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わが子をダメ人間にしないため、セレブが決めた遺産配分のあれこれ

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
子供たちが一度に大金を手にしないよう、ブリトニー・スピアーズは遺言を書き換える(写真:Shutterstock/アフロ)

 若いうちからお金を与えすぎたら、その子のためにならない。35歳になって、ブリトニー・スピアーズも、そう気づいたようだ。長男が生まれる前に作った遺言書の内容を書き換えたいとの申請を、最近、裁判所に提出したのである。

 スピアーズの遺産は、推定2億ドル(約218億円)。自分が死んだ時に、遺産をすべてふたりの息子(現在11歳と10歳)に残すのに変わりはないが、新しい遺言書では、いつそれを受け取れるのかが明記されるとのことである。 18歳で一定金額、25歳でもっともらうことが許され、全額に手をつけられるのは35歳になってからということだ。

 同じような懸念は、フィリップ・シーモア・ホフマンももっていた。2014年2月、ドラッグの過剰摂取で亡くなった時に明らかになった遺言の内容によると、彼は遺産の全額の受取人に、長年のパートナーであるマリアン・オドネルを指名し、子供たちには何も残していない。オドネルは彼の3人の子供の母親なので、当然、最終的には子供たちに渡ることになるのだが、彼女にちゃんと管理をしてもらいたいというのが彼の希望だったようだ。長男が生まれた後の2004年に書かれたその遺書には、子供たちをニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコなど文化に触れられる大都市に住ませるようにとの記述もある。亡くなった時、ホフマンには3,500万ドル(約38億円)の資産があった。

  意外にも、パリス・ヒルトンもたいした相続は期待できない。彼女の祖父で、資産25億ドル(約2,700億円)のバロン・ヒルトン(89)は、自分が死んだら遺産の97%をコンラッド・N・ヒルトン基金に寄付すると、10年前に発表しているのだ。彼には8人の子供と23人の孫がいるため、パリスの取り分は、税金を引くと500万ドル(約5億5,000万円)程度になる。バロンの父コンラッド・ニコルソン・ヒルトンもまったく同じ遺産の残し方をしたとのことで、小さい時から覚悟はさせられていたかもしれない。

  ミリオネア一族に生まれたアンダーソン・クーパーも、ラジオのインタビューで、「母はいつも、私が死んでも一銭ももらえないからね、と僕に言った」と明かしている。自分で稼いでいない金は災いのもとと信じるクーパーは、 それでかまわないと納得していたそうだ。CNNの人気キャスターである彼は、現在、自分の力で年収1,100万ドル(約12億円)を稼いでいる。

 しかし、誰もが聞き分けがいいわけではない。

 テレビ界の王アーロン・スペリングが5億ドル(約545億円)の遺産を残して死んだ時、娘トリには80万ドル(約8,723万円)だけが渡され、残りは母キャンディが管理している。そのことをめぐって、母娘の間には頻繁に争いが起こってきた。キャンディは、あるインタビューで、「そうしないと、娘はひとつの店で一度に5万ドルも6万ドルも使ってしまう」と語ったが、実際、止まらない浪費のせいで、今、トリ一家の負債は、深刻な状態に陥っているのだ。ここ1年の間に、未払い金をめぐってアメリカンエクスプレスに訴訟されること2回。所得税も、多額の未納金がある。トリの夫ディーン・マクダーモットが、前妻との間にもうけた子供に支払うべき養育費もたまっている。なのに、まだ月の家賃が9,500ドル(約104万円)もする一軒家に住み、子供の誕生日パーティに4万ドル(約436万円)も使ったのを知って、マクダーモットの前妻は、今年3月、訴訟を起こした。とりあえずお金を支払うことで、マクダーモットは刑務所入りを逃れている。

 2013年に出版した自伝本の中で、トリは「私は誰も想像できないくらい大金持ちの環境に育った。シンプルな生活をしようと思っても、高いものが好きという部分はなかなか変えられない」と、浪費癖を認めている。遺言書よりずっと前から手を打ったほうがいいとの警告だろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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