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イタリア:五つ星運動と同盟の極右連立政権にみる欧州の苦悩 移民問題であなたは人権を語る資格があるか

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家
五つ星運動の創設者の一人カサレッジオ。2014年欧州議会選挙で支持者に手を振る(写真:ロイター/アフロ)

イタリアで2つの政党「五つ星運動」と「同盟(リーグ)」が連立政権を樹立することになった。

欧州の動きについては、ちょっとやそっとのことでは驚かなくなっているのだが、久々にびっくりした。まさか本当に実現するとは。

五つ星運動はとてもわかりにくい政党で、「UFO(未確認飛行物体)」と呼ばれたものだ。しかし左派だったはずだ。移民排斥にはくみさない政党だったはずだ。それが極右の移民追放を訴える「同盟(リーグ)」党と連立政権・・・。

「同盟(リーグ)」党は、「北部同盟」という名前を変えて「同盟」だけにして全国政党を目指してから、ややマイルドな極右にはなった。しかし、イタリアに定住した50万人の非正規移民を日常的に追い出すという政策を示していた。これに五つ星運動は同意したのだ。

欧州は今、重大な二つの問いを突きつけられている。

そのうちの一つが、移民の問題だ。

「あなたは人権とか、ヒューマニズムとか、人間は平等とか言っている。本当にそう言えるか。あの移民の大群を目の前にして、自分の街に、言葉も通じない宗教も文化も衛生観念も異なる貧しい人たちをあちこちに目にするようになってーーーそれでも人権を唱えられるか、ヒューマニズムを語れるか、同じ人間として彼らを助けられるか」という、人間としての深刻な問いである。

筆者には、五つ星運動はこの問いに、最後の最後に負けてしまったように見える。

「五つ星運動」を見ると、多くのイタリア人が何を望んでいるのかがわかるように思える。そして変遷を見ていくと、どのように彼らの気持ちが変わっていったのかも、見て取れるようだ。

彼らの苦悩は、欧州の苦痛と心の痛みに思えてならない。

あのすさまじい地中海ルートの移民流入。2014年までにイタリアに流入した移民は60万人とも80万人とも言われている。島根県や福井県あたりの人口に相当する。

このような状況で、移民排斥の政権ができるのは、無理もない。むしろ今まで持ちこたえて頑張ってこられたのがすごいくらいだ。昔から「人種差別主義者とは程遠い」という定評のあるイタリア人だったからこそと思う。

でも、筆者は悲しい。

前編の今回は、欧州大陸と移民問題について書こうと思う。

ブログから始まった五つ星運動

それでは五つ星運動とは一体どういう政党なのだろうか。

この政党は2009年、たいへん有名な芸人(ユーモリスト)であるベッペ・グリッロ(ジェノバ生まれ)と、全く知られていないコンピューター技術者でIT企業幹部であるジャンロベルト・カサレッジオ(ミラノ生まれ)の二人によって設立された。

当時グリッロは、お偉方を攻撃しすぎて、テレビ業界を干されていた(ベルルスコーニはイタリアのメディア王)。そんな彼を説得してブログを始めさせたのがカサレッジオだった。そしてネット技術を使ってファンクラブの地元支部をつくるように勧めた。これが運動の発端である。2005年のことだ。

反エリートと反汚職の社会運動から始まった活動の最初の大成功は、2007年9月に行われた「V-Day」である(VとはVaffanculo、英語に訳すとFuck you)。

イタリア全土で行われ、30万人以上の署名が集まった。クリーンな議会を目指すために、司法によって告発された者が議会へ参入するのを禁止しろ、そして議員は最長2期に制限しろという訴えだった。

カサレッジオは2016年に亡くなるまで、五つ星の「頭脳」だったと言われる(時にはメディアに「グル」とすら呼ばれた)。

インターネットとSNSは、常にこの党の中心的な役割を果たしてきた。本部というものをもたず、すべての提案は活動家によってネット投票で決められてきた。

2009年10月にも「V-Day」は開催された。アッシジの聖フランチェスコの日ーーイタリアでは非常に象徴的なシンボルであるーーを選んで、「五つ星運動」は生まれた。

