、過去のレイプ疑惑が浮上しただけに、なおさら「#MeToo」男にやってあげたことをガーソンにはやってあげられないのかという怒りが出ているのだ。

オリジナルのドラマシリーズからずっと、スタンフォードはキャリーの人生で大事な存在だった
オリジナルのドラマシリーズからずっと、スタンフォードはキャリーの人生で大事な存在だった

 だが、シリーズの製作総指揮をずっと務めてきたマイケル・パトリック・キングは、「AND JUST LIKE THAT〜」配信開始前の今月初め、メディアへのインタビューで、スタンフォードを死んだことにはしないと明言していた。「それはチャーミングではない」というのが彼の理由である。

 それでも、スタンフォードに何があったのか、この後の回でもっと説明があるのではないかとの憶測も、ファンの間ではささやかれている。たとえば、東京に行ったことから彼に何か新しいチャンスが訪れたとか、なんらかのことがないと、キャリーの人生にもう彼が出てこないことに納得できない。何よりファンとしては、姿を見られないにしても、スタンフォードが幸せにやっていると知りたいのである。残りあと6話でスタンフォードについてはどのように触れられていくのか、あるいはもう触れられないのか。この後の展開が気になる。

場面写真:Craig Blankenhorn/HBO Max

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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