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20歳の時、これらのハリウッドセレブはどこで何をしていたのだろうか

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
「ワンダーウーマン」のガル・ガドットは、20歳の時、徴兵制度のため従軍していた(写真:Shutterstock/アフロ)

 8日(祝)は、成人の日。日本の20歳の若者たちが、正式に大人への扉を開ける日だ。彼らはきっと、未来への夢と希望にときめき、同時に少しの不安も感じていることだろう。

 アメリカには成人式も成人の日の祝日もなく、選挙権が与えられるのはずっと前から18歳だし、お酒やタバコが許されるのは21歳で、20歳という年齢に、日本と同じほど特別の意味はない。だが、新しい代に突入するこの年齢は、明らかに大きな節目だ。

 今、活躍するハリウッドセレブたちは、20歳の時、どこで何をしていたのだろう?大学あるいはドラマスクールで演技を学んでいたというパターンが最も普通だが、そうでない人たちの例を、いくつか挙げてみたいと思う。この人たちの体験を聞いて、若者たちは、これから始まる大人としての人生には限りない可能性があるのだと感じてくれるだろうか。

「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」のアダム・ドライバー(Walt Disney Studios)
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」のアダム・ドライバー(Walt Disney Studios)

アダム・ドライバー(34)とガル・ガドット(32) 軍隊に所属中

「スター・ウォーズ」のカイロ・レンとワンダーウーマンには、20歳の時、従軍していたという奇妙な共通点がある。アメリカ人のドライバーは自ら志願したが、イスラエル人のガドットは国民の義務である徴兵制度のせいだ。

 ドライバーが高校を卒業して間もない18歳で志願を決めたきっかけは、9/11。「あれは大きな出来事だった。僕の年齢の人たちのほとんどは、愛国心を感じ、自分も何かしなければと思ったと思うよ。軍隊では、人と協力することの大切さを学ばせてもらった。今、僕はそれを演技に適用している」と、ドライバーは語っている。軍隊には3年弱所属し、その後はインディアナ大学を経て名門ジュリアードで演技を学んだ。

 18歳でミス・イスラエルに選ばれ、20歳で従軍したガドットも、2年の義務を果たした後、大学に入学。同時にモデルとしても活躍し始め、24歳の誕生日を目前にした2009年4月、「ワイルド・スピードMAX」で女優デビューを果たした。初主演となった昨年の「ワンダーウーマン」は、全世界で8億2,200万ドルを売り上げる爆発的ヒットとなっている。

ジム・キャリー(55) スタンドアップコメディアンとして成功の第一歩

 34歳の時、「ケーブルガイ」で史上初めて2,000万ドル(約22億6,000万円)のギャラを獲得する俳優となったキャリーは、まさに努力の人だ。キャリーがまだ10代の頃、父が無職になったため、キャリーも家族のために夜間清掃員の仕事をするようになり、高校を中退しているのである。

「会社の経営者が代わったせいで、父は51歳にして仕事を失ったんだよ。僕らはすべてを無くし、車で寝泊まりした。もともと父は、トロントのオーケストラでサクソフォンを演奏していたんだ。家族のため、安定した仕事を選んだのに、そんなはめになったのさ。どうせどうなるかわからないなら、好きな仕事をしたほうがいいんだと、僕はその時学んだ」と、キャリーは語っている。

 車で寝泊まりする時期をなんとか乗り越えると、キャリーはトロントのコメディクラブでスタンドアップをやり始めた。もっと大きなチャンスを狙ってL.A.に引っ越したのは、19歳の時。L.A.の老舗コメディクラブ、The Comedy Storeのレギュラーになり、20歳でスタンドアップの中継番組「An Evening at the Improv」に出演。そして翌年には、L.A.のスタンドアップコメディアンの究極の夢である、ジョニー・カーソンの大人気深夜番組「The Tonight Show」にゲスト出演を果たすのである。

 昨年放映が始まったキャリー製作の「I’m Dying Up Here」は、70年代のL.A.のコメディクラブを舞台にしたドラマで、時代は若干キャリーの頃より前ではあるが、彼自身の経験がくみとれて興味深い。第1話では、「The Tonight Show」にゲスト出演を果たした上、カーソンに気に入られてカウチに座れと招待されるという究極の夢をかなえたコメディアンが、「これより上には行けないから」と自殺を図るシーンが出てくる。しかし、キャリーはそこからますます大きくなり、世界的スターへと成長していったのだ。