五つの星が意味するもの

それでは「五つ星」とは何を意味するのか。

5つの優先事項、1)水道事業を公共事業に戻す(イタリアでは民営化された)、2)ゴミ廃棄物ゼロ、3)交通機関は公共、4)再生可能エネルギー、5)無料のWI-FIである。

さらに「5」はローマ数字で「V」であり、これは前述のV-Dayの「V」と同じであり、設立の契機となったイベントにつながっている。

彼らは「政党」と自称するのを好まない。あくまで「運動」だという。

ネットによる直接投票(直接民主主義)を信奉し、他の政党との共闘を拒否して独立を重視してきた。

これらを見ればわかるように、非常に左派色の強い内容である。そしてリベラルさがあった。

選挙で急激な躍進をとげていく

2013年の総選挙では、下院で全投票数では1位、議席数では左派の民主党に次ぐ2位の大勝利を収めた。

しかし彼らは、どの政権とも連立を組むことを拒否、政権をとらなかったのだ。

この背景には、イタリアの複雑な政治制度があるのだが、何よりも彼らの運動が、既存の政治のあり方に対する反対・プロテストだったことにある。

彼らがUFOと呼ばれたのは、このような態度だったのに加えて、どのような思想なのか不明なこともあった。

このUFOぶりが欧州レベルであらわになったのが、2014年の欧州選挙である。

EUを舞台に問われた姿勢

ここでも五つ星は、民主党に次いで第2位で、17欧州議席を獲得した。

欧州議会には、欧州政党がある。各国で選出された欧州議員が、国を超えて集まってつくるものだ。例えば、ドイツ、フランス、フィンランド、スウェーデンなどにある緑の党に所属する議員が、欧州議会選挙で当選する。彼らが集まって、欧州議会では「欧州緑グループ・欧州自由連盟」という欧州政党をつくる、という具合である。

各国の主要政党は、欧州議会でどこの欧州政党に属するかを見ると、だいたいカラーがわかるという面白さがある。

五つ星運動の迷走ぶりは、いかにこの党のカテゴリー分けが難しいかを、欧州レベルでさらすことになった。

五つ星はまず最初に「欧州緑グループ・欧州自由連盟」に入りたがった。ここは左派である。しかし断られた。次に自由主義派で中道リベラルの「欧州自由民主同盟」と交渉したが、合意に至らなかった。

2つの欧州政党に入れなかったのは、この2つが親EUだからである。

五つ星は、反EUというほどではなかった。しかし反ユーロ通貨の立場であり「使い続けるかの国民投票を行うべき」と主張し、EUには懐疑的な立場をとっていた。

これらの主張が、2つの欧州政党の基本方針と合わなかったのだ。

どこにも入れないので困った五つ星運動は、3つの選択肢を示してネット投票を行った結果、選ばれたのはなんと、英国の極右政党UKIPが率いる欧州政党だった(他の2つは、英国保守党が率いる欧州政党と、無所属)

UKIPは、移民排斥とEU離脱を唱える極右政党である。対して五つ星運動は、この時点では反移民、反イスラムの色彩はかなり薄かったのは確かだ。そのために、この欧州政党は、最も訳がわからない理解しがたいものになった。

なぜこうなったのか、3つの選択肢のネット投票で、投票率が低かったという話はあったが、欧州で驚きをもって報じられた。

ただ、「反ユーロ通貨」という点では、UKIPと五つ星は意見が一致していた(のちにブレグジットが決まると、グリッロは再び他の欧州政党に入ろうとしたが断られた。今でも結局UKIPと一緒にいる。彼のEU批判のトーンは下がったということだ)。

爆発的な移民の増加と、党の迷走

2014年くらいから、第2次リビア内戦のために、地中海ルートでイタリアやギリシャに船で到着する移民が激増した。

2015年には100万人以上が地中海を渡ったという。ユーロスタットによれば、EUは同年、最初の亡命申請の適用で、シリア方面からも激増した移民を合わせて、120万人を受け入れた。前年の2倍である。

