「メアリと魔女の花」がアメリカで限定公開に。オスカー候補の可能性は?

「L.A. Times」は全面スペースで批評を掲載

「メアリと魔女の花」が、現地時間1日(金)、アメリカで、とりあえず好調なスタートを切った。批評家の評価を“トマトメーター”で統計化するRottentomatoes.comでは、今のところ、なんと100%だ。

「とりあえず」「今のところ」としたのは、L.A.1館での限定公開だから。全米公開は来年1月18日で、Rottentomatoes.comが調べた批評も、たった6人分なのである。全米公開になれば、もっとあちこちの新聞やサイトに批評が掲載され、それにともなって数字も下がっていくことが予測されるが、一時期だけでも100%を達成したのは、特筆すべきことだ。「L.A. Times」紙は、全面のスペースを割いて今作を紹介してもいる。執筆したのは、同紙で2番手の批評家ジャスティン・チャンだ。

「気品と機知、そして魔法も少し」という見出しをもつこの記事は、「スタジオジブリのベテランで、才能豊かな米林宏昌監督のアニメ『メアリと魔女の花』は、無理のない形で人々を魅了する。ずっと、ではないものの、魔法が自由に流れてくるのだ」という文章で始まる。続いて、チャンは、米林氏が「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」を監督した人であること、今作はジブリではなく、2015年に創設されたスタジオポノックの製作であることに触れ、「宮崎駿のジブリ作品『千と千尋の神隠し』ほどのビジュアル面の奥深さはないが、温かい感情と、親しみやすい絵は、同社の誇る伝統を引き継いでいると言える」と述べた。おおまかなストーリーを説明した後は、「才能の劣るアニメーターたちにやらせたら、ありがちな映画になってしまうかもしれない」と、柔らかい色を使った優しい絵柄を絶賛。「気品、機知、自然な知性をもって、米林の映画はあなたを持ち上げ、やさしく降ろしてくれる。戻してくれた世界は、前よりもちょっとだけ、魔法が存在しそうに見えるはずだ」という言葉で、記事を締めくくった。

「The Hollywood Reporter」は、ひと足早く、先月のAFIフェストで上映された時に、批評を掲載している。批評家ジャスティン・ロウは、出だしで、「オスカー候補入りしたこともある米林宏昌の『メアリと魔法の花』は、前より明るい作風で、子供向き」と述べる。後半でも再び、ミステリアスでもっと大人向きだった「思い出のマーニー」とは違う作風だと語り、一見したところ「魔女の宅急便」に近いが、テーマの部分では「千と千尋〜」につながるものがあると指摘。「原作者メアリー・スチュワートが意図した、少女の心の内面の動きという部分を、米林と坂口理子は、女性のエンパワメントという、アニメや漫画で定番のテーマに注意深く融合させた」と書いた。ロウはまた、英語版の声優を務めた12歳のイギリス人女優ルビー・バーンヒル、マダム・マンブルチューク役のケイト・ウィンスレット、ドクター・デイ役のジム・ブロードベントの演技にも、賞賛を贈っている。

今年から、アニメ部門の投票ルールが変更に

 本格的な全米公開を前に、1館だけの限定公開に踏み切ったのが、オスカーを狙うためであることは、明白だ。オスカーに候補入りするためには、12月31日までに、最低1週間、一般観客が入れる劇場で作品を上映しなければならないのである。

 来年のオスカーで、アニメ部門の候補として検討される作品は、26本。昨年より1本少ないが、今年からアニメ部門の投票ルールが変わった。以前は、その部門専門の、限られた会員で構成される委員会がノミネーション作品を選び、最後の投票は全員が行うという形だったのだが、今年から、対象の作品を全部見たと言えば、ノミネーションの投票から誰でも参加できるようになったのだ。ただし、以前のように決められた試写に出席しなくても、スタジオから送られてくるスクリーナー(DVD)で見ても良いので、本当にその人が全部を見たのかどうかは、わからない。

 この新しいルールで誰が得して、誰が損するのかは不明だ。アニメの専門ではない人にまで広げて投票が行われると、ピクサーなど、メジャーなCGアニメ作品がより有利になるのではという説もあれば、高尚なアカデミーは伝統的な手描きやストップモーションアニメを好むという説もある。

 それ以前にも、「メアリ〜」には身近なところにライバルがいる。「この世界の片隅に」「聲の形」「ひるね姫〜知らないワタシの物語〜」も、対象の26本に含まれるのだ。 業界サイトでは、すでに「聲の形」への絶賛コメントがいくつか見受けられる。一方で、最近発表されたニューヨーク映画批評家サークル賞と、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞では、いずれもピクサーの「リメンバー・ミー」が最優秀アニメに選ばれた。アワードシーズンは、まだ始まったばかり。年末年始休暇を使って、この26本を全部見た人たちが、今年の日本からの作品をどう評価するのか、注目される。