ジム・キャリーがエグゼクティブ・プロデューサーを務めるテレビドラマ「I'm Dying Up Here」は、70年代のL.A.のスタンドアップコメディアンたちの実情を描く(Showtime)
ジム・キャリーがエグゼクティブ・プロデューサーを務めるテレビドラマ「I'm Dying Up Here」は、70年代のL.A.のスタンドアップコメディアンたちの実情を描く(Showtime)

チャニング・テイタム(37) 男性ストリッパーからファッションモデルへ

 テイタムが主演とプロデューサーを兼任する男性ストリッパーの映画「マジック・マイク」は、大ヒットして続編もできた。あの話は、テイタム自身の経験に想を得たものだ。

「18歳か19歳、大学を中退したばかりの頃だよ。正直言って、僕はその頃、自分を見失っていたんだ。自分が将来何をしたいのか、全然わからなかった。そうする合間にもいくつか小さな仕事をやるようになり、そのひとつがこれだったのさ。何か狂ったことをやってみたい気分だったんだよね。あれは間違いなく狂った世界だった。映画のセリフにも出てくるけれど、毎晩がパーティ。女性がいて、お金がある。あれをやったことがある男たちは必ず、あの頃は自分にとって一番楽しい時期だったと言うはずだよ。危険だからこそ魅力なんだ。眠れる獣の近くにこっそりと近づいて行き、そっと触ろうとするような感じ。そいつがもし起きたら大変なことになる。でも近づかずにいられない」と、テイタムは当時を振り返っている。

 そんな彼に足を洗うきっかけが訪れたのが、20歳の時だった。マイアミの街角で、モデルにスカウトされたのだ。そこから彼はリッキー・マーティンのミュージックビデオに出演したり、エンポリオ・アルマーニ、アバクロンビー&フィッチの広告に出たりするようになる。映画デビューは2005年の「コーチ・カーター」。25歳の時だ。翌2006年の「ステップ・アップ」では初の主演を果たした。同作品で恋人役を演じたジェナ・ディーワンとは2009年に結婚し、一児をもうけている。

最新作「Battle of the Sexes」でテニス選手ビリー・ジーン・キングを演じるエマ・ストーン(Fox Searchlight)
最新作「Battle of the Sexes」でテニス選手ビリー・ジーン・キングを演じるエマ・ストーン(Fox Searchlight)

エマ・ストーン(29) 初の主演映画を撮影中

 アリゾナ州スコッツデールに育ったストーンは、15歳の時に女優を目指すべくL.A.に引っ越した。パワーポイントを使って自分が女優になるメリットを両親に説明し、説き伏せた話は有名だが、それを許してもらえる経済的な余裕がある家庭環境だったのは幸運だったと認めている。

 とは言え、役がもらえるかどうかは話が別。L.A.のドッグベーカリーなどでバイトをしつつ、テレビ番組の新シーズンには次々にオーディションを受けたが、ことごとく落ちた。だが、彼女のことを覚えていたキャスティングディレクターがコメディ「Superbad(日本未公開)」の小さな役を与えてくれて、映画デビューが実現。2年後の2009年には、ホラーコメディ「ゾンビランド」が公開された。スマッシュヒットしたこの映画で、ストーンは重要な役を演じており、若手のコメディ女優としての才覚をはっきり現すことになる。

 その翌年には、初の主演作「Easy A(日本未公開)」が公開される。今作の撮影をしていた時、ストーンは20歳だった。「20歳くらいまで成功しなかったのは、むしろラッキーだったと思う。15歳でL.A.に出てきてすぐ人気テレビ番組に出たりしたら、自分はどうなっていたかなと思うわ。わからないけれどね。とにかく、起こるべき時にそれは訪れたと、私は考えているの」と、「アメイジング・スパイダーマン」のヒロインを手に入れた頃、ストーンは語っている。

 その後の彼女の成功は、ご存知のとおり。「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」では初めてのオスカー候補入りを果たし、昨年は「ラ・ラ・ランド」で主演女優賞を受賞。昨年北米公開された「Battle of the Sexes(日本未公開)」では、男女平等のために立ち上がった伝説のテニス選手ビリー・ジーン・キングを演じ、これまた高い評価を得ている。

 昨年はまた、世界で最も稼ぐ女優の1位にもなった。ドッグベーカリーで犬用のクッキーを焼くのに失敗して文句を言われていた日は、遠い昔のことである。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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