移民の流入が増加するにつれ、党首グリッロの発言は、反移民になっていった。

グリッロは、外国人移民の間にイタリアで生まれた子は自動的に国籍をもてることになる出生地主義に反対する、亡命に対する規則を厳しくするといった宣言を行った。

でも、五つ星運動そのものが「反移民」の政策に転換したのかというと、あいまいだった。

なぜなら、党首がそう主張しても、必ずしも党の活動家や支持者は従わなかったからだ。

この党の根幹ーーネット民主主義を信じ、環境問題を重視するーーこれらの思想は左派である。集まった左派の人たちは、平等や、ヒューマニズム、人権を特に重要視する人たちだ。

さらに、極左的な、すなわち共産主義がもっていた「人民の平等」「富の平等」の流れをくむ思想の支持者もいた。この党の基本方針には、反民営化、反ネオリベラリズム、反アングロサクソン流の考えがあるからだ。

これらは、欧州大陸で力を増してきた、新しい極左と呼べるような思想である。スペインのポデモス、ギリシャのシリザ、フランスの「不服従のフランス」、ギリシャ発祥のDiEM25(ツィプラス内閣で2015年に財務大臣をつとめた経済学者ヤニス・バルファキスがつくった汎ヨーロッパ的な政党) などが、この思想の系譜に属すると言えるだろう。

しかもこの政党は、何かにつけ党の活動家がネット投票をして決めるという形態で、フラットな組織だったことも原因である。

グリッロの敗北と「普通」の政党への変容

2015年、五つ星は党の政策の柱に「ベーシック・インカム」の実現を掲げた。「ベーシック・インカム」とは、国が一律の金額を、市民に支給する制度のことである。

これは実に極左的な福祉政策である。この政策を元に、今年の選挙では、一人あたり730ユーロを、職業斡旋所への登録と、職業訓練の受講や公共奉仕への参加と引き換えに、毎月支給する政策を打ち出したのだった。

この党のプログラムを機に、五つ星は、プロテストを唱える運動から、政策を提案する政党へと変化を遂げていった。

2017年になって、政治指導者を選ぶオンラインの投票が行われた。ディ・マイオ氏が82%の得票を得て当選した。グリッロは第一線を退くことになった。

ディ・マイオは、ナポリ近郊の出身。大学を中退して、この運動の活動家になった。テレビのトーク番組で知名度を上げた。派手なグリッロと対照的で、穏やかで地味な態度で、いつもスーツにネクタイで、粘り強い態度で低姿勢だという。

それまでのグリッロのスタイルは、急激に成長を遂げた政党と、もはや合わなくなっていたのに違いない。常に反対を唱え人目をひくプロテスト運動を展開し、所属の政治家をクビにするなど、「カルトのボス」とすら批判された過激なカリスマだった。

もしかしたら、「頭脳」と呼ばれたもう一人の創始者・カサレッジオが、病気に悩まされて2016年に亡くなったのも、関係あるかもしれない。

このときグリッロは68歳、新しい党首ディ・マイオは31歳だった。

はっきりしない移民政策

2018年総選挙における選挙戦では、ディ・マイオは「移民ゼロ」「イタリアはEUの難民キャンプではない」と叫んでいた。彼の言動は、反移民と思わせるのに十分だった。

しかし、移民政策は、依然としてあいまいだった。むしろ重点を置いていたのは、今までと同じように、既存の政治のあり方への反対と批判のほうだ。論者を極右からも極左からも呼んで、今のシステムを攻撃していた。

その上、党の活動家は、依然として左派や新極左と呼べるような思想の人々が多く存在していたのだ。

選挙時の党プログラムを見てみる。

第1条は「法的手段:移民密輸業者のビジネスを解体し、地中海における下船と死亡がゼロになるという歴史的な目標を達成するために、我々はヨーロッパに到達するための、法的で安全なアクセスルートのツールを強化しなければならない」。

