ハリウッドのセクハラ:今度はタランティーノ。15年前のインタビューは、彼のキャリアを陥れるのか

セクハラ加害者ではないが、15年前の発言で論議を呼んでいるタランティーノ(写真:Shutterstock/アフロ)

 一番いけないのは、言うまでもなくセクハラ加害者。彼らに慈悲の余地はない。だが、次に、彼らを多少なりとも弁護するような男たちが出てくると、その人たちも責められるようになってきた。「#MeToo」運動は支持するが、レイプ犯罪者とお尻を触った情けない男を一緒にするのは間違っていると述べ、大バッシングを受けたマット・デイモンがそのひとり(ハリウッドのセクハラ騒動:マット・デイモンの発言に批判殺到。「男は何も言わないべき」なのか?)。先月は、リーアム・ニーソンも、ダスティン・ホフマンをかばうような発言をして非難されている。

 そして今度は、15年前のコメントがやり玉に挙げられた。発言の主は、つい最近まで、この問題に関してむしろ好意的に受け止められていたクエンティン・タランティーノである。

 タランティーノは、ハーベイ・ワインスタインから最も恩恵をいただいた人のひとりだ。だが、昨年秋、ワインスタインの30年ほどにも及ぶ性犯罪行為が明らかになった時、ジョージ・クルーニーやデイモンなど、ワインスタインにキャリアの借りを持つほかの男たちが「まったく知らなかった」で通したのに対し、タランティーノは「知っていた」と早々と認め、何もしなかったことに後悔していると語った。ワインスタインの告発者のひとりであるミラ・ソルヴィーノが、被害に遭った当時タランティーノとつきあっており、彼女から話を聞いていたのだ。彼がこの告白をした時、「知っていたと認めるだけでも偉い」と受け止めた人は少なくない(ただし、大物プロデューサー、ジャド・アパトーは、それまで知らぬ顔で通してきたタランティーノを批判している)。

 しかし、今週、状況は大きく変わった。タランティーノが2003年に出演したハワード・スターンのインタビュー番組での発言が、今になって再浮上したのである。このインタビューで、タランティーノは、13歳の少女をレイプした罪に問われ、有罪を認めながら国外逃亡したロマン・ポランスキーを、弁護するだけでなく、その少女はそれを望んでいたとまで言っているのだ。

 このインタビューが行われたのは、ポランスキーが「戦場のピアニスト」でオスカー監督賞を取った後。彼の受賞を「すばらしい」と言うタランティーノは、彼の罪はレイプではなく、未成年と性交渉をもったことだと述べた。共同ホストのロビン・クウィバーが、「彼女が望んでいなかった性交渉をね」と反論すると、タランティーノは、「違うよ。彼女もやりたかったんだよ」と答えている。これには、毒舌で有名なスターンですら絶句をした。ゲイマーはポランスキーから酒とドラッグを飲まされていたと指摘されても、タランティーノは「レイプじゃない。彼女は13歳でも遊び女だから」と主張。スターンに、どうしてポランスキーは自分と同じような年齢の女性を相手にしないのかと聞かれると、「彼は少女が好きなんだよ」と弁護をしている。

 これだけ長々とポランスキーをかばう発言をする一方で、タランティーノは、「彼に会ったのは一度だけで、友達でもなんでもない」とも言った。親しくもない人のために語った余計な言葉が、今、彼のキャリアを脅かすことになったのだ。

 このインタビュー映像は、このニュースが大きな注目を集めた後、著作権を理由にYouTubeから削除されている。

お約束の"謝罪"には、どこまで効果があるのか

「#MeToo」の手順によると、次は責められた人の謝罪だ。デイモンはもちろん、むしろ同情を集めているアジズ・アンサリですら(ハリウッドのセクハラ騒動:ここまで来ると便乗?行き過ぎ「#MeToo」に女性からも批判)、すぐに謝罪コメントを発表している。タランティーノも、西海岸時間8日に、次のような謝罪声明を発表した。

サマンサ・ゲイマーさんに対してなされた犯罪について、私が「ハワード・スターン・ショー」で横柄な憶測をしたことを、ここで公に謝罪させていただきます。15年経った今、自分がいかに間違っていたかを認識しています。ゲイマーさんは、ロマン・ポランスキーにレイプされたのです。ハワードがポランスキーのことを持ち出してきた時、私は、事もあろうに、挑発的であろうとするがため、悪魔の味方をしてしまいました。ゲイマーさんのお気持ちを配慮していませんでした。そのことに、心よりお詫びを申し上げます。ゲイマーさん、私は無知で無神経で、何より間違っていました。サマンサ、ごめんなさい。

