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「セックス・アンド・ザ・シティ」が復活!内容は?人々の反響は?

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(Courtesy of HBO Max)

*この記事には後半、ネタバレがあります。直前に警告しますので、読みたくない方はそこで読むのをやめてください。

 映画3作目の製作が撮影開始直前に中止されて、4年。「セックス・アンド・ザ・シティ」の新たな続編が、ドラマシリーズとして、ついにアメリカで始まった。タイトルは「And Just Like That...」(邦題は『AND JUST LIKE THAT/セックス・アンド・ザ・シティ新章』になるらしい)。

 オリジナルのドラマシリーズはプレミアムケーブルチャンネルHBOでの放映だったが、今作は1年半ほど前に立ち上がった系列のHBO Maxでの配信。配信開始日の9日、10話構成のうち最初の2話がリリースされると、当然のことながらファンはすぐに視聴。まだ歴史が短いとはいえ、HBO Maxのオリジナルドラマシリーズとしては過去最高のアクセス記録を立ち上げた。その反響は大きく、後述するように、ある企業がコメントを出すまでになっている。ソーシャルメディアにも、さまざまなコメントが見られる。

サマンサ問題はどう取り上げられたか?

 ファンの多くがすでに知っているとおり、今作にはサマンサ(キム・キャトラル)が登場しない。主演でプロデューサーのサラ・ジェシカ・パーカーとキャトラルの間にはオリジナルのドラマの頃から摩擦があり、1作目の映画の企画も、主にキャトラルがギャラに納得しなかったせいで、一度流れている。3作目の映画が中止になったのも、ギリギリになってもキャトラルが出演を渋ったからだった(ただし、キャトラルだけが悪者なのではなく、ドラマ撮影中からキャトラルはパーカーに嫌がらせをされていたという話もある)。

 そういう経緯もあり、「And Just Like That...」の企画は、最初からキャトラルは呼ばない方向で進められた。そして、このドラマは、初回の冒頭で真っ先にそのことを扱っている。最初のシーンの舞台は、レストラン。あいかわらずお洒落に着飾ったキャリー(パーカー)、ミランダ(シンシア・ニクソン)、シャーロット(クリスティン・デイヴィス)を見た知り合いが、サマンサはいないのかと聞くと、シャーロットが「彼女はもう私たちと一緒にはいないの」と答える。ニューヨークはコロナで多くの命を失ったばかりなので、その女性はサマンサが死んだという意味なのかと誤解。3人はあわてて、サマンサは仕事でロンドンに引っ越したのだと説明する。

 サマンサの名前が出たことから彼女を思い出し、キャリーとミランダは、食事を終えた後、サマンサとあいかわらず連絡が取れないことについて話す。電話をしても、テキストメッセージを送っても、サマンサはまったく返事をくれないのだ。そもそも、彼女がロンドンに行ったのは、出版業界の現状を受けて、ライターである自分にもはやパブリシスト(広報担当者)は不要だと、キャリーが彼女を解雇したからだった。プライドの高いサマンサはそのことに怒り、ロンドンでの仕事を見つけて移住したのである。仕事の関係は終わっても友情が終わるとは思わなかった、私はただのATMだったのかと、キャリーは嘆く。

 この説明に対し、あるファンは、「サマンサ・ジョーンズが友達を捨てるなんてあり得ない」とツイート。別のファンは「もっとサマンサに敬意を持ってよ。彼女はあのグループで最も理解がある友人だったのよ。脚本家たちは怠慢!」と怒りをあらわにした。「ヨーロッパを舞台にしたサマンサ・ジョーンズのスピンオフを作って。それが私たちの望むこと」というツイートも見られる。

 ところで、一番大胆なセックスシーンをやっていたサマンサが今回登場しないというニュースが出た時、コメディアンのセス・マイヤーズは、「じゃあタイトルは『セックス・アンド・ザ・シティ』じゃなくて『シティ』ですね」とジョークを言っていた。もちろん、そのせいで今回のタイトルが変えられたわけではないだろうが、ドラマはあのお馴染みのテーマソングで始まることもしない。第1話の初めにバックグラウンドで少し流れる程度だ。