第2条は「亡命希望者の移住:フロー、受け入れ、責任および義務の管理は、すべての加盟国の間で公平に共有されなければならない。それは人口、GDP、失業率など客観的かつ定量的な設定項目に従って、なされなければならない」とある。

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五つ星のプラットフォーム「ルソー」では、移民の人権を守ろうとしている活動家たちがいた。イタリアが地中海で果たさなければならない人道的役割を擁護していた。

だからこそ、最後の最後の瞬間まで、いったい五つ星運動は、極右なのか左派なのか、わからなかった。

今年3月の総選挙で、五つ星運動は大躍進を遂げて、議席数で第1党になった。今度は政権をとりにいった。過半数には届かないので連立を組む必要があったが、左派である民主党との連立が取りざたされたのは、この曖昧さのためだ。

しかし彼らは、極右の「同盟」との連立を選択したのだった。

両党の移民政策の合意は、国境の閉鎖、1年間10万人、5年で50万人の非正規移民の追放、NGOが訴える腐敗の取り締まり等となっている。追放とは、現実に行われる行為はどのようになるのか。

筆者は、フランスのカレ地方で移民を移送したときの様子と混乱を思い出している。ドーバー海峡に面する地域で、英国に渡ろうとする移民が貧民窟みたいなものをつくりあげていた。フランスは英国との話し合いと合意もあり、できるだけ海を渡らせないような措置をしていた。

カレの貧民窟のような場所の解体では抵抗や脱走もあり、かなり混乱した様子が毎日報道された。その反省からか、首都パリの北で、路上生活する移民が集中している地域を解体して、人々を移送するのは、細心の注意が払われた。いきなり予告なく行われ(前日くらいから噂はあった)、極めて組織立って計画されたものとなり、混乱は起きなかった。オペレーションが行われた地域のメトロの駅は、朝から封鎖され、地下鉄は通過して止まらなかった。

やっと夕方になって止まるようになり、外に出てみてみたら、スターリングラード駅周辺にたくさんいた移民と根城が、まっさらにきれいになくなってしまっていた。まるで一つの町がいきなりゴーストタウンになってしまったよう。なんだか背筋が寒くなるような思いがした。

それでもフランスでは、カレもパリも「移送」だった。「ちゃんと屋根のあるセンターで、もっとまともな生活ができますよ」ということだった。いま、「同盟(リーグ)」の書記長で、新内閣で内相に就任したマッテオ・サルビーニがやろうとしていることは、「追放」である。ほとんど「人間狩り」に近くなるのではないか。まるでユダヤ人を探して連行していったゲシュタポのように。あるいは、地中海ルートの移民が大半が黒人であることを思うと、奴隷狩りを想起させるのかもしれない。

極右と極左に分離してゆく

大量の絶え間ない移民を前にして、それでも人権を唱えられるか、ヒューマニズムを語れるか、同じ人間として彼らを助けられるかーーこの問いに「イエス」と答えている政党は、もはや欧州の南のほうでは、極左くらいになってしまった(フランスのような例外的ケースもあるが)。北のほうでは、中道左派がもちこたえているし、緑の党があるが、南のほうの地域では、社会党系の政党はどんどん弱体化する傾向にある。

同盟と手を結び、移民排斥政策を共同でとることになった今でも、五つ星の色分けーー極右か左派かーーに迷いが生じている記事が一部ある。しかし、五つ星は、本質が決定的に変化することになったと思う。彼らのカテゴリーは、もはや極右だろう。少なくとも左派ではない。

これから五つ星運動はどうなっていくのだろう。

政策は共産主義の流れをくみ、左派らしい環境問題にも取り組みつつ、移民排斥政策をとるーーこんなことが可能だろうか。

移民排斥を唱え、かつ共産主義的な政策をするのは、不可能ではない。かつてのヒトラーの政策はこれに近かった。ナチス党はニューディール政策のような公共政策を行うことで失業率を激減させたから、あれほど支持率が高かったのだ。