 この謝罪にどれだけ効果があるかは、今のところ不明だ。そもそも、この古いインタビューが持ち出されてきたのは、先週末にユマ・サーマンが「New York Times」に対して自分もワインスタインの被害者だと告白し、その中でタランティーノの話も出てきたせいなのである。タランティーノは彼女にセクハラをしたわけではないが、彼が監督する「キル・ビル」の撮影中に危険なスタントを強要され、ケガをしたのだと明かした。さらに、彼は、シーンのためと、彼女の首を絞めて唾を吐きかけたという。製作現場での安全管理がこれまで以上に重視され、「#MeToo」で女性の権利への声が高まる中、この話が彼に与えたダメージは大きかった。

 さらに、彼の次の作品は、偶然にも、ポランスキーと関係があるのである。

 セクハラ暴露によるワインスタインの失脚で、ザ・ワインスタイン・カンパニーを離れてほかのスタジオに競売をかけた次回作は、1969年にL.A.で起きた殺人事件を扱うもの。被害者で女優のシャロン・テートは、当時のポランスキーの妻だ。この殺人はチャールズ・マンソンが指示してやらせたもので、マンソンの狙いは、ポランスキー宅にかつて住んでいた人だった。この家の住人が変わっていることをマンソンは知らず、テートは間違って殺されている。この時、ポランスキーはヨーロッパに行っており、不在だった。

 マンソンは、ハリウッドのセクハラ騒動が巻き起こってまもない昨年11月に83歳で死去し、タランティーノが各スタジオに売り込んだ頃は、ますますタイムリーと感じさせるプロジェクトだった。製作配給権をソニーが獲得してからは、事件の50周年に当たる2019年に公開が決まり、レオナルド・ディカプリオやマーゴット・ロビーが出演を検討している。

 しかし、この展開は、誰も予測しなかったことだ。「#MeToo」が過熱する中、ポランスキーやウディ・アレンはどうなのかという話題はよく聞かれるようになっており、アレンの次回作の北米公開は危ういのではないかとのささやきも出た(アレンの『A Rainy Day in New York』の北米公開権をもつのはアマゾン・スタジオズで、まさにセクハラ問題でトップを失ったところである)。そんな中でも、この映画の犠牲者の夫がポランスキーであるということをあえて指摘する声は聞かれなかったのだが、この一連の出来事は、その関連性を浮き彫りにしてしまったのである。

10本で映画作りをやめると宣言しているタランティーノの、9本目

「#MeToo」で責められている人とはとりあえず距離を置くという風潮になっている今、ディカプリオやロビーの出演に対する気持ちにも影響があるかもしれない。この映画の予算は1億ドルと、R指定のシリアスなドラマとしてはかなり高額で、それも理由で競売に参加する会社が限られたという背景があるのだが、こんな厄介なお荷物があったとなれば、話が違うということに十分なり得る。やはりソニーが配給するリドリー・スコット監督の「All the Money in the World」が、セクハラ騒動を受けて、北米公開直前にケビン・スペイシーが演じた役をクリストファー・プラマーで撮影し直すという大胆なことをし、褒められたばかりでもあるだけに、さらに微妙だ(プラマーはオスカーにノミネートもされた)。

 一方で、タランティーノが業界で尊敬され、人気のある人だというのも事実である。サーマンの告白を受け、「イングロリアス・バスターズ」に出演したダイアン・クルーガーは、タランティーノとの撮影は「純粋に楽しかった。彼は私に敬意を持って接してくれた」とインスタグラムを通じて語った。すでに一度タランティーノと組んでいるディカプリオも、彼との仕事が満足の行くものだったからこそ、またやろうと思っているのだろう。

 タランティーノは、以前から、10本作ったら映画作りをやめると宣言してきた。「キル・ビル」を1本に数えると、このマンソンの映画は、9本目に当たる。ファンが、たっぷりの期待と、カウントダウンへのさみしさ、両方を持って待ち望んでいる最後の2本。その運命は、今や、15年前の、忘れ去られていたインタビューに身を任せることになってしまった。そんなことを、誰が想像しただろうか。ワインスタインの行動について知っていたと認めたタランティーノも、セクハラをしていない自分に飛び火があるとは、その時、考えもしなかったはずである。すべての始まりであるワインスタインの暴露記事から4ヶ月。ハリウッドのセクハラ騒動は、落ち着くどころか、ますます大きな黒い波となって、あらゆる人々を飲み込んでいっている。