ミランダ、シャーロットの今の生活は

 ミランダはというと、今、弁護士の仕事を離れて人権についての学位を取るべく、学生に戻っている。彼女とスティーブの息子ブレイディもすっかり成長し、彼の部屋に行くと使い捨てのコンドームが床に落ちていたと、ミランダはキャリーとシャーロットに話す。ミランダの教授は黒人女性で、彼女らのやりとりには人種に関することが多く出てくる。1998年に放映開始したオリジナルのドラマシリーズは、後に、「ニューヨークなのに出てくるのは白人ばかり」と批判された。今作ではそれが是正され、この教授のほかにも、有色人種のキャラクターが新登場する。

ミランダは白髪を染めていない。息子ブレイディはこんなに成長した(Craig Blankenhorn/HBO Max)
ミランダは白髪を染めていない。息子ブレイディはこんなに成長した(Craig Blankenhorn/HBO Max)

 シャーロットの娘たちも成長した。年月が経つ中で、犬も代替わりし、今の愛犬の名前はリチャード・バートン。シャーロットはキャリーが出演するポッドキャストをちゃんと聴いてくれているが、ミランダはそうではない。このことについても、ツイッターには「ミランダがポッドキャストを聴いていないなんて信じられない」というコメントが複数ある。また、キャリーが時々ポッドキャストに出演することを仕事にしているという部分にも、反論が。グウィネス・パルトロウがGoopで大成功したように、キャリーも自分のライフスタイルブランドを立ち上げて大儲けしているはずだというのが、ある人の意見だ。

シャーロット(クリスティン・デイヴィス)とふたりの娘たち(Craig Blankenhorn/HBO Max)
シャーロット(クリスティン・デイヴィス)とふたりの娘たち(Craig Blankenhorn/HBO Max)

*ここから先は大きなネタバレがあります。知りたくない方はここでストップしてください。

最も大きな反響を呼んだのは

 だが、最も大きな反響を呼んだのは、第1話の終わりで起こる衝撃的な展開である。キャリーとミスター・ビッグは小旅行に出かける予定だったのだが、シャーロットが娘のピアノのリサイタルに来てほしいとキャリーに懇願したため、彼女は出発をずらしてリサイタルに出席する。その間、ビッグは自宅で自転車のエクササイズをし、その後シャワーを浴びようとしている時に心臓発作を起こしてしまうのだ。帰宅したキャリーは、死の間際にある夫を発見する。視聴者が「まさか、彼は死んでいないよね?」と思っていると、ナレーションが「And just like that...Big died (そしてそんなふうにビッグは死んだのです)」と確認する。

 この筋書きは、驚きではあるが、実はそうでもない。作られなかった映画3作目のストーリーで、ビッグは死ぬことになっていたからだ。まさに今回と同じように、シャワーを浴びていて心臓発作を起こすという筋書きだった。映画は、その後、キャリーが悲しみを乗り越える話が中心となり、そのせいでサマンサにあまりストーリーがないことも理由で、キャトラルは出演に乗らなかったと言われている。とにかく、その時のアイデアが今回のドラマで使われているということだろう。

第1話では、幸せそうなふたりの様子が描かれるのだが...(Craig Blankenhorn/HBO Max)
第1話では、幸せそうなふたりの様子が描かれるのだが...(Craig Blankenhorn/HBO Max)

 ビッグが死ぬ前に使っていたのは、ペロトンというブランドの高級エクササイズ用自転車。この回が放映された直後、ペロトンの株価は11%下がったと報道されている。ペロトンは撮影用に商品を貸し出したが、エクササイズの直後にビッグが死ぬというストーリーは聞かされていなかったという。前後の会話で、ビッグは前から心臓に問題があり、週に1本しか葉巻を吸ってはいけないことになっていることなどが出てくるが、宣伝目的で商品を貸し出したペロトンにとって面白くないのはたしか。ある人は、今頃ペロトンの弁護士がしかめ面で電話をしているはずというコメントを写真付きでツイートした。

 しかし、最も多いのは、ビッグが死んだことへのショックを述べるコメントだ。第2話は葬式についての話で、最初の2話がとにかく暗いことへの不満もある。そんな中、葬式にサマンサが花を送ってきたというくだりは、人々を感動させた。サマンサとの友情は、まだ完全に絶たれていないということだ。もっとも、キャトラルはこのシリーズに最後まで出演しないのだから、4人がまた前のとおりに戻ることはないだろう。この後の回で、サマンサ問題についてはどう触れられていくのだろうか。また、話はどう明るいほうへ向かっていくのだろうか。

 新しい回が配信されるのは、木曜日。これからの数週間、木曜日になるたびに、ファンたちの間で会話が盛り上がるはずだ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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