当時になくて現在にあるのは、環境問題である。

極右に環境問題が対処できるのか。貧しい他者を排斥する彼らに、この地上で共に良い生活を目指そうと語る資格があるのか。

ギリシャのシリザも、スペインのポデモスも、フランスの「不服従のフランス」も、ギリシャ発祥のDiEM25も、移民の保護に好意的である。だからこそ彼らは「左派」を名乗っていられるのだ。移民排斥・追放をするなら、もはや人権やヒューマニズムを語る資格がなくなると、彼らはわかっているのだ。彼らには主張と思想に一貫性がある。

この状況で移民に好意的になれる彼らに、驚きを禁じ得ない。なんという思想の力だろう。人はこんなに強く思想をもてるものなのか。それとも心の優しさなのか。

しかし、ギリシャのシリザをのぞいては、他の党は政権党ではない。「野党なら、いくらでも好きなことを言える。五つ星運動は、政権党になったら変質した」という見方はできるだろう(シリザは正確には20近くの政党が集まってできた「急進左派連合」である)。

五つ星運動の「揺れ」は、まさに多くのイタリア人の「心の揺れ」を見ているようだ。人間としての良心と、嫌なものは嫌だという感情での葛藤。そしてこれは、ヨーロッパ人の心の揺れであり、葛藤なのだ。

イタリア人の心の痛み

そして、背景を説明するのに、どうしても付け加えなければならないことがある。

グリッロは、アッシジの聖フランチェスコを意識している面があった。ブログに「五つ星運動と聖フランチェスコは、たくさんの類似点があります」と書いていた。「聖フランチェスコは、エコロジストで動物の聖人で、教会の再生に励ましを与えながら、秩序をつくりだしました。お金なしで」「彼は運動にふさわしい聖人でした。公的献金もないし、本部もないし、会計係もないし、リーダーもないのですから」。

だから、この聖人の日に、五つ星運動を設立したのだ、と語っている。

鳥に祝福を与える聖フランチェスコ: Diario di Gabriella より
鳥に祝福を与える聖フランチェスコ: Diario di Gabriella より

この聖人は、十字軍の時代に生き、愛と平和と清貧を説いた。そして万人さらには万物は同じ家族であるとし、動物や鳥を愛し話しかけた。小鳥に説教を試みたのは有名な話で、よく絵画にも登場する。

ヨハネ・パウロ2世は1980年、フランチェスコを「自然環境保護(エコロジー)の聖人」に指定している。

人間にとって本当に必要なものは愛と平和だけであり、それ以外のものはすべて不要だと主張し、いさかいや対立は所有することに端を発すると説いたという。「托鉢修道士の鑑」と評価される。

このような、いかにもイタリア人の心を描いているような聖人から、グリッロはインスピレーションを受け、精神を五つ星運動に投影しようとした。イタリア人の琴線にも触れもしたし、批判も受けた。

しかし、すべて終わったのだ。

結局、移民問題は、左派を名乗れるか、ヒューマニズム(人間愛)を貫けるか、人権を語れる資格のある人間でいられるかの「踏み絵」になってしまったと思う。

今まで左派で五つ星を支持していた人々は、どうするのか。筆者の知り合いのイタリア人にもいる。首脳陣を非難して内部から変えようとするのか、それとも見切りをつけるのか。見切りをつけたら、どこに行く? 

この様相を見ていると、なぜ過去にこの欧州大陸で、「無政府主義」などのアナーキズムがうまれたのか、すごくよくわかる思いがする。自分の国の政治家の人間性に絶望したとき、裏切られたと感じたとき、人はどうなるのかーー。

そして、もう一つの問い

欧州大陸には「あなたは、あの移民を目の前にして、人権を唱えられるか、ヒューマニズムを語れるか、同じ人間として彼らを助けられるか」という深刻な問いの外に、もう一つの重大な問いがある。

欧州連合である。

この存在が、欧州をさらに複雑化させている。

欧州連合は他者を排除する組織なのか、それとも人間の平等を目指すためのステップなのか。

次の記事「EU(欧州連合)の本質とは何か。欧州の極右とは、そして極左とは (1)EUについて」を参照ください。

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。前大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省関連で働く。出版社の編集者出身。 早大卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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