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ハリウッド女優らが語る、離婚から学んだ自分のこと

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
クリス・プラットとアンナ・ハリス(写真:ロイター/アフロ)

 ハリウッドで最も愛らしいカップルと呼ばれたクリス・プラットとアンナ・ファリスが破局したのは、相手と自分の成功度を比べてしまうことも原因だった。プラットと離婚し、現在は撮影監督のマイケル・バーレットと婚約中のファリスが、自らのポッドキャスト「Unqualified」でそんな過去を明かした。

 その話題が出たのは、22日にリリースされた、グウィネス・パルトロウをゲストに迎えた回。ファリスはまずパルトロウに、「若い時からずっと有名人として生きてきたのはどんな感じなのか」、「(1998年の『恋におちたシェイクスピア』で)オスカーにノミネートされた時、また受賞した時はどんな気持ちだったか」などの質問をしたが、会話もなかばになった頃、「長年の間に男性に対する好みは変わったか」と聞いている。それに対し、パルトロウは、「大きく変わった」と返答。さらに、「若い頃の私は、恋をすることで自分をごまかそうとしていた。自分が解決すべき問題は、恋とは何の関係もないのに。私は長いこと、相手ばかりを見て、自分を見ないようにするのが得意だったの」と語った。クリス・マーティンとの離婚は、「絶対に避けたい」と思ったが、そう決断したおかげで、以前の自分なら想像できなかったほど自分自身について学べたとも、パルトロウは述べている。現在の夫ブラッド・ファルチャックは、どんなことでも面と向かってしっかり話し合おうとする人で、以前のように逃げることなく向き合うようになったことも自分を成長させたと語った。

 そう聞いたファリスは、自分も、元夫たちと話し合う時、「目を合わせることすらできなかった」と告白。さらに、同業者である元夫たちに対し、仕事上の競争意識を捨てきれなかったと述べたのだ。「私は2度結婚したけれど、相手はどちらも役者だったので、自分たちをつい比べてしまった。少なくとも、私はそうしていた。ついでに私はプライドが高くて、弱いところを隠していたとも思う」と、ファリスは語っている。

 ファリスの最初の夫は、1999年の「Love Lane」(日本未公開)で共演したベン・インドラ。当初、ふたりのキャリアは対等だったが、2004年に結婚する頃、ファリスは「最終絶叫計画」(2000)や「ロスト・イン・トランスレーション」(2003)に出演し、インドラより成功するようになっていた。ふたりは2007年に離婚。プラットとは、その年に撮影された映画「Take Me Home Tonight」(日本未公開)で出会い、2008年に結婚。結婚した次の年、プラットはコメディ番組「Parks and Recreation」にレギュラー出演を始めたが、当時はまだファリスのほうが有名だった。しかし、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(2014)でプラットがマーベル映画の主役に抜擢されてから逆転。「ガーディアンズ〜」の後も、「ジュラシック・ワールド」(2015)、「マグニフィセント・セブン」(2016)などアクション映画が続き、ぽっちゃり体型がすっかり影をなくすと、ファリスはメディアに対し、「脂肪をつかめる頃のクリスのほうが好きだった」と漏らすようになった。夫が成功し、ワークアウトやロケで大忙しになったことへの複雑な気持ちを匂わせる言葉だと当時は受け止められていたが、実は、寂しいというだけでなく、嫉妬の気持ちもあったということである。そんな自分を省みて、ファリスは、「過去の経験を通して、自分が、学び、成長できたことを願う」と語っている。

「そのうち何が自分のせいだったのかを見極める」

 離婚という辛い経験を通じて自分を見つめ直したハリウッド女優は、ほかにもいる。ジェニファー・ロペスは、死ぬまで一緒だと思っていた3度目の夫マーク・アンソニーとの離婚に「絶望を感じた」と、2016年、「People」「Entertainment Weekly」のエディトリアル・ディレクターとのインタビューで述べた。だが、「自分はその結婚を守りたいがために、自分自身を見失っていると思うことがあった」とも振り返っている。離婚したことで「元気が出た」と言い、その難しい決断を後悔していないことも明かした。彼女は現在、元ヤンキースの人気選手アレックス・ロドリゲスと婚約中。最近、婚約解消の噂も出たが、カップルは否定、「問題に向き合っているところです」とメディアに述べている。離婚経験者のふたりは、見つめ合うべき部分がわかっており、そこをしっかり見つめようとしているのかもしれない。

 23歳でライアン・フィリップと結婚し、7年後に破局を発表したリース・ウィザスプーンは、2009年、アメリカ版「ELLE」のインタビューで、「時間が経てば楽になるよと言われるけれど、到底そうとは思えない」と、離婚がいかに屈辱的で孤独かを述べた。なぜそんな結果になったかについてはいろんなことを責めたが、「そのうち何が自分の責任なのかを見極めないといけない。それは辛い作業だけれども、そこから実体験にもとづく何かを学ばないと」と、彼女は語っている。ウィザスプーンは2011年、タレントエージェントのジム・トスと再婚した。

 一方、ジェーン・フォンダは、2018年の筆者とのインタビューで、「自分はまだ学ぶことができていない」と語っている。当時北米公開を迎えていた「また、あなたとブッククラブで」(2018)で、フォンダは、恋はたくさんしてきても、真剣な交際に向き合えない女性ヴィヴィアンを演じたのだが、彼女のその部分には自分と共通するものがあるというのだ。

「その人がどう育ったかにもよるでしょう。両親が愛し合っていて、家庭が幸せで、子供だった自分が愛されていると感じていたら、愛はおそらく簡単なこと。人と付き合うのも簡単なのだと思う。でも、幼少期にそういう体験をしていない人にとっては、難しいことになりえるの。私の父は5回も結婚をした。だから、恋愛は私にとって容易ではなかったのよ。私自身も、3回も結婚してきたけれど、学び終えていないと感じるわ」。

 現在84歳のフォンダは、4年前、8年連れ添ったパートナーと別れている。「愛」と「自分自身」は、人にとって永遠のテーマなのだ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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